読書メーター KADOKAWA Group

スフィンクスは笑う (講談社文芸文庫 あU 1)

感想・レビュー
20

データの取得中にエラーが発生しました
感想・レビューがありません
本埜しをり
新着
ネタバレ借りて来てしまったからとはいえ、私は何を読んでるんでしょうね?…と機械的にページを繰っていたが、カナばかりの電報「ヤスコサンコヌ、キヨシヨワカツタカ」に、キヨシ?弱いといえば一郎では?…あ、居所分かったか、だ😆となってから、急に面白く思えて来た。◇裏表紙には「男女五人の愛憎劇」とあったが、安子の独壇場ですね。〝親友に恋人を譲り、その妹と結婚〟を知ってから冒頭の手紙(道子→安子)に戻ってみて…〝恋の勝利者〟にぞっとした。こんなの読んだら、誇り高い安子が恋敵の兄なんかとは意地でも結婚するはずがない。
本埜しをり

終盤で〝五人〟に加わった野口。経済的に困窮したことも、そもそも働いたこともない安子が、よく言うよ…と呆れていたが、まんまと煽動されちゃったよ!「安子さんは不幸に暮らしました」と来ると思ったが、予想以上に酷(嫌な夢を見ました😭

03/11 17:00
0255文字
ジュリ(村上)
新着
ネタバレ冒頭、資本家の女性のぬるい手紙が始まり、『少女小説か…』と想像し、がっかりした(誤解であり本当によかった)。序盤で三角関係が読者に暴露されるが、道子が(自殺の決意という激しい反応もあるが、その後は)夫と安子に対しのほほんと接しており、肩透かし。最後の北海道での安子の地を這う苦しみの描写には、そもそも、資本家の暮らしを捨てたいからといってわざわざ極端な困窮生活をする必要はないので、読みながら不条理感を拭えなかった。最後に安子が『敗残した』と結論付けるのは、イデアリズムの小説とは異なる本書の白眉だと思う。
0255文字
かず
新着
脈絡が乏しいとさえ思える破天荒な人生。さすが安部公房の母の作品。
0255文字
毒モナカジャンボ
新着
読んだこともないのに白樺派への怒りが湧き上がってくるのですごい、何だこの絵に描いたようなホモソーシャル的オナニズムは……というのはいいとして、主要登場人物五人が皆、ギリギリのところで自らの人生における運命の重さと虚しさに縋ってしまい、自分もまた他人の「運命」を作り上げる主体なのだということを正面から引き受けることができないのが面白い。道子にも兼輔を誘惑したことで四人の人生の退廃の責任はあるはずなのだが、その重みに耐えられず最終兼輔の悪さを強調してしまう。安子に煌めく日本のフェミニズムと社会主義黎明の輝き。
毒モナカジャンボ

悪魔的な義兄の子を産んでからの野田の豹変は確かにベタかもしれないがそれでもそれをどこか超然と眺める視点を持つ安子の筆致はやばく、冒頭のブルジョワ令嬢的な道子の手紙の文体と比べると鬼気迫るものになっている。小説が書きたいと思ったが生活が単純すぎ、気づいたら複雑になりすぎてしまった安子には手紙を書くことしかできない。だがこの群像をまとめ上げた安倍ヨリミの力によって、幸福も不幸も運命も振り切ろうとする安子の白い道は見えたのである。

