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ディヴァイン
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はじめまして、2008年出版業界はあんまり…不作だなぁ…と思いつつも読みふけっておりました。 古典中心とはいえ、今年でた作品に限り記したいと思います。 『鉄の時代』池澤夏樹編集世界文学全集の11巻目におさめられたクッツェーの初訳小説。ガンを宣告された老女はアメリカに住む娘へ南アの現実を手紙にして書く。けれども、その手紙は娘に送れない。彼女は自分の家に住み始めた浮浪者の男に手紙を託す。なんといっても構成と語りが巧い。 『あまりに野蛮な』雑誌、群像に連載されつづけていた津島佑子の最新長編。連載当初からもぽつぽつ読んでいたのが単行本となり出版されて書店で見つけた際に迷わず購入した。戦争の野蛮さが影を落としながらも、奏でられる津島流の愛。『あまりに野蛮な』というタイトルを起用していながらなかなか明確な野蛮さがたりない加減もあった。けれども、ゆっくりと小説らしい小説の世界を味わうことができたことに感謝。 『夜』橋本治の短篇集。帯に書かれた『蝶のゆくえ』に続く、新たなる挑戦に惹かれて買ってしまう。中心に描こうとしているのは「男」の中。でも、『蝶のゆくえ』と同じく「女」を描いているように思えた。ゲイの恋愛模様を描いた、「暁闇」にしても、女性の気配を感じる。さきに挙げた「暁闇」であるが、一番好きな短篇でもある。BLとかが流行る昨今とは一線を画し、男のまたは、女の内面が切実に描かれている。 長々と書いたが上から1、2、3というわけではないので、悪しからず。しかし、次点としては、倉橋由美子『酔郷譚』古川日出男『聖家族』の2作を挙げたい。