絵画鑑賞をめぐる6作の短編集。どの作品も作者のキュレーターとしての経歴が生かされていて、作品そのものの蘊蓄よりも、観賞行為それ自体にフォーカスされている。特に2作目「デルフトの眺望」とラスト「道」が印象的だった。両者とも、自身の心象にある風景から他者の風景への跳躍、回帰が映える作品。 一方、何度も眺めていると味わい深いのが3作目の「マドンナ」で、前者2作が感傷を引きだすための、いささか都合の良い展開を持つのに対し、本作には飾ったところやたくらみが少なく、妙に生々しい生活感があった。

絵画鑑賞をめぐる6作の短編集。どの作品も作者のキュレーターとしての経歴が生かされていて、作品そのものの蘊蓄よりも、観賞行為それ自体にフォーカスされている。特に2作目「デルフトの眺望」とラスト「道」が印象的だった。両者とも、自身の心象にある風景から他者の風景への跳躍、回帰が映える作品。 一方、何度も眺めていると味わい深いのが3作目の「マドンナ」で、前者2作が感傷を引きだすための、いささか都合の良い展開を持つのに対し、本作には飾ったところやたくらみが少なく、妙に生々しい生活感があった。