06/14 20:39
0255文字
英
新着
ネタバレこの時代にこの文学と考えればすごいんだろうけど、現代の感覚で読むと苛々する。まず兼輔は悪いだろ。一郎の方が愛が深いから一郎に譲ろうなんて、物じゃないんだからやり取りできるわけないでしょう。何故自分に他人を不幸にしたり幸せにしたりする力があると思った?後半になると安子も安子…。何故あと数カ月で身重で動けなくなると分かっていて農業?野田さん巻き込むなよ。。縫製工場とか看護婦とかあったでしょ。自分でなんとかなさい。という気持ち。
0255文字
はたちゃん
新着
ネタバレ恋愛とは何か、幸せとは何か、結婚とは何か、そういったものをつらつらと描く作品と序盤は高を括っていたが、読み終えた頃にはさながら文学の龍に蹂躙された気分だった。とにかく扱っているテーマが広く、安子の台詞の「労働は自分を没却する事であり、堕落させる事でなければならぬ。それが悪でないだろうか。しかししかし私は悪でも罪でも何でもよいのだ。子供を幸福にし得る道ならば、荊の道でも素足で歩るいて生けよう」には衝撃を受けるとともにそういう覚悟で仕事に向き合わなければいけないなあと最近の己の仕事ぶりを反省させられた。
0255文字
soran
新着
この母にしてあの息子あり。凄すぎる作品でちょっと呆然。まったく古びて感じられない(無論、言葉遣いなどは古いけれど、小説自体としては)。
0255文字
藤月はな(灯れ松明の火)
新着
よくある泥沼スキャンダルと思いきや、人のままならない心情や人生、理想と現実の埋め難い溝への苦悩を鋭く、見据えた作品。書いた人は、何と、安部公房の母なのだ!人々の関係性や心をかき乱す魔性を持つ安子。恵まれた美貌や家柄すらも彼女を守るどころか、窮地に追いやるだけだった。兎に角、安子を心から愛しているのに生理的に「無理」と言われ、報われない一郎氏が可哀想。最後のどう考えても理想を喰い散らかすだけで現実が見えていない男を選んだことに「おいおい、大丈夫かよ・・・」と思っていたら予想通り!うわ、こんな男、いるわ~。
藤月はな(灯れ松明の火)

度重なる受難と道理に反するしかない侭ならぬ心によって身を堕とす安子。だけど、安子は受難を受け入れるからといって決して聖女であるわけではない。ブルジョア生活を疎みながらも現実に押しつぶされ、帰りたいと思ったり、世間的にも守ってくれて自分の事を愛してくれる人でも生理的に無理だと思ったり、レイプした義兄の子だとしても赤ちゃんをどうしても産んで育てたいと決心したり、浅墓で愛おしい人間味を宿す女である。後、「跋」にお世話になった朝鮮人の家族が関東大震災のデマによって殺されたという文に彼女の哀しみと悼みを感じました。

03/20 00:09
0255文字
スギカエル
新着
ネタバレお気に入り様の推薦で読む。淡々とした書簡体で始まり、大正ロマンとデカダンスを織り込んだ耽美的な恋愛小説なのかなと思って読んでいたら、突然主役が入れ替わり、作風も自然主義、白樺派を経てプロレタリア文学の様式に転調を続けます。そして各主題を否定しながら光の中を目指すというラストは第9交響曲を連想しました。カーテンコールのように唐突に現れる作者の後書き(“跋”)も興味深い。独自性の高い作風で、この一作で終わるのは惜しかったと思いますが、安部公房という偉大な息子が後を継いでくれたのでよしとします。
スギカエル

くろねこさん、こんにちは。安部親子の赴任先は旧満州ですね。安部父が満州医科大の研究医だそうです。公房が少年時代を過ごした満州の乾燥した大地は、砂漠への憧憬となり、名作『砂の女』の原風景になったと聞いたことがあります。

