こうした層も含めてファシズムの問題を考察したデ・マルティーノは、信仰の対象を国家に収斂させずに、自由への信仰をもちながらも、伝統宗教と科学技術への一定の信頼も忘れない、そういう多元的な社会に期待を寄せた。
そこには、自由を信仰せよという師クローチェの箴言だけでは納得できないデ・マルティーノの姿を見ることができる。かれの視野にあったのは、知的で理性的な市民だけでなかったからである。かれと同時代にあってもなお、イタリア南部に生きる人々は経済的・社会的底辺に身を置かざるをえず、かれらが生きた社会が大土地所有制の支配する農村であったがために、都市のように啓蒙思想を受容する可能性も極めて低かった。
こうした層も含めてファシズムの問題を考察したデ・マルティーノは、信仰の対象を国家に収斂させずに、自由への信仰をもちながらも、伝統宗教と科学技術への一定の信頼も忘れない、そういう多元的な社会に期待を寄せた。
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そこには、自由を信仰せよという師クローチェの箴言だけでは納得できないデ・マルティーノの姿を見ることができる。かれの視野にあったのは、知的で理性的な市民だけでなかったからである。かれと同時代にあってもなお、イタリア南部に生きる人々は経済的・社会的底辺に身を置かざるをえず、かれらが生きた社会が大土地所有制の支配する農村であったがために、都市のように啓蒙思想を受容する可能性も極めて低かった。