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2025年12月の読書メーターまとめ

ヒラリ
読んだ本
3
読んだページ
1319ページ
感想・レビュー
3
ナイス
37ナイス
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2025年12月に読んだ本
3

2025年12月にナイスが最も多かった感想・レビュー

ヒラリ
感無量。晴子という人物は楽天的で、慈愛に満ち、ユーモアすら失わない。その姿勢が、国家や理念、政治といった巨大で空疎なものを、正面から否定するでもなく、ただ相対化していく。國體という「昏い霧」、定義できないのに人を熱狂させ、暴力に利用される観念。その霧に反応してしまう人間の中の「放浪する半身」を、晴子は最後まで信用しなかったように見える。彰之はその半身に引き裂かれ続けた。理念を失った時代に生まれ、行動できなかった自分への嫌悪を抱え、膜を破りたいと願い続けた。
ヒラリ
2025/12/16 20:38

しかし母の最後の手紙で示されたのは、飛翔でも突破でもない。米内沢の庭に立ち、草木や空気や、息子の残した声や匂いを感じ切ること。その瞬間に訪れる歓喜だった。それは救済でも答えでもない。ただ、世界はこの程度で十分だったという静かな肯定だった。この小説を読むと、少し人にやさしくなれる気がする。人を好きになれる気がする。それでいいのだと、晴子は言っているように思える。

が「ナイス!」と言っています。

2025年12月にナイスが最も多かったつぶやき

ヒラリ

年の瀬に読んでる本が面白いっていう、それだけのことで幸福感メガ盛り。良い年迎えられそう。

が「ナイス!」と言っています。

2025年12月の感想・レビュー一覧
3

ヒラリ
二つの生の密度が静かにぶつかり合う。福澤榮という政治家が生きた「能動」の時間と、息子・彰之が生きてきた「発心と非情」の時間。本書は、そのどちらが正しいかを裁くわけではなく、両者がそれぞれの場所で必死に生き切った痕跡を、同じ重量で我々読者に差し出してくる。榮は、統治の意志を持つことで王となった。政治の曖昧さを引き受け、その生は世俗的であり、徹底して現実に根を張っている。一方、彰之は、非情と無情の狭間で、断ち切るほどの縁も無かったことに愕然とし、生を生き直そうとする。その自省は苛烈で、しかも逃げ場がない。
ヒラリ
2025/12/29 14:40

二人の対話は、父子の和解でも対決でもない。政治と仏法、能動と受動、王と修行者といった対立項は提示されるが、どれも安易に統合さるわけでも相対化されるわけでもない。ただ、互いの生が「そこに在った」ことだけが、静かに照らされる。上巻を読み終えて残るのは、答えではない。「選択とは何か」、「生を引き受けるとはどういうことか」という問いが、読者自身の足元に置かれる感覚だ。榮と彰之の生は、まだ交わり切っていない。その未完の交錯に期待を寄せながら、いざ下巻へ。

ヒラリ
2025/12/29 14:41

晴子の不在が結構効いてくる。晴子情歌も新リア王も、何度も読んできたが、この感覚はいままで無かったな。晴子情歌で蓄積された慈愛とユーモアの重力が、榮と彰之の二人をどう歪ませ、どう支えるかも見逃せない。

が「ナイス!」と言っています。
ヒラリ
感無量。晴子という人物は楽天的で、慈愛に満ち、ユーモアすら失わない。その姿勢が、国家や理念、政治といった巨大で空疎なものを、正面から否定するでもなく、ただ相対化していく。國體という「昏い霧」、定義できないのに人を熱狂させ、暴力に利用される観念。その霧に反応してしまう人間の中の「放浪する半身」を、晴子は最後まで信用しなかったように見える。彰之はその半身に引き裂かれ続けた。理念を失った時代に生まれ、行動できなかった自分への嫌悪を抱え、膜を破りたいと願い続けた。
ヒラリ
2025/12/16 20:38

しかし母の最後の手紙で示されたのは、飛翔でも突破でもない。米内沢の庭に立ち、草木や空気や、息子の残した声や匂いを感じ切ること。その瞬間に訪れる歓喜だった。それは救済でも答えでもない。ただ、世界はこの程度で十分だったという静かな肯定だった。この小説を読むと、少し人にやさしくなれる気がする。人を好きになれる気がする。それでいいのだと、晴子は言っているように思える。

が「ナイス!」と言っています。
ヒラリ
彰之が永平寺への上山を思いながら踏み切れず、漁船に乗るという心の動きには、どこか所在のなさが垣間見える。永平寺は世界の雑音をすべて消し、無音の底に沈み込みたいという願いの行き先だろう。漁船は、騒音と危険のただなかへ身体を投げ込み、生きている手応えを取り戻そうとする衝動に近い。彰之にとってはどちらも逃避という一点でつながっているように思える。彰之は静寂にも混沌にも完全には身を委ねられない。自分の存在をどこに置けばいいのか分からないまま、揺れ続けているように見える。
ヒラリ
2025/12/07 09:50

その不確かさは本書の多くの登場人物に共通している。彼らは、思想や時代に翻弄されながらも、心の揺らぎ、人間の弱さと美しさを鮮やかに放っている。康夫も、富子も、そして晴子もそうだ。そんな晴子だからこそ、募る思いを抑えきれず、迷い続ける息子を外側から支えたいという願いを、百通もの手紙に託したのだろう。彰之の揺れる心に寄り添い、ユーモアいっぱいで励ます、あたたかい手紙である。

が「ナイス!」と言っています。

ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2021/03/09(1785日経過)
記録初日
2021/03/14(1780日経過)
読んだ本
301冊(1日平均0.17冊)
読んだページ
108422ページ(1日平均60ページ)
感想・レビュー
293件(投稿率97.3%)
本棚
6棚
性別
血液型
A型
職業
専門職
自己紹介

小さくやってます
好きな作家は高村薫、塩野七生、湊かなえ、梨木香歩、嶽本野ばら、スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ 、西加奈子、綿矢りさ、伊藤計劃、ドストエフスキー、ミラン・クンデラ、辻村深月、太宰治、志賀直哉(順不同)🙋🙋🙋
嫌いな作家は本棚参照
趣味は読書(小説)と音楽(ライブ)とおしゃれと酒とヨガ
好きな音楽はyonige、さよならポエジー、OLEDICKFOGGY、bacho、LOSTAGE、The Slumbers、CONSTRUCTION NINE(順不同)など
好きな食べ物はセロリ。嫌いな食べ物は無し。
mbti はINFJ-T提唱者

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