形式:Kindle版
出版社:新潮社
驚くのが、脱走した恭子は監禁されている時、通学している。家で寝るのは冷たい床の上か風呂場で与えられる保温具の新聞紙の枚数まで決められていた。授業中は疲れで居眠りし怒られていた。授業が終わると松永に連絡を入れる。帰宅すると、監禁されている者が並んで直立不動で立たされている。排泄も極度に制限され、扉を開けたまま便座に尻をつけずに排泄させ、拭けたかどうか尻を開いて監禁仲間に確認される。父の死体解体も手伝った。この状態でも恭子はちゃんと帰宅した。なぜ、学校の先生は少しでも気付かなかったのだろうか。
「自分の判断などはなく、松永の指示を絶対視し、彼の利益を最優先させる。これは純子のみならず、緒方一家の集団心理であった。 続いて彼らは、 虐待 者、すなわち松永に依存するという、倒錯的な心理段階に至ったようだ」と著者は分析する。これは『人殺しの息子と呼ばれて』の中で長男が母親についての印象を語っているが、事件のことを悔いたり自分のことを案じたりする母の姿に違和感を覚えているようだった。それはこの状態から脱することができたからではないのか、などと思った。
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