最後まで読んでみて、確かにわかるんだけど、答えが出なかったなという感じ。人それぞれの性的な趣向の違いは、頭では理解できているようで、でも言葉にしようとするとつまる。「多様性を尊重する時代」なんて軽々しく言えないな、と。果たして自分は”普通”なのか考えてしまう。モヤモヤが残りそうな話題なのに、やけにスッキリしているのが不思議。ただ、登場する検察官・寺井啓喜の公私混同は、職務上、だめなのでは？

元映写技師の夫・信好は、看護師の妻・紗弓と二人暮らし。四十歳になる今も諦めきれない映画脚本家の夢を追い続け、定職はなく、五歳年下の妻の稼ぎで生活している。淡々と夫婦の暮らしの話が続くが、何か良くないことが起きるんじゃないかとそわそわしながら読んだ。信好と母の関係にしても、どこか自分の過去と重なるものがあって、自分を顧みるには良い一冊だと思う。

主人公の勅使河原一子、元日生まれ。36歳になるこの一年間で、何としてでも処女生活に終止符を打つべく、自分を見つめ直すために日記を記す。三浦しをんさんのエッセイのような妄想と、引いてしまうような性欲が一年間続く。結局、この人は何をしたいのかな。自分で自分を貶めてしまっていて残念な人だと思えてしまった。登場人物も壊れている人ばかり。テンポが良く面白かったけど、それだけでおしまい。本当にこんな人がいたら目を合わせないと思う。辛口に聞こえますが、シリアスな本の谷間に読む分にはいい。。

「いろんな受刑者がいる、だから、いろんな刑務官もいなきゃいけない」確かに。刑務官ではなく看守、規則ではなく流儀、タイトルが5話に通じていると思う。塀の中だけの話ではなく、犯した罪の背景や出所後のフォローにも触れていて、少し刑事もののようで話に幅があって楽しめた。裏で糸を引く火石警備指導官は何者だと思いながらも、最後に思い込みをひっくり返され、おっとそうきたか。全体を通して看守の人情味に溢れ、ジンと来る場面が多かった。

最後まで読んでみて、確かにわかるんだけど、答えが出なかったなという感じ。人それぞれの性的な趣向の違いは、頭では理解できているようで、でも言葉にしようとするとつまる。「多様性を尊重する時代」なんて軽々しく言えないな、と。果たして自分は”普通”なのか考えてしまう。モヤモヤが残りそうな話題なのに、やけにスッキリしているのが不思議。ただ、登場する検察官・寺井啓喜の公私混同は、職務上、だめなのでは？

鎌倉で趣味のようなカフェを営む香良は、離婚して駆け込んできた旧友の三樹子の勢いで、シェアハウスを始めることに。入居した3人の女性との共同生活。5人ともそれぞれに訳ありで、人との関わりを避けたり、うんざりしたりと最初はぎくしゃくしながらも、みな意固地な自分に気づき、次第に生活を楽しめるように。知らないと人と関わるのは、まして生活するのはストレスも多いけど、今までの自分を振り返って変えるチャンスだと感じた。香良の母親と叔父、三樹子の元夫、千恵子の息子はあまりに周囲を不幸にしていて、後味悪い。