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夜間飛行
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時は14世紀。《阿呆の王》は王に仕える道化だが、泥棒、乞食、流れ者を手下にサタンを演じる事もあったらしい。王弟ルイは王妃や大勢の女達と姦通している。王家の紋たる百合は麗しき秩序を表すか、それとも堕落の象徴か。本作はとりあえず歴史小説の形を取るが、時代考証はいい加減であり、それどころか神話や叙事詩が理性を惑わし、マスカラード(仮装劇)の猥雑な渦が人々を夢や狂気へと誘う。むしろ夢や狂気が内面のリアリズムを支える仕組みだ。悪魔の哄笑の中、狂王や狂戦士が理性を求めてさすらう夢幻劇に、読んでいて無闇矢鱈と血が騒ぐ。
夜間飛行

これはネルヴァルが売れっ子のロマン派作家だった頃の作品で、晩年の晦渋さはない。狂気や悪魔と対決する黒小説として単純に楽しめる。また、『ボヘミアの小さな城』に通じる庶民生活が随所に見られ、後の『シルヴィ』を経てプルーストに受け継がれる記憶の芸術の源泉もここにあるのか、と思ったりした。ゴナン親方の、《生まれついた階級より優れた精神とか身分にふさわしくない体、社会秩序に揉まれて痛めつけられる心なんてものが逃げられる方法は二つきり、坊主になるか泥棒になるかだ!》という科白は、フランスの歴史を貫く庶民の声だろうか。

06/16 12:03
0255文字
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阿呆の王 (1972年)評価100感想・レビュー1