B 中世ヨーロッパの教会が何を罪としたのかを読み解き、そこから抑圧された民衆の生活を浮かび上がらせる試み。キリスト教の教えによって、生命力を失っていく(!?)死者像の変遷が面白い。北欧のエッダ、サガにおいては、生者に暴言を吐き、暴力を振るっていた死者が、教会の影響下で、哀れみを乞う静かな死者となる。その過程が丁寧に論考されている。そして、何よりも読み所は「贖罪規定書」の翻訳箇所である。第六章のほぼ全部を使い、具体的な罪と罰があげられる。それ読むことで、逆に何が信じられ行われていたのかを知ることが出来る。
「贖罪規定書」第六〇章 「お前は魔術師に相談したり、魔術師をお前の家に招き、なんらかの魔術の働きを求めたり、災難を防ごうとしたことがあったか。(略)占いによって未来を予言したり、卜占を行わせ呪文を唱えさせたりしなかったか。もしようしたことがあったら、すでに指示した祭日に、二年間の贖罪(パンと水のみの刑)を果たさねばならない。」
第一三四章「お前は浴場で妻あるいは他の女たちと一緒に身体を洗い、彼女たちの裸身を見たか。そして彼女たちはお前の裸身を見たか。もし見たのなら、パンと水だけで三日間の贖罪をしなければならない。」混浴はだめですか、そうですか。ただ、三日間の贖罪を覚悟してでも覗きをする男とか、すごく小説向きじゃないか!