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猛スピードで母は (文春文庫 な 47-1)

感想・レビュー
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Hidetsugu Suto
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表題作と「サイドカーに犬」の中編2本.2022年まで15年間過ごした室蘭市ゆかりの作家さんで,同市の港の文学館などてよく名前を耳にしていたのだけれどまだ読んていませんでした.東大阪市の電子図書館で見つけたので借りてみました.両作品とも母親もしくは「母親」のような立ち位置の女性と子供との関係を,子供からの視点で描いた作品です.いわゆる普通の「お母さん」ではなく,問題を抱えながらも自分らしく生きようとしている女性たちが印象的でした.表題作はM市の光景が目に浮かぶので感情移入しやすかったです.
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ジュンケイ
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子どもから見た母親の物語が2篇。「サイドカーに犬」の洋子さんは、父の愛人なのだろうが、さの洋子さんと母親との違いの話でもあった。家庭のルールは、母親が作っていることが多いような気がした。そこに洋子さんがくると、今までのルールは守られる必要はない。どちらもいわゆる男っぽい女性。なんだか郷愁を感じる作品だった。
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もも(5さい)
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ネタバレ『サイドカーに犬』の父親がダメ男だったので、作者は女性かと誤解してた。二作とも小学生の子ども目線で、一見豪放な女性との日々を描く。大人から見た子どもと、大人を見る子どもとのずれに気づいていた子どもが、大人になってから文字にしたのだろう。『サイドカーに犬』の薫は、大人たちの矛盾を見て見ぬふりをしてやり過ごす。大人たちの間で決して邪魔にならない、従順な犬であることに安らぎを求める。子どものときに口に出せないままだった気持ちを思い出す。
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長尾
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サイドカーに犬:洋子さんと薫の関係と、薫と弟の関係が並走していく。子どもを犬扱いすることに全く憤る気になれない、というか妙な説得力がある。/猛スピードで母は:母のスピードに目を奪われがちだが、どちらかというとこれについていってる慎もすごい。
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すっぽん
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片親(ひとつは単に家家出だが)の子供視点の物語。二つの作品には、テンポの良さとノスタルジックを感じる。一見すると性格の悪そうな、押し付けがましい我の強さの登場人物(洋子さん、母)に振り回される日常が続く。無垢な子供はそれらを全て受容し納得するほかない。だからこそ小気味の良いテンポになっているのだろう。大人になると自分が損をしていることに徹底的な拒絶感が生まれるが、忘れけかけていた健気で素直な感性を思い出させてくれる作品。
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無心
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「サイドカーに犬」を読んだ ムギチョコをエサとして与えられる、犬のように飼われている、その状態に居心地の良さを感じている幼年時代の主人公の薫。 期待されるとなんでもやめてしまう、という覇気のなさ 最後の、「そろそろなんじゃないか」というのは、そういう飼われたような状態から洋子さんのような大人に変化しろってことなのかなと思った。精神的な意味で。大人と子どもの対比、成長、そういうものを感じた。
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kei
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ネタバレ懐かしの昭和後期。芥川賞候補作と受賞作。どちらも読みやすい。「サイドカーに犬」…芥川賞候補作。母が家を出て知らない女が家に来た。「猛スピードで母は」…芥川賞受賞作。ハードボイルドな母は強し。サイドカーの主人公は小四女子、猛スピードの主人公は小六男子、この二作品は一冊の本として纏められてしかるべき作品だ。バラバラだと魅力は半減するかもしれない。母と子の関係を通した昭和の空気感がとても懐かしい。タイパ、コスパというものはない時間の流れに身を浸すことができた。
kei

昨今の芥川賞、設定が凝りすぎているものも多くて読むのがしんどいなってときはこの年代の作品を読み返すのもありかな。長嶋さん1972年生まれ、同級生じゃないですか!道理で書かれているのが昭和の(私にとって)懐かしい風景なわけだ…。この年代、なかなかに文学界で著名な方が多いなぁ、嬉しい。

