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2024年10月の読書メーターまとめ

本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
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2024年10月にナイスが最も多かった感想・レビュー

本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
☆ serial number 222(2024:Oct-21) ☆ 本作品がデビュー作であるこの作家の作品構想や文体の基礎部分が詰まった作品である。多作な作家の作品を読むとき最新刊や近刊を読んだ後でデビュー作に戻ってみるのは興味深いことだと思う。主人公が何らかの事態に巻き込まれる。世間とは距離のある場所で物語が進む。良心や良識に反する登場人物がいる。残酷な描写があるが,そういうものを最も恐れているのが実は作者本人である。ことばあそびが隠れている。こうした諸要素の萌芽がこの作品の中に全部ある(②へ続く)。
本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
2024/10/24 09:01

②(承前)☆ 同著の解説でシュールという言葉を久々に見た。ぼくが若かった頃にこの言葉が持っていたひんやりとした肌触りを久々に思い出した。物語の本筋が「謎解き」であるからミステリ小説には違いないのだが,コロコロと転がっていくストーリィ展開はこの作家の基調に「人生は多かれ少なかれ(ドタバタ)劇である」といううっすらとした諦念のようなものを感じさせる。同時に「人と人との繋がり」を描いていく普遍的かつ現代的作家であるということも。

本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
2024/10/24 09:06

【参考】Wikipedia「ジョン・ジェームズ・オーデュボン(特に[オーデュボンの博物画(画像集)] 真ん中の列のいちばん下の絵)」,Wikipedia「リョコウバト(日本版)/Passenger pigeon(English/自動翻訳)」

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2024年10月にナイスが最も多かったつぶやき

本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)

2024年9月の読書メーター 読んだ本の数:23冊 読んだページ数:7652ページ ナイス数:2210ナイス ★先月に読んだ本一覧はこちら→ https://bookmeter.com/users/1255169/summary/monthly/2024/9

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2024年10月の感想・レビュー一覧
27

本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
☆ serial number 228(2024:Oct-27) ☆ 「生きてるうちが花なのよ」とはいえ,古い学園ドラマの主題歌のようにひとは皆ひとりでは生きてゆけない」し,「ひとりで生きていければ」後始末は誰もしないことになる。いや,世の中はそんなに上手く出来ていないのだ。誰だか分からない人達の「後始末」だけが残っていく光景は寒いを通り過ぎて言葉を失う。反動主義者たちは「イエ制度」の崩壊と行きすぎた個性重視の末路(自分達の未来)を見て真っ赤になって元に戻そうとするが若い人達は冷たく見放す(②へ続く)。
本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
2024/10/31 22:23

②(承前)☆ 自由に生きることの結末がそういうことになった時,周囲の人々はどう思うのかは(たまたま今読んでいる)町田そのこがよく取り上げる題材だが,実際のところ(実務ベースの話として)いろんな意味で厄介なことなのである。これに輪をかけるのが認知症の問題で,確かに和田秀樹が著書に書くように(認知症に)なった本人はある意味世の中の柵(しがらみ)から解き放たれるのだろうが,世の中の人間が全部「今だけ金だけ自分だけ」ではないので,同著の前半部が実に深刻な問題となっていく。著者も強調するように第5章は自分事なのだ。

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☆ serial number 227(2024:Oct-26) ☆ 最初は中学の歴史の教科書だった。国語で文学史みたいなのもあったかもしれない。近松門左衛門。が江戸時代の人で人形浄瑠璃の名作を書いた(「曽根崎心中」「心中天網島」「女殺油地獄」)。これは知識の断片となり,ぼくの脳ミソに定着した(古典で習う機会もなかったから一行も読んでいない)。そしてぼくは,その人はどういう人物でどんな時代の何処で生きたのかなどという興味は全く持たないまま,半世紀くらい経った後にこの物語と向き合うことになる(②へ続く)。
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2024/10/30 23:55

②(承前)☆ 江戸時代の文化は来年のNHK大河ドラマで蔦屋重三郎が取り上げられるが江戸中期から後期の人物であり,同著が示すように江戸前期(元禄文化)は上方に勢いがあった。思えば昔の歴史の授業は政治や統治制度(内政・外交)の話があって,芸術・文化は後の方に付け足しのようにまとめられていた。上方と江戸という二つの重心を持つ江戸文化を理解するのに人や作品の固有名詞だけは足りなかったのだ(同著に則せば歌舞伎は「かぶき狂言」→「かぶき芝居」であり,浄瑠璃から義太夫節が分化した経緯も分かる(③へ続く)。

