【私の成分百種の三十一「プリンス『1999』」】このアルバムでプリンスは彼のヒーローであるジェイムス・ブラウン、スライ・ストーン、ジョージ・クリントン、デヴィッド・ボウイなどと同じステージに立ったのです。プリンスらしい音というのはこのアルバムよりも前に確立しています。前々作の『ダーティ・マインド』は実にプリンスらしい攻撃性を秘めた個人的な作品で、素晴らしい出来でした。しかし、個人的というのが魅力でもあるのですがまさにマンツーマンな対話的なファンク、ロックは強さがありませんでした。オーディエンスの意識をすら変えるアーティストはやさしさ、美しさ、コマーシャルさとともに強さが必要なのです。
プリンスは個に入り込み制作を行い、精密に精緻に作り込みますので繊細ゆえのもろさも感じられたのですが、本作『1999』では作り込む際にバンドの形式を選び、完全なコントロール下に置きながらもバンドならではのぶ厚さ、良い意味での雑多さがみられます。その結果がこの大傑作『1999』に結実するのです。マンツーマンなのは変わりません。繊細さも攻撃性も増しています。
いままでは「音楽」を制作していた彼が、「アルバム」を制作するようになったのです。
プリンスと言う名のキングが登場したのです。
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