映画「サイダーハウス・ルール」は、TOP5に入るんじゃないかというくらい好き。映画はとにかく、脚本がすばらしいなぁと思ったんですよね。バランスがいいというか…。原作者が脚本を手がけていると知って、なるほどって思ってました。ディテールにこだわりまくった原作を読んで、改めてすごいなぁと。主要人物をまるっとなくしたりしてます。原作もいいなと思いますけど、映画は本当に好き。重いのに、軽くてやさしい。「Goodnight, you prince of Main, you king of New England.」
20年くらい前に読んだ時に、本書に出てくるディケンズの小説は過去の追憶のように映った。アーヴィングの小説、ほとんど絶版か。分断・断絶化した世界で、アーヴィングの世界は絵空ごとなのだろうか。目指すべきヴィジョンとしては、現実との乖離は大きく、思い出として読むには寂しい。アーヴィングを生んだ国はいつだってデタラメだった。本書が書かれた1980年代だってあの国は分断をもたらし、分断していた。今を生きていて、世界を遠く見ていると悲しくなる。本書の人物達が口にする「right!」という言葉を励ましとして受け取ろう。