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2024年11月の読書メーターまとめ

sansdieu
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感想・レビュー
15
ナイス
72ナイス

2024年11月に読んだ本
17

2024年11月のお気に入られ登録
1

  • あきら

2024年11月にナイスが最も多かった感想・レビュー

sansdieu
ネタバレ就活がテーマのように見えても、ディジタルネイティヴと言われる現代の若者の自意識こそが本書の真のテーマだ。性格が悪いやつを追い詰めていく探偵であったはずの語り手こそが"犯人"(=性格が悪いやつ)であったと暴露されるミステリーだとも言える。イヤな時代になったと私は心底思う。プライヴァシーの侵害や態度の使い分けは昔もあったけれど、現代ではスマホやPC内の個人情報、プライヴァシーを盗み見したり、SNSで裏アカを作って本音を吐露したり、裏アカを突き止めたり。インターネットの暗い時代の到来を描いた小説でもある。
が「ナイス!」と言っています。

2024年11月の感想・レビュー一覧
15

sansdieu
ネタバレまず、著者の新しい叙述形式として、人間中心の世界観・倫理観を解体すべく、生殖本能という無生物を語り手に採用しているところに飽くなき探究心を感じた。宿命を規定するのは知的でないので、これが瑕瑾であるように思ったが、いずれ生殖本能も消えていくと示唆するのはよかった。次に、今回も主人公がゲイであることには、まじめなのに疎まれて部活を辞める主将、恋愛禁止を破って脱退するアイドル、異常性欲者など、マジョリティが維持する共同体の原理から零れ落ちたマイノリティやスケープゴートを擁護し続ける朝井リョウの文学を感じた。
が「ナイス!」と言っています。
sansdieu
ネタバレ迷信・陰謀論・非合理性・論理的矛盾がテーマ。表題作が最もわかりやすく、根源的。151頁の最後の行から152頁の9行目は必読。「ちょっとした奇跡」「密林の殯」はわかりやすいかな。冒頭の「七十人の翻訳者」や「神についての方程式」や「啓蒙の光が、すべての幻を祓う日まで」は学術風のはったりがきついが、人間は非合理、矛盾に満ちているという人間観を念頭に置いて読めば、言わんとするところは理解できるだろう。
が「ナイス!」と言っています。
sansdieu
ネタバレソウルのなかの「金のある人とない人」(267頁)のうち、金のないほうの若者の視点で生活と心理が描かれていく。具体的には、若手映画製作者、レコード店経営者とソウル・ミュージック愛好家、自分の思い通りに生きられなかった母親をもつ子、韓国独立映画に集う人々など。個性的で実験的な文体、表現が続くが、しかし、消えゆくもの、抑圧、排除されていくものの側から、世界を感じ、見ているので、文章を追うこちらの関心も動揺することはない。たとえあるものが0に向かっていても、完全に0になることはないのだろう。
が「ナイス!」と言っています。
sansdieu
ネタバレカヴァーの内側に書かれている「社会の多数派とそうなれない者とが理解と共存を試みる、彼女たちの選択7篇」ということばが最も簡潔に内容を示している。マジョリティとマイノリティのうち、どちらかが「この世界からは出ていくけれど」、お互いに殺し合わないし、完全に相手のことを理解できなくてもできるかぎり理解しようとし、敬意も抱いている、と。「君は君、我は我、されど仲良き」という武者小路実篤のことばを思い出しながら、他者との共存と寛容という同一のテーマを粘り強く七回繰り返す本書にいたく感銘を受けた。
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sansdieu
ネタバレこれは、著者あとがきのことばで言うと、「とうてい愛せそうにない世界を前にしながらも、最後にはそれを建てなおそうと決心する人々」の存在を発掘していく物語だ。世界の中心を占める利己主義から逃れて生きることは困難だ。しかし、その外で生きようとする共同体も存在する。共同体では、連帯、利他主義が人々の間で大きく働いているものの、意外なことに、その根底では、片方によって調整された"女"同士の愛憎が存在し、また外からは敵が迫る。共同体は内外から必然的に崩壊していくが、「場所を移す」ことで世界は救われる。って感じかな。
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sansdieu
ネタバレ教養ーーもちろん文学用語としては知識のことではなく、自己成長、自己形成のことであるーー小説。社会の不条理、不公平に触れながらも、社会の底辺に近いところで青春を過ごすこどもたちの生活が漫然と描かれていく。そのような序盤、中盤は少し退屈だった。しかし、あたかも序盤で張られていた伏線が引き上げられるように、終盤開始早々200頁あたりで物語は急展開する。いつのまにか暴力が連鎖していて、不条理にも、死が無垢な者に訪れる。大人に成長する過程で、ある者は国境を越えながら、喪失感を克服していく。
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sansdieu
ネタバレ幽霊を見ることのできる保健室の先生が怪奇現象を退治していく。基本的には冒険活劇だが、建物や制度には血塗られた過去が基礎工事として存在していることが幽霊を生み、いつか怪奇現象として溢れ出すという考えかたがこの活劇の根底にあるように思う。娯楽性の高いエピソードの流れに混じって、工事現場での事故死を主題とする「街灯の下のキム・ガンソン」、歴史教科書問題を主題とする「穏健教師パク・デフン」にはとりわけ心に響くものがあり、首肯しながら、読んだ。
