全体としてなるほどそうか、という感じで面白かったですし、長い臨床経験の裏付けを持った上でラカンをはじめとする各種理論を横断するところは著者ならではかと思います。ただ、この本は理論的解説をしたものであり、本文中に出てくる「コンテクストへの揺さぶり」をこの本で体験することはできません。一方本文で何度も言及される、著者が帰依する中井久夫氏の著作は読むものを揺さぶる力があるわけですが、この違いは単にこの本がそういう性質だからだけなのか、中井久夫氏が文体というものを持っているからなのか。
あと、柄谷行人の交換様式の話が突如出てきて、そこで交換様式Dはオープンダイアローグである、みたいなこと書いてますが、それはちょっとどうなんでしょう(笑)。でも対話というものの価値と深い意味をこれほど面白く解説したものは無いと思います。自分は著者の作品はこれが初めてでしたが、他の本、特に専門のひきこもり関係の著作も読んでみたいと思います。
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