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2024/10/31 00:09

③(承前)☆ Wikipediaで近松門左衛門の項目を見ると作者がメインに使った史実が見えてくる。以前から書いているように歴史小説は史実を骨組みとし,作家の想像(創造)力でそれを膨らませるものである。だから主人公の名は最初から最後まで(杉森)信盛で通す(例えば近松の謂れとなる「金松寺」のエピソードはWikipediaにもある)。綱吉から吉宗までの将軍家を筆頭に井原西鶴や坂田藤十郎といった当代の文化人との係わりも創作の中にうまく織り込まれ,江戸時代のどの辺りでの話なのかが読んでいると掴めてくるのも良かった。

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☆ serial number 226(2024:Oct-25) ☆ 同著を読み解く時,ひとつの仮定を置いてみると良い。「もし自分がPRC(中国)の外交官であれば,この人物を外交官としてどのように評価するか?」。この読み解きで著者が外交と外交官の仕事をどう捉え,それを実践する際の心構えとそのやり方にどのような工夫をしたかを学び取ることができれば,官民の如何を問わず「組織の中で自分と対立する意見(集団)とどのように対峙していくか?」という問いの有効な回答を得ることができるだろう(②へ続く)。
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2024/10/29 11:27

②(承前)☆ 著者の思いの丈(たけ)は第13章に語られており,それはそれで意義深いが,学ぶべきは①相手の出方(特徴,強味弱味)を知ること,②誰を味方に付けるか(どのように相手の理解を得,協力してもらえるか(そのために自分に何ができるか,どのように"汗をかく"か,③(想定)敵に対してどのように対抗(相手の論理を無効化)するか,④相手の論理に対抗する際,自分の論理を第三者に理解されるための工夫(言葉の用い方と使い方)などたくさんある。しかし全ての前提は「外交官は自分の国を背負っている」というプライドだろう。

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2024/10/29 11:34

【補遺】☆ 著者が(やや強硬な)右派論客(例えばカウンターパートになる中国人の表記を中国語と日本語とで使い分けている。当然"後者"に対する著者の評価は低い)であることを前提としても,同著に書かれたことは「国の進路」を考える上で非常に重要な提言であることは間違いない。なお,ぼくの文章の中に出てくるPRCとは"People's Republic of China(中華人民共和国)"のことで,この表記を用いるのは喋り過ぎるコメントの「字数を節約する」ためである。長文駄文失礼。

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☆ serial number 225(2024:Oct-24) ☆ 橘玲が『ゴミ投資家』シリーズ(同著258頁参照)を書いた背景にはこの国の投資環境の貧しさがあった。それは基本的に資本や株式会社の本質を理解せず(学ぶ機会もなく)カイシャは『太閤記』式の「出世双六」であると考えてきた古臭い環境そのものにあった。言い換えると株式会社本体を含む発行市場から流通市場までの全てにその原因があった(総会屋はその徒花だった)。橘たちの自称はパンクスと同じでエスタブリッシュメントに向けたものだったのである(②へ続く)。
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2024/10/29 09:25

②(承前)☆ 同著の改版のやりかたは著者の性格を反映して非常に合理的である。また新版まえがきの冒頭で本人が自身を持って宣言しているように,基本的な内容に普遍性があるためデータ更新(途中に適切な注が入る)以外の骨組みは変わっていない。要は初版が出た時に同著に書かれていることを理解した人は再読の必要はほぼ無く(基本を確認するなら別),新しい読者は古い読者が旧版を読むときにしたように同著を注意深く読めば良いのだと思う。ここに書かれたことはBasicであり,Back to the basicには意味があるので。

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2024/11/18 16:06

【訂正】②(承前)☆ 2行目「自身を持って」➡「自信をもって」

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☆ serial number 224(2024:Oct-23) ☆ このシリーズは最初の作品を読んでいた(TVドラマも少し見た)が読者としては途中の数作が抜けていた。また,作者の著作も人物評伝など小説以外のものを最近は読んでいた。久しぶりに読むとシリーズもの特有の「あの雰囲気(読みこなしているものには自分の家のように思える感覚)」が戻ってくるのを感じた。同時にシリーズ作品はやはり最初のものから順番に読まないと途中の謂れ因縁が把握しきれないもどかしさ(隔靴掻痒感)があるなと改めて思った。
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2024/11/03 11:44