sansdieu
ネタバレ就活がテーマのように見えても、ディジタルネイティヴと言われる現代の若者の自意識こそが本書の真のテーマだ。性格が悪いやつを追い詰めていく探偵であったはずの語り手こそが"犯人"(=性格が悪いやつ)であったと暴露されるミステリーだとも言える。イヤな時代になったと私は心底思う。プライヴァシーの侵害や態度の使い分けは昔もあったけれど、現代ではスマホやPC内の個人情報、プライヴァシーを盗み見したり、SNSで裏アカを作って本音を吐露したり、裏アカを突き止めたり。インターネットの暗い時代の到来を描いた小説でもある。
が「ナイス!」と言っています。
sansdieu
ネタバレSF短編集。優生思想に対する批判と多様性の尊重、他者への敬意、他者との交歓、科学技術万能主義に対する批判、出産で仕事上のキャリアが途切れることへの恐怖、紋切り型のマイノリティの自己解放の神話から外れる自己解放などがテーマだった。どのテーマもSFの領域を越えて現代社会の根源に切り込んでいると思った。
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sansdieu
ネタバレまず、大きな主人公の存在しない物語を書きたいという著書の意向から、相互につながりながらも一人を中心にした短編を五十一編つなぐ構成がおもしろかった。次に、繊細な文学的感性で現実をとらえつつも、感性だけに耽溺せずに、「世の中は不公平で、不公正で、不合理だ」(359頁)と言うように、現代の日本文学よりも社会の矛盾にはっきりと触れながら、人権が保護され、公平で、人々が助け合う社会を指向していること、すなわち文芸と倫理とが両立していることももよかった。
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sansdieu
ネタバレこの小説は、「正欲」すなわち性欲の対象は人間でなくてはならないという絶対的な観念を批判する小説である。まず、逮捕へと至る展開が強引だけれど、異なる考えかたをもつ人間同士に交わされる緊迫した対話、さまざまな人物の造型などにおいて、これが日本の娯楽小説の金字塔であり、次に、時事ネタをすぐさま書いて出す著者の才能の到達点でもあることはまちがいない。しかし、この小説が設定する最終かつ至上の価値が人間が孤立したまま自死、心中することなく、助け合って生き続けることなのは、この小説が突破できなかった単一性=反多様性だ。
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sansdieu
ネタバレ横浜の公立中学の元教員が著した郷土史研究。テーマは関東大震災朝鮮人・中国人虐殺とその後についてである。横浜という地域に的を絞っていることが特色であるが、なかでも、「第4章 横浜の中国人虐殺」「第5章 「9月2日」を追悼する」は本書でしか読めない内容だろう。最初は、大事だけれど、官民軍が流言蜚語、差別意識に踊らされた虐殺が凄惨であったことはすでに知っていたので、退屈な歴史書を読まされているように思えた。が、山口正憲、大川常吉、王希天、李誠七、村尾履吉など、キーパーソンが登場するにつれ、話しに引き込まれた。
sansdieu
本書は、著者がすでに上梓した『九月、東京の路上で 1923年関東大震災ジェノサイドの残響』と対を成している。前著は関東大震災朝鮮人虐殺を史実として検証する試みだった。今回、著者は関東大震災朝鮮人虐殺を否定する、すなわち"そんなのなかった"と強弁する否定論、歴史修正主義に対して文献を参照しながら反証を挙げる。その否定論は論者自身も自分には嘘だとわかっていても、史料の恣意的な切り取りなどのトリックによってでっちあげたものだ。著者は一次史料も添えており、ていねいに否定論を反駁している。
が「ナイス!」と言っています。
sansdieu
ネタバレ希望を失って渋谷の街をさまよい、高校を中退した"難民高校生"の一人だった著者が生きがいをみつけ、その体験をもとに難民高校生を救う手段について考える本。著者は、高校中退後、公認予備校に通い、「農園ゼミ」で人生の師に出会い、農作業を体験するなかで、生きがいをみつけていく。震災ヴォランティアにを端緒として、著者の現在の活動の基盤であるColaboを設立していく流れは感動的だった。
sansdieu
ネタバレ著者の著書は、おおむね、1.在日コリアン、2.外国人労働者、移民、3.沖縄県民という弱者、被害者に対する差別、偏見を告発することをそれぞれ目的として、三種類に分かれる。本書は3。 座り込みに対するひろゆきの冷笑。集団自決・慰安婦否定論。基地反対派議員に対する流言蜚語。『ニュース女子』による事実無根の誹謗中傷。基地反対運動家すべてに被せる「プロ市民」の蔑称。中国脅威論という陰謀論。関東大震災朝鮮人虐殺の歴史的事実に対して向けられている否定論。これらの冷笑、嘲笑を乗り越えるのは事実確認を怠らない姿勢である。
が「ナイス!」と言っています。

ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2020/04/09(1720日経過)
記録初日
2020/02/17(1772日経過)
読んだ本
566冊(1日平均0.32冊)
読んだページ
169503ページ(1日平均95ページ)
感想・レビュー
52件(投稿率9.2%)
本棚
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