12/15 19:51
スギカエル

追記ながら、安部母には満州を舞台とした人間ドラマを書いて欲しかったですね。夫が満州医科大勤務という事はあの秘密部隊に関して何かご存じだったかも。。。

12/15 19:55
3件のコメントを全て見る
0255文字
くろねこ・ぷぅ
新着
ネタバレ公房の母スゴイぞ!貞操観念など時代の制約がスパイス。漱石や実篤の矛盾した恋愛描写にも似て・・と読めば、独自の道を生きようとしながら現実の前に力なく倒れる予想通りの展開。望まない子を宿しながらお腹の中の命を無条件に愛す天然に女性の所以を思う。安子の手記は長くうつろになるが、これも作家の計算か。出産で迎える生まれてくる子の父ではない夫の暴力性。この本の冒頭に書かれていた安子の信仰を思う。イエスは父親に優しく愛されたのだろうか。安子とはキリスト信者である有島の妻と同じ名。ヨリミの夫で公房の父は子を慈しんだようだ
0255文字
梅村
新着
あの安部公房の母親の唯一書いた……という部分を抜きにしても評価されるべき作品だと思います。力強く、且つ自由に生きようとした"お嬢様"のその行く末の破滅を描いた作品としても読めますが、自分は寧ろ、作家になろうとして最後まで作家になりきれなかった安子の姿が印象的でした。(所々安子の手記の形で語られているのには何か意図がありそうです。)著者が、安子の出産によって終幕となるこの物語を息子(=公房)の出産と前後して書き上げ、そして以後筆を折ってしまっている事実には何か象徴的なものを感じてしまいます。
0255文字
まな☆てぃ
新着
『安部公房の冒険』を観劇⇒『安部公房とわたし』読了 のつながりで。故自分の漢字力の低さを痛感…読めない漢字が多すぎて読むのに難儀しました。一人称が誰なのかがわかりにくかったり、名前がわかりにくかったりで、、、ちょっと疲れました。
0255文字
まゆき
新着
つらい……奔放な安子がこんな方向に転がっていくなんて読み始めた時は思いもしなかった。安子が野田に対して抱く思いがなんとなく自分の中にある夫への思いに重なって何度も読むのをやめようかと思った。でも最後はきっとなんとかなると思って読み進めた。……つらすぎた。読み終わって何日も立つのにまだつらい。ちなみに解説がとてもよかった。
0255文字
myung
新着
安部公房の母親の小説。平凡な幸福を享受し、変化というものを恐れる道子。自分自身のみならず相手を巻き込み、逸脱していくことで自分の生き方を模索していく安子。前半と後半で主人公が入れ替わるといっていいほどの変化っぷりで、この二人の輪郭がくっきりと描かれているのが印象深い。特に安子については、意図的な誘惑、愛なき愛で道連れを作りながら、作中では決して幸福と呼べるものに達していない(母親としての幸せにも……)のが印象的だが、安子の生き方に何かしら共感をおぼえる人も多いのでは。
myung

ただやはり私小説的な部分から抜け出ていないのが残念といえば残念。小説の人物ではなく、作者自身が語ってるんじゃないかと思われる部分もあり。で、なぜ駆け落ちするのにわざわざ実家のある地方に行ったのか、そこだけが妙にひっかかった。

07/10 01:47
0255文字
犀角
新着
新婚の道子が親友の安子に宛てた手紙で始まり、安子の手記という小説内小説を織り込んで進行する。二転三転して死ぬの生きるのと騒ぎ出すお嬢さんたちの恋愛小説かと思いきや、最後は意外な方向へと急展開。小説を書くのに必ずしも小説の主人公のような人生を体験する必要は無いのに、筆より先に身体が動いてしまうのは業の深さがなせるわざか。しかし作中の手記が果たしてどこまで本当のことをつづっているのか、と考え始めた時、どこからか哄笑が響いてくるようでもある。
0255文字
龍國竣/リュウゴク
新着
凛とした、活発で聡明な女性の生き様が書かれる。道子が主人公として登場し、夫や兄と恋愛論を語る。後半に入ると、安子が中心となり、出産の様子が書かれる。両方に共通しているのが、強い女性の姿である。また、夢が重要な役割を担っている事にも注目したい。
0255文字
ekka
新着
作者が安部公房の母であり、タイトルのスフィンクスという言葉にも反応して瞬間的に読んでみようと思った。読み始めたら、引き込まれた。私にはないものを持っている人は幸せそうに見える。綺麗だとか、自由奔放だとか、本能の赴くままに生きてるとか。でも人生って不思議なもので、我慢したり努力したり、実直に生きてないと大きなしっぺ返しが来る。
0255文字
全20件中 1-20 件を表示
スフィンクスは笑う (講談社文芸文庫 あU 1)評価87感想・レビュー20