【余談】☆ このケルベロスを英語読みすると"サーベラス"となり,サーベラス・キャピタル・マネジメント(Cerberus Capital Management, L.P.)というJTCと渾名される一部の日本企業にとっては厄介な存在となるプライベート・エクイティ・ファンドを指すことにもなる。

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☆ serial number 223(2024:Oct-22) ☆ 新田次郎『孤高の人』はアルピニストの話だ。登山という単独行もありうる世界でパーティの持つ"重さ"が主人公を苦しめる。まして落合博満が籍を置いたのは(プロ)野球という集団スポーツの世界であり,さらにそれが集団の同質性を圧とする「タテ社会」(中根千絵)の世界での話だ。プロ野球監督になる遥か前アマチュア野球の世界ですら,その「タテ社会」の不合理性に気付きまるで用心棒のような役割を演じてきたのがこの人物なのである(②へ続く)。
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2024/10/25 11:04

②(承前)☆ その高校時代のエピソードが落合に映画についての書物を著させるほどに結実しているのが興味深いが,その頃からこの人物が「ある不動点からの観察」によって野球の内実を自然と掴んでいったと思わせるのは著者の力量だ。そしてこの人物の基本には「単独者(Single man)として生きていくためには何が必要であるか?」という問い,つまりプロ野球という環境の下,各選手がどんなレベル(技術+心構え)を持ってそこにいるべきかという問いの解を常に持っていたことを各エピソードから解き明かしていくのである(③へ続く)。

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2024/10/25 11:11

③(承前)☆ 結局はこうした合理主義は冷徹な衣を纏っているが,たとえアマチュアに嫌われたとしてもプロフェッショナルである以上,それが基本であるということを曖昧にしてはならないのだ。それを雄弁に語るのは「契約」に対する淡々とした割り切り(と延長に対する正当な対価の要求)にまつわるエピソードであろう。これが「がめつい」などという情緒的な批判に晒されている限り,真のプロフェッショナリズムは根付くことは難しいとぼくは思っている。また単行本未収録部分はその試合中継を見ていた者には本編の補足以上に意味あるものだった。

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☆ serial number 222(2024:Oct-21) ☆ 本作品がデビュー作であるこの作家の作品構想や文体の基礎部分が詰まった作品である。多作な作家の作品を読むとき最新刊や近刊を読んだ後でデビュー作に戻ってみるのは興味深いことだと思う。主人公が何らかの事態に巻き込まれる。世間とは距離のある場所で物語が進む。良心や良識に反する登場人物がいる。残酷な描写があるが,そういうものを最も恐れているのが実は作者本人である。ことばあそびが隠れている。こうした諸要素の萌芽がこの作品の中に全部ある(②へ続く)。
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2024/10/24 09:01

②(承前)☆ 同著の解説でシュールという言葉を久々に見た。ぼくが若かった頃にこの言葉が持っていたひんやりとした肌触りを久々に思い出した。物語の本筋が「謎解き」であるからミステリ小説には違いないのだが,コロコロと転がっていくストーリィ展開はこの作家の基調に「人生は多かれ少なかれ(ドタバタ)劇である」といううっすらとした諦念のようなものを感じさせる。同時に「人と人との繋がり」を描いていく普遍的かつ現代的作家であるということも。

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2024/10/24 09:06

【参考】Wikipedia「ジョン・ジェームズ・オーデュボン(特に[オーデュボンの博物画(画像集)] 真ん中の列のいちばん下の絵)」,Wikipedia「リョコウバト(日本版)/Passenger pigeon(English/自動翻訳)」

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☆ serial number 221(2024:Oct-20) ☆ 1990年からドイツに在住する著者によるドイツ工業界の現状と課題の考察。「ものづくり」の地力が大企業からのケイレツ・ピラミッドを構成していた本邦と中小企業がものづくりの力でブルーオーシャンを開拓してきたドイツとの差にあるという指摘までは非常に良かった(池井戸潤『下町ロケット』を彷彿させるのだが)。でも両国に共通する問題は,労働人口の高齢化や短銃労働など低賃金労働における人手不足などがありどの国も似たようなものだと感じる(②へ続く)。
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2024/10/21 23:49