01/18 22:25
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まーちゃんごめんね
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併録されている「サイドカーに犬」の方が印象にのこった。「犬」では新しい環境に適応しようとする子どもが描かれていたのにたいして、「母」ではシングルマザーとして現実にサヴァイブする母が描かれている。ただ、後者の母は残念ながら「犬」に出てくる愛人のような魅力的なキャラクターとは感じられず、それもあってか印象稀薄の感があった。 https://note.com/eto19321225/n/n6d1f5073c440
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さゆり
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ノスタルジー。
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ぱ隹越九朗
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めっちゃくちゃ面白い。収録された二作とも視点人物となる子どもから見た親兄弟、友人、親の恋人の描き出し方が抜群に趣味に合う。語り手となる薫と慎、彼らの目を通して私は確かに存在しないはずの子ども時代の記憶が脳を走るのを感じました。少女とその父の愛人との思い出を描いた「サイドカーに犬」を推します。母が出て行き中古車業を始めた父とその知り合いたちがたまり場にする家で暮らす姉弟の暮らしのディテールがものすごくて、この家庭の実在を信じてしまいます。素晴らしい読書体験を得られる一冊。
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おちょま
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昭和な感じが懐かしかった。
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tuki
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ネタバレ著者はたまたま同じ1972年生まれの同世代。道理で小説に出てくる世相を表すワードが、自分の少年時代とかぶると思ったわけだ。仕事柄、児童書を読むことが多く、収められた小学生を主人公とする小品は児童文学たりえるのか?とフト妄想する。答えは否で、明らかに大人向けの小説だ。それは家庭とか性を扱っているからという表層的なものではない。子どもの視点でありながら、大人の文脈で語っていて、全てを語らずとも読者に背景を想像させる。慎はきっとイジメを克服しただろう。それについては何も語られていないが、読者には強く伝わる。
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パレス。
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子ども目線で見た大人の行動や様子を非常にリアリティのある描写で書かれた作品。 こういった作品の中で出てくる大人たちより子どもたちの方が「大人」なんだなと思った。 特段幸福とは言えないけど、かと言って不幸というわけでもない、この霧のかかった感じを表現出来るところに長嶋先生の凄みを感じる。 ワーゲンをぶち抜いていくシーンが好き。お母さんかっけー…!
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無心
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ネタバレちょっと変わった母子家庭で、母の強さや愛情、美を描いている 「子供って、全部あんたみたいなのかと思った」という言葉や、慎のために4Fによじ登って窓から部屋にはいろうとするところなどが印象深かった 普通の母が歩くような速度(15km/h)なら、この小説の母は100km/h出る、そんな力強さや軽やかさを感じた トドがつがいになって夜中に鳴かなくなった、という変化と同時に、慎もいじめや母や周囲に甘えられない寂しさを乗り越えて強くなる変化が重なってみえた ラストの駆け抜けるような疾走感が爽やかだ
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かしまだ やこう
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ネタバレ新幹線の移動中にサクッと読んだ。奔放な片親がテーマの短編ふたつ。読みやすく、私たちの日常に即していて馴染んだ。子供視点での離婚した親の様子(と、その周りの人たち)が新鮮で楽しい。夢を諦めた母が、漫画家にでもなんでもなりなと言ったとこはちょっと感動した。こんな家庭で育っても、いじめられても、みんな大人になっていくんだなあ。この著者の他の作品も読みたい。
かしまだ やこう

