〈プロジェクト・サファイアテイル〉
〈プロローグ――始まりの始まり〉
この物語を読む方にまずは知っておいてもらいたいことがある。
――この物語はこの世界のものではない。
赤色矮星のメガフレアによって発生した紫外線が皆既月食を紫色に染め上げ、その月光を受けて開花した黄色いゼラニウムを対価として一時的に発生した転送ゲートから現れた銀髪碧眼の美少女が持っていた書物に記された未知の言語を解読した結果、異世界の存在が確認された。
この物語は銀髪碧眼の美少女――サファイア・ロジーヌ・メルキュール――が持っていた書物に書かれている異世界の情報と彼女の知識を元にして作り上げられたものだ。
異世界の情報の中にはこの世界の知識では理解できない部分が多数存在した。そこで、サファイア嬢に協力を要請し、こちらの世界の知識でも理解できるように意訳してもらった(サファイア嬢の名前もまた意訳である)。また、こちらの世界の用語を用いれば解かりやすくできる部分もあったため、作中ではこちらの世界での名称や単位を使っている部分が多く存在する。例えば、「アールッドペイティ」という植物が異世界にはあるのだそうだが、サファイア嬢によると、こちらの世界の「ジャーマンカモミール」と同一であるらしい。他にも、こちらの世界の言葉を用いれば一単語で表せる物が異世界には数多く存在するらしく、「刀」、「ピアノ」、「ブランデー」などを表す場合、異世界の言葉だと複数の単語を組み合わせなければならないとのことだ。
本来ならば、サファイア嬢や書物(タイトルは意訳すると『世界大全』)から得られた情報を翻訳したものが先に書籍化される予定であった。しかし、そのままではただの異世界の歴史の教科書になってしまう上にあまりにも長すぎて読みづらいため、今回は小説という形となった。つまり、この物語はサファイア嬢の住んでいた世界を舞台にした架空の物語である。よってフィクションである。本当の異世界の歴史や文化を知りたいならば、来年の夏に刊行予定の『異世界の歴史と文化(仮)』を読んでいただきたい。
――最後に、この物語の創造に協力してくれた有志の方々と翻訳、意訳に協力してくれたサファイア・ロジーヌ・メルキュール嬢に感謝の意を捧げる。
この物語群を以後、サファイア嬢の名前をお借りして〈サファイアテイル〉と呼称することとなった。また、この物語の作製計画を〈プロジェクト・サファイアテイル〉とする。
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