②(承前)☆ 同著から感じる日独の差はシュレーダー政権と小泉政権の差であったかもしれない。同時に新自由主義的政策に対して企業統治機構や特に労働組合の果たす役割に決定的な差があったことが両国の差に繋がったような感じがした。【補遺】最初に書いたように著者は1990年から30年以上ドイツに住んでいるのだが,後半の三章に同じようなことを何度も書いており,いささか興醒めしてしまった。編集者はそこを見落とすべきではなかったと思う。

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☆ serial number 220(2024:Oct-19) ☆ 佐藤優が母親の出身地である沖縄県の久米島高等学校で行った特別授業を本にしたもの。佐藤の活動は著述やラジオ出演の他にさまざまなレベルのレクチャーを行うことが知られているが,腎臓病が悪化する前後は幾つかの高等学校に出向いて特別授業を行った。同著もその一環だったもので内容的にはこの著述家の考え方の基礎部分を解りやすく伝えたもの。薄い本だが虚心坦懐に読む価値があると思う(②へ続く)。
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2024/10/22 11:15

②(承前)☆ 佐藤がここで話していることで確認しておきたいことは保守と革新の定義である。右翼左翼がフランス革命後の国民議会における議員の配置(議長から向かって右か左か)で決まった(加えて言えばロベスピエールらジャコバン・クラブに集った急進派は議席の上部に集まっていたので「山岳派」と呼ばれた)。保守の定義は佐藤が指摘する通りであるが,単純に「昔は良かった」とする"反動"とは異なることに留意すべきだ(もちろん両者の間の親和性の高さまでは否定しない)。

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ネタバレ☆ serial number 219(2024:Oct-18) ☆ 太閤記が面白いのは秀吉が天下を獲るまでで,その後はあまり面白くない。スタートがあるからゴールがあるのであって,ゴールが死である人間の場合,それは「訳もない重圧」となって襲いかかってくる。なぜ秀吉が「唐入り」に執着したかといえば,結局のところ「生き続けたかった=死にたくなかった」ということになる。これはあくまでこの小説における解釈であり,ひとつの見方として(フィクションとして)味わうべき類の話であろう(②へ続く)。
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☆ serial number 218(2024:Oct-17) ☆ 著者は著名な学者(同時に"フリーランス")であると同時に大蔵省(現財務省)OBでもある。同著を読んでそういった著者自身のさまざまな「属性」が窺えて興味深かった。パーティ券脱税問題に関しては言わずもがなだが,同著前半で著者が指摘する様々な課税(臨時)措置(≒政策)の問題点は概ね指摘の通りであるが,では対案はというと「増税」以外に見えてこない。そもそも税務自体が特別措置を重ねてきたものであることは著者に限らず自明である(②へ続く)。
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2024/10/20 18:35

②(承前)☆ 税制の抜本改革が困難を極める理由も少なくともこの役所で実務を経験したであろう著者にも周知のことである筈だ。それは確かに政治(立法/行政)の問題である。だが論を立てるのであれば合理的対案も同時に求められるのではないか。その意味で若年層の資産形成を金持ちの益税の話にすり替えた第8章の論旨は唖然とさせられたし,逆に第9章は確かにそうだが自分事になってやしないかと皮肉に感じるところもあった。問題の立て方は理解できるので,もう少し大局的な議論を期待したいと感じた。

