成功できないのは努力が足りないからだという考えは「通俗道徳」と呼ばれ、人々の生活が不安定になり始めた江戸時代後半から広まっていった。誰もが自分の暮らしに必死で余裕がなく、失敗すれば「自己責任」とされがちな息苦しさは現代にも通ずる。現代では不安を受け止める仕組みは少しずつ広がりつつあると思うが、受け止める側もまた不安定で際どい状況が常だと思う。全く頑張らないのは問題だが、こんなに歯を食いしばらなければ成り立たない毎日をどうすれば穏やかに変えられるかと、足りない頭で考えている。

ここ数年井上雄彦さんのコミックが発売されないと思っていたら映画を作っていたとは…。新たな声優さんの起用が受け止められず映画は未視聴でいたがどうしても描き下ろしが見たくて本書を購入。ずっと秘めていたSLAM DUNKへの想い、その想いを届けるための途方も無く地道で丹念な作業に圧倒された。走り描きの作画さえキャラが生きているかのように魅力的で惹きつけられ、時間を忘れて見入ってしまう。作り手としての信念、挑戦する勇気、変わらず真摯な姿勢に感銘を受けた。たくさんの人の魂が込められた映画、必ず観に行かないと。

成功できないのは努力が足りないからだという考えは「通俗道徳」と呼ばれ、人々の生活が不安定になり始めた江戸時代後半から広まっていった。誰もが自分の暮らしに必死で余裕がなく、失敗すれば「自己責任」とされがちな息苦しさは現代にも通ずる。現代では不安を受け止める仕組みは少しずつ広がりつつあると思うが、受け止める側もまた不安定で際どい状況が常だと思う。全く頑張らないのは問題だが、こんなに歯を食いしばらなければ成り立たない毎日をどうすれば穏やかに変えられるかと、足りない頭で考えている。

思い返せばBOOK OF THE YEARは母がよく買っていてコミックの頁だけ見ていたな。こんなに隅まで読んだのは初めて。コミックランキングは8割読んでるものの小説は未読ばかり。「母の待つ里」「同志少女よ〜」は読みたい。編集長座談会では様々なジャンルや国や文化の垣根が壊れ始めて創作が自由になってきていることや、SNSの普及が小説に面白い影響をしていたり、10代20代の書き手・読み手が増えてきているなどの話がとても興味深かった。これからは文芸誌も読んでみたい。