容疑者Ｘの献身の原作と映画が良かったので本書を手に取る。予想を転じた真相に思わず声が出た。容疑者の狡猾さと被害者家族のやりきれなさの描写に揺さぶられた。事件の真相にも引き込まれたが、論理的な湯川が見せた懺悔のような恩情に特に感銘を受けた。映画に先がけて献身が放映されたのも納得。

容疑者Ｘの献身の原作と映画が良かったので本書を手に取る。予想を転じた真相に思わず声が出た。容疑者の狡猾さと被害者家族のやりきれなさの描写に揺さぶられた。事件の真相にも引き込まれたが、論理的な湯川が見せた懺悔のような恩情に特に感銘を受けた。映画に先がけて献身が放映されたのも納得。

発達障害当事者の具体的な工夫を知りたいと思い手に取る。うつを経験した著者の1ページ目からの優しさに救われる人は多いだろう。多くの啓発本は「工夫をして今の自分を変える努力」を要するが、本書では「自分らしく在るための工夫をする」をモットーとしている。「まともな生活ができていない」と自罰的になるのではなく「快適に生活するために楽になる工夫をしよう」と転換することは、発達障害当事者に関わらず全ての世代に当てはまる。特に片づけに関する記述が参考になった。大切なのは楽しく生きていくための工夫なのだろう。

日本以外が舞台の物語は登場人物を把握するまでどうも時間がかかる。犯人が最後まで分からずエピローグも終わりかけ一瞬戸惑ったが、その後で全てが明かされ背筋が凍った。振り返ると犯人の不穏な情景や事件へ誘うような動きが確かに見え隠れしていた。赤川次郎さんの後書きの「過不足のない、必要にして十分な描写」とはまさにその通りで、多数の殺人のインパクトより、巧みな構成が強く印象に残った。赤川さんの言葉もまた過不足のない、必要にして十分なものだった。文章の魔力を存分に味わえる作品だった。

著者の作品は３冊読んだがエッセイは初めて。小説からイメージする人物像と少し違った。青少年に絡む話題は頷ける場面が多かった。後半流し読みになってしまったのは、自分の大好きな漫画に対する著者の見解を読んだからだろう。悔しかった。世論に関係なく、自分はあの漫画に救われたことが何度もあった。自分の大切にしてるものを貶されて、このエッセイで垣間見た著者の良さも立ち消えてしまった。

アガサ・クリスティー初読。圧倒的なポアロの観察眼と推理力に何度も頁を振り返り、「本当だ…」と脱帽を繰り返した。何回帽子脱いだか（笑）。自分の読んだ中で最も歴史のある作品に入り込めるか半信半疑だったが、同じ列車で道中を共にしたかのようにのめり込んだ。悲しい背景を持った殺人事件の物語だったが、感想としては素敵な旅だったと思ってしまう。重厚な列車と乗務員のサービス、時折登場する上質な品々の描写に未知の世界の華やかさを感じ、うっとりしてしまったのだ。他の作品も読もうと思った。

ミリさんのオトーさんの無邪気なこと。シバかれるのと怒鳴るのは嫌だけど、好奇心旺盛で感受性の豊かな人だったのだろう。自分が親になって思ったのは、子どもの前で一生懸命な姿やいろんな表情を見せられるのが大切なのではということ。なのでミリさんはオトーさんに愛情と楽しく生きていく術をたくさんもらったのではないだろうか。本書を読んで「永遠のおでかけ」も読みたくなった。