ネタバレインク三部作/喪失感 「青いインク」の山崎に「青いインクの話のつづき」で戸島が加わり「ヒイラギの青空」でヒイラギに引き継がれたであろう青いインク（『月とコーヒー』より）。探していた「六番目のブルー」は「五番目のブルー」が深い悲しみ、涙にふれて生まれた色だった。叔父さんが言うように「悲しみには終わりが必要」。旅が終わり、オリオが「五番目のブルー」を受け入れたのは、ベルダさんを失った深い悲しみに浸っていた状態から、彼の思いを引き継ぎ、めぐる世界の一員として生きる、ある意味、悲しみの終わりなのだと思った。

ネタバレ家事/あたたかい読後感 過労で商社を退職し家事代行として働く津麦と、シングルファーザー・朔也と彼の5人の子どもたちとの物語。働き方や家族のあり方が変わり、家事に専念する時間がとりづらい今、かつて自分がしてもらった家事を、自分はできていないと悩む人は多いだろう。家事は「生きやすい家」をつくるためのもの。家事をやりすぎて家族との時間をとれなくなっては本末転倒。津麦の成長、ヤングケアラーにさせまいと頑なだった朔也の変化、子どもたちも自分のことは自分でできるようになりそうで、晴れやかなラストだった。

ネタバレインク三部作/喪失感 「青いインク」の山崎に「青いインクの話のつづき」で戸島が加わり「ヒイラギの青空」でヒイラギに引き継がれたであろう青いインク（『月とコーヒー』より）。探していた「六番目のブルー」は「五番目のブルー」が深い悲しみ、涙にふれて生まれた色だった。叔父さんが言うように「悲しみには終わりが必要」。旅が終わり、オリオが「五番目のブルー」を受け入れたのは、ベルダさんを失った深い悲しみに浸っていた状態から、彼の思いを引き継ぎ、めぐる世界の一員として生きる、ある意味、悲しみの終わりなのだと思った。

ネタバレ短編集 兄から出た土を集めて薔薇を咲かせる弟「土」、ゴリラ研究者が火山と相撲をとる「スモウ」、不思議な花びらに誘われる「ジュプン」など、夢を文字化したような作品多め。「その日の台所を、表へもっていって食べる、うちと外の中間みたいな食べもん」だから「サンドイッチは、自分の手ぇで作らなあかんえ」や”音はにじんでくる”に共感した「自然と、きこえてくる音」、父子と三浦半島で出会ったツーリン仲間の思い出「ウミのウマ」、予知夢をみた少年と手品師「船」、通学路で子どもを見守るホームレス「おとうさん」が読みやすかった。

ネタバレエッセイ/じんわり 赤いライダースの高齢女性の名言「みんなの期待の分重くなったわ」にクスッと笑った「目分量の日々」。琥珀が跳ね返してくれたみじめさ「虎のたましい人魚の涙」、冬の蠅への愛おしさ「蝿を飼う」、青白く光る雪の懐かしさと生姜のゆるキャラが想像できてニヤニヤしながら読んだ「雪の道」、心の中の声に支えられる「竹馬とキートン山田」、高校時代からの友人の人生「陶器のような恋」が印象に残った。

ネタバレ仕事/人間関係/花言葉/和歌/恋 植物は季節を思い出させてくれるから好きだ。ブラック企業で疲れ果てた紀久子が、花屋でのアルバイトを通して回復、デザイナーの夢を叶える物語。各章、花言葉にあった物語が展開され、結婚詐欺など事件もあるものの、優しさに満ちている。〈ゴッホのヒマワリ〉や〈モネのヒマワリ〉は、画家の描いたヒマワリに似せて品種改良されたもので、ヒマワリより絵が先に存在した、のような豆知識も知れて面白かった。

ネタバレミステリ/アンソロジー 〈姫川玲子〉シリーズ・誉田哲也『心のお話』、不倫が先か調査が先か・五十嵐律人『千鳥の契り』、詐欺が巡る真梨幸子『インクリボン』、空白恐怖症の殺人・青柳碧人『空白の女』、家族愛を試した少女・五十嵐貴久『THE KIDNAPPING』、心霊探偵の謎解き・澤村伊智『わたしの最後のホラーミステリ』。澤村伊智さんが印象に残った。