作者、女性かなあと思ってたけど、バリバリオタクのおじさんで好感度あがった。

05/31 17:47
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コジコジ
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母親が貸してくれた小説。表題作は自分の母親のお話だと思ったし、わたしの話だとも思った。わたしもこの母みたいになると思った。ママはこのお話を何歳のとき、どんな気持ちで読んだんだろう とんでもなく切なくなったけど、読めてよかったと思うし、母親の好きな小説が自分の好みだったこともうれしかった 洋子さんも母もつよくてかっこよかったけど、本当はよわくてさみしいのに、つよくてかっこよく生きていくしかないだけ 本当はだれかによしかかって、甘えて生きていきたいに決まってる ひとりで立っていなきゃいけないから頑張ってるだけ
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ykazmah
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前から気になっていてやっと読む機会が巡ってきた。芥川賞ぽいなぁと思う。剥き出しというのか、どこか無機質というのか。子ども目線からみた親との時間が延々と記され、倦怠感や諦めが霧のように辺りに漂っている印象。そうそう、子どもって大人が思うよりずっと聡い。生きていくのは楽しいことばかりじゃないということも、驚くほど早い年齢でもうすでに知っている。そして、自分にとっての生きる意味を探す旅が、そこから始まっていくのかもしれないな。そんなことを思いました。
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ココア
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表題とサイドカーに犬。少し不孝がかった薄いグレーな世界。にかっこよくどこか憧れる女性が登場。好きな雰囲気だった。
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ちぃ@お茶当番見習い
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代官山蔦屋書店文学コンシェルジュオールタイムベスト(24年1月編)にあったのと、たまたま母と大喧嘩した日に見つけて気になって読んでみた。 うちは平均的な「普通の家庭」だったと思ってたけど、案外そんな事なかったのかもしれない…などと謎の気付き。 ぐれぐれの不良っ子。 何かといろいろぶっ飛んでる父親や母親… 何が「普通の家族」なんだろう…と、少し真顔で考えてしまった。
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ヒサシ
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★★★☆☆
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mori
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表題作の母のかっこよさたるや。子どもからみて少なくとも恥ずかしくない母になりたいもの。長嶋有さんの文章はとても好みだったので今後読んでいきたい。収録のサイドカーに犬の父も私は好き。
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あきふ
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また読み直して味わいたい。
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Tomo
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ネタバレめちゃくちゃおもしろかった。どちらも。短いのに情景と感情が自分の頭に映像が浮かんでくる感じかなぁ。  洋子さんと母になぜかカッコイイ印象を受けた。
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PLAN303E
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『猛スピードで母は』のモデルの都市が以前住んでいたところだったので特に情景が浮かんで個人的に楽しめた。読みやすい作品でした。『サイドカーに犬』も表題作も小学生の心の成長や葛藤が読んでいて切なく感じられたとても良い作品でした。
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蓮水
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サイドカーに犬▷薫と洋子さんの関係は友達だとか親子だとか、元々ある言葉で形容することは難しい。しかし、そんな曖昧で崩れやすい関係が少し羨ましく思った。「麦チョコ」をきっかけに過去を振り返る形式はありきたりだが、文体が良いのかすっと入り込める。とても読みやすく、良い話だった。ラスト一文、未来を予感させる終わり方で好みです。 猛スピードで母は▷子の視点で話は進むが本心がずっと掴めず、不穏な空気を終始感じた。読了後に「生きているってこうだな」という感想が浮かんだ。エネルギーを感じたのかな。
蓮水

〈何をした〉の部分が隠されていて良いタイトルだと思った。さらに『母は猛スピードで』ではなく倒置法なのも自分は惹かれた。長嶋有さんは初読みだったけれど、今日から深掘りしていきたい作家になった。文体が自分とよく合うと思った。

