登場人物がみんな優しいから安心して読める。せかせかしている時でも、この本を読むと穏やかな気持ちに。手元に置いておき、ざわざわする夜に読みたい本です。

優しい。優しくてじんわり沁みてくる。今いる「ここ」からどこか「遠く」に向かって歩いてゆくこと。考えるほどに自分が心もとなく感じる。でも、もっと大きな視点で見れば、「ここ」も「遠く」も同じ。それに気づくことが、歳をとるということなのかなと思った。「投げつけるはずだった石ころをね、いつのまにか掌の中で愛でるようになっちゃうんです」

突飛な設定にも関わらず入り込めた。子どもは欲しくないけど、子どもがいれば全てが丸く収まって安心できる、選択することから逃れたい、という主人公の思いや葛藤がよく伝わってくる。可能性には、お金と、諦念を抱きながら挑戦し続ける精神力と、選択した責任が求められる。確かにそうだと思った。しんどかった。

色んな三人暮らしのお話。うまくいかないパターンも出てきて、共に暮らす上で割り切ることって大事だよなーと思った。ルームメイトは友だちではない、相手の厚意を受け取るのと自分がそれに応えるのは別問題、という考え方が楽になれる。

ばななさんは、一瞬一瞬の世界の美しさを丁寧に受け止めている本当に素敵な人。ばななさんの小説で描かれる愛は相手を尊重して心から大切にしている様子が伝わる。その理由がこのエッセイを読んで分かった気がする。 「ぼけ」は聞く側の器が小さいだけ、という考え方は目から鱗だった。

登場人物がみんな優しいから安心して読める。せかせかしている時でも、この本を読むと穏やかな気持ちに。手元に置いておき、ざわざわする夜に読みたい本です。