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☆ serial number 217(2024:Oct-16) ☆ 本の中で珍しく初期の「受験の神様」時代の書物に触れていたのが今となっては微笑ましい。著者の本は基本的な主張は(同じ人物が書いているのだから当然)変わらないので,ぼくの場合はその芸風を楽しむために読んでいる。医学も科学であるので様々な形で変化(進化?)していくにも係わらず,人間は自分が学んだ時代のものをベースにモノを考えてしまうので,そういう人が偉くなると権威主義に走り却ってうまくいかないことになるというのが著者の基本的主張である。
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ネタバレ☆ serial number 216(2024:Oct-15) ☆ 先日TVドラマ(見ていない)が放送された作品。出だしは"帰郷もの"に見えたが,実はそれが作り物(疑似体験系)であるところから話が展開していく。この作り物にリアリティが生まれてくるのは各人が実際の生活とゲストを迎える虚構の双方を生きているからだ。これは形を変えれば芸能界の住人が実生活に則した内容の投稿をSNSにアップすることとも近似性がある。虚実のはざまは明らかであるのに,いつの間にか心情が「その場所」に寄り添ってしまうのだ(②へ続く)。
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☆ serial number 215(2024:Oct-14) ☆ キリストがユダヤ教の改革者として現われたこと。更にムハンマドが預言者として現われたこと。この一神教の「連鎖」が世界の宗教をめぐる問題の真ん中にあるように感じている。最終的に神様(もしくは神の子)による審判を受ける者にとってその審判がいつ下されるのかは長く大問題だったと思う。そのための条件としてパレスチナの地にユダヤ国家(イスラエル)が生まれ,今日に至る問題の根底となっている。そのあたりから理解することでようやく同著の本筋がみえた。
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☆ serial number 214(2024:Oct-13) ☆ 第2次世界大戦後の"冷戦構造(鉄のカーテン)"成立は前世紀後半の"国體"を形成した(白井聡が『永続敗戦論』で示したとおり)。その"国體"はマルタ体制(1990年代)に一度崩れたが,大バブル崩壊の後始末に追われた日本では,体制変換にすら間に合わず"Status Quo(現状維持)"に甘んじることとなる。これに「小選挙区制導入」とネット社会到来という二つの変化が加わり,現在に至る道ができあがったように感じる(②へ続く)。
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2024/10/17 09:29

②(承前)☆ スタンスの大きく異なるふたりが,互いの立ち位置を認めた上で率直な意見交換を行う。"論破合戦"になりがちなディベートとは本質的に異なる議論の場(論座)であり,ここ数年の政治情勢(環境)を背景にシリーズ的にこうした考察が行われることは,ややもすれば声の大きさと上っ面の勇ましさだけがちやほやされる未成熟な論壇環境にあっては非常に貴重な場であると思う。

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☆ serial number 213(2024:Oct-12) ☆ 同著もそうだが,佐藤優の本は単行本や新書などから文庫化されることがあり,彼が健在である限り文庫化時点でその内容がアップデートされる(本書の場合はプーチンの項目でのプリゴジン事件など2022年以降の動静)。その結果,ぼくは文庫化された本を買い直して読むことになる。独裁者も人間である以上(実際そうなってはイヤだろうが)ぼく達(が日常を過ごす社会や組織)とも通ずる部分があるように思う。=場合により追記=
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☆ serial number 212(2024:Oct-11) ☆ 読むのが遅くなり時機を得ないこととなってしまった(内閣総理大臣をはじめ自由民主党,公明党,立憲民主党,日本共産党の党首(代表者)が交代したことや新たなる保守という看板を掲げた政党が複数誕生していることなど)。よって同著の元になったインタビューが行われた一昨年末の時点に戻って目を通してみても確かに説得力のある指摘が多いと思う。衆院選が間近に迫るこの時点ではこれ以上のことは書かない。
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ネタバレ☆ serial number 211(2024:Oct-10) ☆ 累卵の危(あや)うきという故事成語の通りに進んでいく話だった。川上弘美の解説は本人が書いているように途中で見ない方がよいと思う。全ての物事が相互に作用し合ってカタストロフィーへと向かっていくが,そのカタストロフィーは描かれることなく物語は幕を下ろす(呉勝浩『爆弾』の最後の一行みたいに)。これがミレニアム前後の設定の割に「世間」を感じさせないトーキョーで終始するさまは怖いというより不気味である。作家が自らの進むべき方向を明らかにした一作。
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☆ serial number 210(2024:Oct-09) ☆ トップバッターの海音寺潮五郎が小説の末尾に書いているように"真田幸村"という武士は彼が生きていた時代には"真田信繁"である。この人物評伝というか講談調で読むと不思議にスラスラ読める海音寺版を筆頭に真田氏を描く各小説家の文体や構想の違いを味わうセレクション。今村著ではあまり名前の出てこない柴錬の作品があったりして興味深い。こうした切り口で昔の作家の作品を紹介する本を書くことは歴史小説の裾野を広げる意義を持つのだと思う。
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☆ serial number 209(2024:Oct-08) ☆ 『VIVANT』という日曜ドラマが非常に評判を呼んでいたことは知っていたが,その監修に係わったという公安(外事)OBが著した本。公安警察に関するイメージは警察小説の中でもある程度のパブリック・イメージができているし(著者も第5章の中で刑事警察との関係に触れている),外事警察も小説やドラマで取り上げられ,自衛隊の「別班」も新書が出ていた(既読)。こういったことを背景に「触れられる範囲内」でエピソード中心にチラっとその姿を教えてくれる一冊。
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☆ serial number 208(2024:Oct-07) ☆ 同著の最終的な目的は「おわりに」の末尾(205頁)にあるように「国際政治の戦略的な面を理解」するところにある。そしてこれだけの分量の内容をここまでコンパクトかつ適切にまとめた著者の力量は大いに評価すべきであると思う。「地政学ブーム」に潜む危険性は著者が指摘している1980年代初め(レーガン政権)を実際に見てきた者として良く分かる。当時はまだ眉唾物のような扱いであったが現在は「時の話題の背景のひとつ」に挙げられているのだから(②へ続く)。
本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
2024/10/08 12:32