11/06 23:48
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ichi
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☆3
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こうすけ
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初挑戦の作家。表題作は芥川賞受賞作ということだが、併録されているデビュー作『サイドカーに犬』が大変よかった。おもしろせつない。『猛スピードで母は』も、芥川賞のなかではかなり読みやすいのでは。ちょっとだけ倫理観のずれたキャラクターたちが、生き生きしてて良い。
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ツキイチ
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「母は二本立てが好きだった。見終えて外に出ると昼は夕方に、夜は真夜中に、あるいは晴天が豪雨に、という風に世界ががらりと変わってるのが良いのだという」ここなんか好き
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本よみお
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ネタバレ文學界新人賞作品を読もうと、手に取った一冊。 収録の「サイドカーに犬」がそれにあたる作品。 とても読みやすく、主人公の子供時代の描写が細かくてその世界に没入できた。子供から見た大人って未知で奇妙な存在なんだよな。子供心を思い出した。竹内結子さん主演で映画化もされてるみたいなのでそっちもみたい。 芥川賞受賞作の「猛スピードで母は」もよかった。こちらも子供目線だが、今度は男の子。わかる。母はとっても強いんだよ。中身もそうだがタイトルがいい。個人的には「サイドカー」のが好き。新人賞と芥川賞作品読めるお得な一冊。
本よみお

洋子さんはラーメンの丼にサラダを盛ったり、コーヒーカップにお茶をいれたりした。父はなにもいわなかった。

10/10 10:11
本よみお

 一度やぶられると、これまで守っていたルールに守るべき必要性など実はなにもないことに気付いた。そうすると今度は食器に関する母の不文律を不思議に思うようになった。

10/10 10:13
3件のコメントを全て見る
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りさ
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初めましての長嶋さん。子ども目線からみた大人を上手く表現している2作品。 サイドカーに犬…麦チョコをキッカケに、ひと夏父の愛人であった豪快さを少し感じる女性、洋子さんと過ごした日々を思い出すストーリー。そろそろ、の意味深な感じが気になる。薫も自分の人生を一生懸命に生きるとき、的な感じ? 猛スピードで母は…小学生の慎から見た母。サバサバしてるような、クールなような、でも繊細で頑張り屋な母、って感じかな?慎のことをちゃんと理解してるし、子ども扱いしすぎない感じだし、慎も自立してる感じだし、2人の関係性が好き
とみかず

ささん。ナイスありがとうございます。

10/01 12:26
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とみかず
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(再読)子供の目線で、もっとも身近な大人の女性(母親/父親の愛人)を中心に、そのほかの大人の行動、行為を描いた短編2作品。両作品とも、他人からは、大人の都合にふりまわされているようにも見える状況でも、主人公は、それなりに受け入れ、消化できている様子が描かれる。あらめて、価値観は子供自身が作り上げるものと納得。ついでに、以前の読後と異なる感想に、自身の成長を感じて読了です。
0255文字
はしびろちゃん
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小学生視点で大人を見てみると、自分が子どもの頃の懐かしさと現在の大人目線の共感が共存してなんとも面白い。部屋の静けさもしくは人ががやがかしているときの表現などが好きだなと思った。
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nox
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子供にとって親は世界を構築する役割を負う。その世界を広げる他人が現れた時、やはり鮮烈に記憶に残るものなのだなあ。子供には大人の葛藤や鬱屈はわからないもので、大人は完璧ではないにしろ何か絶対的な存在だという感覚がある。大人の人間らしい悩みややりきれない思いを子供の目で読み取ると、自分の世界の外のぼんやりした出来事に感じる。年を取りふと思い返したときに、なんとなく納得はすれども理解とは程遠い、そんな感覚が描かれていると思う。短編で読みやすいし、大人の人物造形もいかしている。
0255文字
練りようかん
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ネタバレ再読。母が家出中にやってきた洋子さんとのひと夏を大人の私が振り返る「サイドカーに犬」と、結婚するかもと言ったのになかなか結婚しない母との日々を小6男子の視点で描いた表題作。前者ははじめからわかりやすく面白いが、後者は終盤俄然面白くなるタイプ。しかし自由で豪快な印象の洋子さんと母が、実は不自由で律儀な人なんじゃないかと思えてくるのが共通して、繊細さが引き立ってくるのが良い。子どもの頃の事実とは、事3つと実が1つぐらいのバランスだよなと思う。そして表紙の装画は佐野洋子さんという人選が絶妙。誰が考えたんだろ。
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とまとまと
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子供の頃を思いだすと、大人って確かに完璧ではなく、子供が我慢しなければならないことが多かった。しかもその理由というのが、どうしようもなくて。そういう2組の家庭を子供の視点から描いた作品。その境遇を嘆くでもなく、淡々と受け入れている子供の姿にリアリティがある。
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大粒まろん
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芥川賞としては、あっさり読みやすく軽め。文章構成は上手いし平易な文体で手に届く範囲の世界を描いてる。難解さはなく不快感もほぼない。作者自身の人柄が前向きなんだろうと思う。ただ、芥川賞にしては物足りないのか、選評もやや割れていた笑。選評委員では宮本輝氏、池澤夏樹氏、河野多恵子氏が◎だった。私は母は強しで、良かったと思ったけれど、詩的ではないかも。
0255文字
いきいきボーイ
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とてつもなく上手い小説。2作とも子供の視点から描いており、子供の新鮮な目線を書くのが上手。太宰を読んでいる愛人や、ビートルズを好き母など、サブカルっぽい女性が格好良い。母がPKをするキーパーに見えたなど、表現も秀逸。
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よーだ (Yoda)
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第126回芥川賞受賞作品。北海道南岸M市で母と暮らす慎。白いシビックで母は今日も猛スピードで国道を走る…『猛スピードで母は』。母が家を出た小4の夏休み。現れたのは父の愛人洋子さん。粋な洋子さんとの生活が始まる…「サイドカーに犬」の2編。親の日常と子供の日常。親と子供それぞれの事情。それらを繋ぐのは家族や親子関係。母と愛人とでは性格や思考、振舞いは異なるし、母の彼氏からも影響を受ける。明るく颯爽とかっこいい大人と接し学び成長する子供達をテンポよく描く。暗さを感じさせないプロット。読後感が心地よい(☆☆☆☆)
よーだ (Yoda)

