ここ数年で読んできた小説で最も惹き込まれた作品。複雑な関係性のなかで、繊細な心理描写が光る。誘拐犯と誘拐された少女の物語という表側だけを見たらそこまで奇抜な内容でもないが、この作品はその裏側を描く。構成もその点が意識されており、誘拐犯との関係性を理解できない世間やともに同じ時間を暮らす個人とも対立する構図となっている。恋人や同僚は善良の意思で理解を示してくれるも、深いところでの理解までは至らず、そこで葛藤する主人公の心理描写は解像度が高く素晴らしい。結末よりもプロセスが光るほどの心理描写力に圧倒。

ここ数年で読んできた小説で最も惹き込まれた作品。複雑な関係性のなかで、繊細な心理描写が光る。誘拐犯と誘拐された少女の物語という表側だけを見たらそこまで奇抜な内容でもないが、この作品はその裏側を描く。構成もその点が意識されており、誘拐犯との関係性を理解できない世間やともに同じ時間を暮らす個人とも対立する構図となっている。恋人や同僚は善良の意思で理解を示してくれるも、深いところでの理解までは至らず、そこで葛藤する主人公の心理描写は解像度が高く素晴らしい。結末よりもプロセスが光るほどの心理描写力に圧倒。

正体不明のクスノキの管理を伯母から任せられ、管理を通じていくなかでクスノキの仕組みを明らかにしていく。仕組みが明らかになるまでがかなり長く、その分仕組みに対する期待度が上がってしまった。予想を裏切る内容でないのが残念。まとめ方もラスト数ページで無理に展開をつくる雑な印象。病気の伏線も種明かしで回収した感さあるが、ストーリーに影響を与えたり、本当に病気が原因なのか疑わしいレベルで腹落ちしなかった。特に佐治家のまとめ方はあまりにお涙頂戴を一般化しすぎてかつ描写も浅いのでやっつけ感があり残念。