②(承前)☆ 地政学について書かれた本を何冊か読んだが,そういった本を読んだ後で「基本の基本」を識る上で同著は極めて役に立つと思う。また勢力均衡説が必ずしも「保守派の古臭い論説」ではない現状であることや中国(PRC)の海洋進出の背景としての陸上(領土)の安定化など見落としてはいけない指摘も多い(戦狼外交に関する判断も同様)。コンパクトなので国際政治学/外交史/国際関係論などを学ぶ(学びたい)人は,ぜひ目を通してほしい。

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☆ serial number 207(2024:Oct-06) ☆ 同著の目的は佐藤が「はじめに」で記しているように「前の世代から継承したバトンを引き継」ぐことで,具体的には「政治、外交、経済、教育、家族、宗教、差別問題など」と広範に亘り,進め方は「対話篇」に基づいている。両者が対等な立場で夫々の考えを聴き,自らの見解を示す。読者はそれを読むことで自らも考えることになる。このやり方は非常に上手いと思う。一見すると単なる会話に思えるかもしれないが,その背景まで考えることで理解が深まるのである(②へ続く)。
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2024/10/08 12:11

②(承前)☆ どのパートもなかなか興味深いのだが,対話を通じて感じることは「多面的に見ること」の重要性だろうか。(今日に限らず何時でも)世界は「行き詰まって」いる。どうしてかと言えば「正解のない問題(事象・事件)」に満ち溢れているから。この「正解の無さへの恐れ」は本来的な(≒寿命の制約を受ける)人間の弱点なのだろう。安易な「正解?」を口にするTalking Heads(≒コメンテーター/YouTuber/その他)が持て囃されるのも,そのせいだろう(③へ続く)。

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2024/10/08 12:16

③(承前)☆ 同著は"謎のタイトル"を付けているが,このタイトルが言いたいことは「正解なき世界」の見方といってよいように感じられた。本の"帯"は昨今のそれにありがちな煽りっぽく見えるが,同著の本質に触れていると感じる。

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☆ serial number 206(2024:Oct-05) ☆ 中学の理科(以前は第1分野と言っていた)は時々理科室で実験することがあった。最も初歩的な化学実験のひとつが過酸化水素水に二酸化マンガンを加え酸素を発生させる(2H₂O₂ → 2H₂O + O₂)というものだった。このとき二酸化マンガン(MnO₂)は「ただそこにいる」だけで何の変化もしないが,酸素を発生させる「触媒」となる。横道世之介という主人公はこの「二酸化マンガン=触媒(catalyst)なのである(②へ続く)。
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2024/10/06 08:51

②(承前)☆ もちろん横道世之介は二酸化マンガン(無機触媒のひとつ)とは異なり,ニンゲンという名の有機物であるから二酸化マンガンのように「何の変化もない」ということはない(355頁)。前作同様1年という時間の中で,その周囲を含む「彼の世界」は大きく変わっていく。そしてこれも前作に引き続いてだが「その1年(1993年度)」と「(彼のいない)現在」とがときおり対比され,語り手である作者も物語の中に顔を出す。この「どうということのない世界」が魅力的なのだ。『フォレスト・ガンプ』(映画のほう)をチョッと思わせる。

よう
2024/10/07 07:08

おはようございます。二酸化マンガン=触媒=助け。二酸化マンガンが増えたところで、発生量は変わらない。ただ、多いほど早くなります。なにかその二酸化マンガンが誇らしげに見えてしまいました。