★メモ★第126回(2001年下期)芥川賞受賞作品。片や母と子の二人暮らし。片や母が家出して父と子の三人で暮らす。このプロットだけでも何処か暗さを感じさせるが明るく粋なキャラが暗さを感じさせないストーリーを作り上げる。鏤められるサブカル的な場面が読者の心を擽る。Wikipediaで調べる。『猛スピードで母は』は子供時代の私小説にも感じるし、「サイドカーに犬」は”ブルボン小林”の一面を垣間見ることが出来る。ごく日常を描く物語での芥川賞。『パーク・ライフ』吉田修一にも相通ずる。感性なんですかね。感性磨かねば。

05/02 13:33
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ころこ
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『サイドカーに犬』鬱屈した生活の象徴秩序を揺らがす素敵な他者が現れる。後年に想起した語り手の私が、当時の私からすると既に他者だ。ぐずぐずした曖昧な様子が弟との比較において巧みに表現されている。洋子さんも自分の居場所の無い人なのだ。洋子さんとの比較は今の私だ。弟を補助線とすると洋子さんの不在が強調される。その不在から、洋子さんは今どうしているのだろうかと想像が及ぶ。同時に、今の私も生き辛さを抱え、社会に身の置きどころが無いことが仄めかされる。『猛スピードで母は』授業参観の後に同級生から「おまえの母さんかっこ
ころこ

いいよな」母らしくない母ではあるが、母は他人からみると素敵な人物であることが分かる。この私から見た母と、他人から見た母のイメージが異なっている。そこに「猛スピード」と表現される彼女の生き辛さがある。私からみた母の様子は、母の中の自己イメージと他者イメージの間の葛藤を母に味方して眺めているが、恋人が登場し、自動車事故を起こす晩にそのイメージが揺らぐ。いじめに遭うことで、私は生き辛さを母と共有する。ここまでは前作と共通だ。それを母と共に、母に代わって乗り越えることで、本作の方が前作を一歩だけ進めている。

04/05 10:38
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猛スピードで母は (文春文庫 な 47-1)評価61感想・レビュー715