『鏡花コレクションⅡ』より「池の声」
鏡花と言えば幽霊譚や幻想譚に目がいきます。ふと現れる幽霊、霞の向こうに見える花もかくやの高楼の一室は鏡花の独壇場と言っても過言ではないでしょう。さらに鏡花の物語の愉しみは会話の妙があるのです。蛙と緋鯉のかけあいのような会話は芝居の口上を聞くかの心地よさ。心地の良いことではあるのですが、その中身は町を紅蓮に包む大火の顛末。鏡花はそれを鮮やかに文字にして、読み手の心に炎を描きだします。痩せた、強い度の眼鏡を掛けた潔癖症の物書きの筆は水の中の楼閣も造り出せれば、それを地に運び焼き尽くすこともできるのです。
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