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本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
☆ serial number 205(2024:Oct-04) ☆ 宝石は興味のない人にとってはただの石である。著者は言う。宝石が「宝石」たる定義は①地球の尊いかけら ②潜在力のある原石を見つけ、人が美しさを引き出した存在 ③人から人へ受け継がれ、価値を持ち続けるもの(同著5頁)である。この中身が丁寧に記されているのであるが,専門教育機関に学び採掘から店頭までの全てのプロセスを経験した著者は斯界の第一人者としての誇りをもちつつ,ぼくのような素人に判り易くその中身を説明している(②へ続く)。
本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
2024/10/05 21:10

②(承前)☆ ジュエリーと一口にいうが,その実態は名前のとおりの宝石(宝物)といわゆる宝飾品に分かれるようだ。著者はハイジュエリーブランドの価値は宝石自身の価値だけでなくブランド自身の価値が含まれ「価格」と「価値]が分かれていると言う。さらにウォーレン・バフェットの発言「価格はあなたが払うものであり、価値はあなたが得るものである」を非常に効果的に引用する(117頁)。このようにジュエリーに対する幻想を払い蒙を啓く一冊だ。そして人工石に対する厳しい意見も非常に納得性が高い。とても良い勉強ができたと思う。

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本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
☆ serial number 204(2024:Oct-03) ☆ 同著は『世界はラテン語でできている』と同じタイプの「知っているようで知らない世界への案内本」だ。同著でも触れられている2024年1月2日に羽田空港で起きた航空機衝突事故は「航空管制」に対する関心を強く惹きつけることになったと思う。ぼくがいた街はその中心部上空が空路になっていて,見上げると空港に向かうジェット機の機体が良く見えた。空路についても機内誌の終わりの方に載っている地図を良く目にしたので,著者の説明のイメージもよく掴めた。
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☆ serial number 203(2024:Oct-02) ☆ 塞王の盾の舞台は大津城で,その城址は石碑を残すのみだが,その説明(Wikipedia「大津城/大津城の戦い」)を読めば物語の"スケール"が理解できるだろう。他の今村作品(歴史小説群)同様,骨格に史実があり,それらを組み合わせ想像力で隙間を埋める歴史小説の基本を守りつつ現代の読者が求める要素(対立→理解→協力/柔よく剛に優る)を取り入れクライマックスはガチンコ勝負で魅せる。そして一転した"終"で静か物語を締める構成は美事というしかない。
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2024/10/03 12:59

②(承前)☆ 先日ある読者さんと「話題作は古典たりうるか」ということで楽しい意見交換をした。話題作はその作品が登場した時代を反映する部分を持ち(たとえ"歴史"小説やライトノベルでも),多くの読者に受け入れられる(≒共感される)作品である。この「多くの読者を持つこと」は古典としての十分条件であるとぼくは思う(少数の専門的読者を持てばアカデミズムの対象となる)。一方で話題作の多くは(ポピュラーソング同様)「時の篩(ふるい)」にかけられる。そこで「読み継がれた」作品だけが古典としての必要条件を満たすのである。

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2024/10/03 12:59

【補遺】☆ Wikipediaによると大津城が廃城となった後,その石垣を用いて膳所成(廃城)が造られたという。ちなみに上巻で出てきた近江塩津にある同名駅はJR西日本湖西線に属し滋賀県内最北端のJR駅である。ここまで書けば別の作家の現代小説の名前が浮かび上がる読者さんもいるかもしれない

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☆ serial number 202(2024:Oct-01) ☆著者は『教養としての歴史小説』の中で流行小説家としての自身がどのような視点で小説を描いていくかを語っている。そうした作家としての「時代性」は"序"の1行目から明らかだと思う。この"激流"に読者を小説世界に叩きこむことで作者の目論見は成功しているのだ。今村翔吾は小説の「映像的な形」を意識する作家であり『じんかん』でもそうだった。この作家にとって最も重要な部分は「最初の1行」にある(以下"下巻"に続く)。それと巻末の"師弟対談"も面白かった。
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ユーザーデータ

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142お気に入られ10月の読書メーターまとめ

読書データ

プロフィール

登録日
2021/06/06(1265日経過)
記録初日
2021/06/07(1264日経過)
読んだ本
684冊(1日平均0.54冊)
読んだページ
205988ページ(1日平均162ページ)
感想・レビュー
663件(投稿率96.9%)
本棚
2棚
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