たった一週間だよ。
そう言ってあの人は旅立ってしまった。
こんなに長く離れるのは初めてで、もし何かあったらと不安が過る。
本当は何かあったらじゃなくて、旅先で刺激を受けたあの人が別人になってしまうんじゃないかって恐れだけれど。
ほんとうにいってきます!(笑)
出立ぎりぎりまで交わしていたくだらない会話の後であの人は言った。
ほんとうにいってらっしゃい!
絶対に帰ってきてね!
行ってしまった。
私の言葉も思いも宙に浮かせたまま。
あの人は行ってしまったモルディブへ既読のつかない文字を見ている
顔を見たければ会いに行く、声を聞きたければ電話をする、どこかに行きたければ連れ立って歩く、ねぇ聞いてと嬉しそうに二人のことを他人に話す…。
当たり前のことがあの人に出会ってから当たり前ではなくなった。
二人一緒と言う夢を諦め、時には嘘もつき覚悟しながら、それでもなお一緒にいたいと思うのは、愛なのだろうか。
感情の半分を押さえ込むことに慣れてしまった私。
自分にとって本当に嬉しいことがどう言うことなのかも、最近では分からなくなってきている。
だけど、あの人がくれる近い未来、これだけはいつも間違いなく嬉しい。
メールします、些細で確かな約束に
未来なんてどうでもよくなる
その男は火だと思った。
触れれば火傷をすると分かっているのに、その温もりで慰めて欲しくて、つい引き寄せられる。
居心地の良さに着ているものをすっかり脱いで心を許し、うっとりと身を任せていると、じりっと焼けるような痛みを感じて思い知るのだった。
また深入りをしてしまった、と。
危険だと警鐘鳴っても触れたくて
裸のわたしを焼きつけたくなる
これまで一度も愛していると言われたことがない。
大好きと愛してるは全然違う。
愛を口にした途端責任が生じると思っているのか、責任を負えない立場を無責任だと思い言えないのか。
愛してます、その一言をどんなに私が焦がれているか、あの人は知らない。
言われたら嬉しくてきっと泣いてしまうだろうその言葉を。
バレンタインだからいっそ私から愛してますと言ってみようか
友達の好きな男の子を一緒に見ているうちに、いつの間にか私も好きになっていた。
あまりに友達が本気だったので、私も好きになったとは言い出せず、とうとう卒業式まで秘密の想いを抱えてしまった。
表面上は友達の恋を応援、そんな私に託されたのは、友達に代わって第二ボタンを貰いに行くということ。
自分の想いを奥底にしまって、大事な友達のため淡々とその旨を告げた。
彼は快くボタンを外そうとしてくれるのだけど、緊張しているのかなかなか外れない。
手間取る数十秒の間に、留めてあった気持ちが今にも溢れ出してしまいそうになって、早く外れないかな、いっそのこと外れないで、と暴れた。
ボタンを渡すと何も知らない友達にありがとうと笑顔で感謝されて、抑えきれなくなった葛藤は私を突き動かした。
友達を裏切るような告白は
いい子を卒業したかったから
月曜日は嫌いだ。
金曜日に私から送ったメールが行ったっきり。
あの人が家族と過ごした週末を耐えた私に、あの人はなかなかメールをくれない。
私だって解放された時間を楽しんでおあいこさまのはずなのに、何をしていても中途半端な楽しみかたしか出来ず、何度もメールチェックをしてしまう。
私だけが待たされている感をどうしても否めなくて、それが悔しくて自分からは連絡が出来ない。
もっと素直になれればいいのだけど、元々こういう性分なのか年のせいなのかもう分からなくなってきた。
ただ一つ、はっきりとしているのは、私のほうが惚れていると言うこと。
より好きなほうが待たされてしまう、不条理だ。
明日には素直になれますように。
待っている待っていないふりをして
ほんとはそれだけを待っているのに
いつからか彼の良いところを探すようになった。
出会った時のこと、付き合い始めた頃のこと、彼の言葉、彼の仕草、彼の表情、ひとつひとつを思い出すように。
それらが放っている光を確認しては、まだ大丈夫と安堵するようになってきた。
恋のときめきは三年で切れると言う。
三年を過ぎた頃から、一緒に過ごす時間が特別ではなくなって、また逢えることが当たり前になって、好きと言う気持ちもあまり意識出来ないようになっていった。
もしかしたら、もう出会った頃ほどの気持ちも無いのかもしれない。
だけどこんなに好きになったひとは初めてで、もうこれ以上のひとは現れないと思うと、この関係を何としてでも掴んでおかねばと思う狡い自分がいる。
彼だけは特別だって思ってる
そうじゃなくて信じたいんだ
この機能をご利用になるには会員登録(無料)のうえ、ログインする必要があります。
会員登録すると読んだ本の管理や、感想・レビューの投稿などが行なえます