読書メーター KADOKAWA Group

2024年9月の読書メーターまとめ

本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
読んだ本
23
読んだページ
7652ページ
感想・レビュー
23
ナイス
2205ナイス

2024年9月に読んだ本
23

2024年9月のお気に入られ登録
8

  • ヨタロー
  • ぴちか
  • ヨシモト@更新の度にナイスつけるの止めてね
  • Andy
  • CPT
  • ST ONE
  • おしるこ
  • ちびbookworm

2024年9月にナイスが最も多かった感想・レビュー

本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
☆ serial number 183(2024:Sep-05) ☆ まず「本書の読み方」のあとに続く各章に任意の番号を付けた。①名のない毒液と花,②落ちない魔球と鳥,③笑わない少女の死,④飛べない雄蜂の嘘,⑤消えない硝子の星,⑥眠らない刑事と犬。⑥の冒頭(11頁)から数枚捲った16頁は①の最終頁だったので,指示に従い86頁に向かい,本をひっくり返して読み始めた。以下同様に②~⑥の順番で各章冒頭部分に戻った後指示に従って読み,最後は400頁の解説に進んで初回読了というルートを取ることにした(②へ続く)。
本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
2024/09/07 00:51

②(承前)☆ (解説まで)読み終わった後に「初出」を見ると,今回読んだ順番に発表されたようだった。小説誌の読者には各編が独立した小説として読まれたのであろうと思った(作家の熱心な読者はそう思わなかったかもしれない)。そういう意味では「実験的」なのだが(おそらく複数の読者さんから)各編のディテールの小さな齟齬(解説者とは別の視点からの)が示されるかもしれない。作家の構想は凄いしそれをほぼ成り立たせる力量は肯定できるが,同時に「力技に過ぎる」ようにも感じられた。

本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
2024/09/07 09:55

【補遺】☆ 津村記久子『水車小屋のネネ』に続いてヨウムが登場。人気あるな(駄文失礼)。

が「ナイス!」と言っています。

2024年9月にナイスが最も多かったつぶやき

本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)

【ヨルバエの疑問と雑感19】☆≪とある感想を読み抜いての音楽的返報≫。♪皆みんな いい奴ばかりだと お世辞を言うのも億劫になるのなら 近くのディスカウントショップで買ってきた そんなに値段の張らない ケンタッキーの地酒でも 飲んでいるのが マシとは言わないが よろしんじゃないでしょうかと。確かに中には居ますもんね イヤな奴。 長文駄文原宿方面併せて失礼。

本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
2024/09/06 20:38

☆ リリースから半世紀経ってるのに,まだとんがってるの?子供ねぇ... (ミニ草)

が「ナイス!」と言っています。

2024年9月の感想・レビュー一覧
23

本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
☆ serial number 201(2024:Sep-23) ☆ ワークブックなので使うことに意味がある。使ってみないと感想は書けない。以上の理由からこの本の感想はこの時点では書きません。駄文失礼。
が「ナイス!」と言っています。
本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
☆ serial number 200(2024:Sep-22) ☆ 同著の特長は「まえがき」に集約される。宗教を補助線として見ていくことで科学的社会主義(ソ連=東側)時代に「イデオロギー対立」として理解されていた事柄の本質のひとつ(別な本質として"覇権")が明らかにされる。さらに「地政学」を補助線として使っていることも効いている。地政学については近年再評価が進む一方でその背景にある宗教やイデオロギー的なものが軽視されるきらいがあるからだ。両者を統合する形での考察は興味深いものがある(②へ続く)。
本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
2024/09/30 11:00

②(承前)☆ かつてのソ連時代でも米国にとってその本質的部分はロシアであった。キリスト教の側面から両国及びその関係を読み解こういうアプローチは興味深いが,どうしても本邦を含む世界史(主に欧州史)の視点を意識してしまうから著者の目論見が完全にうまくいったとは思えない部分もあった(例えば90年代後半の通貨危機)。もうひとつ留意すべき点は「ユダヤ人」に関する佐藤の視点だ。ナチス・ドイツ,スターリン時代のソ連,イスラエルと中東問題。これらを有機的に統合し米ロ近現代史の中に位置付けている。この部分は特に重要。

が「ナイス!」と言っています。
本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
☆ serial number 199(2024:Sep-21) ☆ タイトルで損をする本。勿論「左傾化」が意味する「(権力としての)メディアの立ち位置を含む政治性」についての著者の主張は最後2編のコラム(同著は著者の経験及び考え方を書いたエッセイ風コラムというのがぼくの理解)の示すとおりだが,産経新聞というメディアに対する世の中の理解にもまた「ジョハリの窓」があり記者というインサイダーであった著者に見える光景は世間の「(同紙に対する)偏見の窓」とは異なる「窓」もあったということなのだろう(②へ続く)。
本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
2024/09/29 17:30

②(承前)☆ 報道媒体が「報道する物事」には,「事実」と「報道機関(記者または社)の意見」が混ざっている。いわゆる「ニュースキャスター」が「花形職業」になったのは,ニュース原稿を読み上げる「アナウンサー」が自分の意見を表明したことで本人もしくは祖の放送局の「立ち位置」を明確にしたところにある。SNSや動画配信サイトにおける「報道」の多くは「(まず)意見の表明(ありき)」であり,「"事実"」とは,その"意見の表明"のために必要な"こと(真偽不明)"なのである。そうしたことを踏まえつつ読むと非常に興味深い。

が「ナイス!」と言っています。
本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
☆ serial number 198(2024:Sep-20) ☆ 矢部宏治『知ってはいけない』(講談社現代新書)を読んだ人なら同著を読むことで白井聡が「永続敗戦論」で主張していることの傍証を得られるのではないかと思う。大日本帝国がそうであったように現代に至る日本国もまた20世紀(以来の)東アジアにおける「勢力配置図」の中で一プレイヤーとしての役割を担っているのである(好むと好まざるとに関らず)。同著の特長はこれまで類書の指摘に欠けていた「国連軍(との関係)」を描き出した点である(②へ続く)。
本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
2024/09/28 22:30

②(承前)☆ 60年代から「安保(体制)粉砕!」と叫んできた(かなりの方が泉下の人となっただろう)世代には知るどころか気付くきっかけすらなかったことが,巡り巡って半世紀のちの民主党政権を苦しめることになる(だからといって一国の首相に対して"クルクルパー"などと他国のマスゴミに言わせてはならないのである)が,この構造こそ根本的に再構築(粉砕は全く不可能でしょ)しないといけないということを同著は気付かせてくれる。特に終章で展開される議論は党派を問わずキッチリ頭に入れておくべきだろう。

が「ナイス!」と言っています。
本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
☆ serial number 197(2024:Sep-19) ☆ 非常に勉強になった一冊だった。
が「ナイス!」と言っています。
本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
☆ serial number 196(2024:Sep-18) ☆ 民間軍事サービス会社が「傭兵」とは全く異なるものであることを知ったのは同著でも深く触れているイラク戦争における「ブラックウォーター社」についての報道がきっかけだった。同著を読むことによってなんとなく目にしていた1970年代からのアフリカ諸国の諸情勢にこうした「会社」が深く係っていたこと(その影響が本邦も含む各国でタフガイストーリーとしてかなり出版されていること)などの理解を深めることとなった(②へ続く)。
本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
2024/09/28 18:39

②(承前)☆ 考えるまでもなく民間軍事会社とは戦争(の一部領域)をアウトソースするものである。傭兵との差は主体が国家(国王)にあるか否か。とはいえその起源は戦争における後方支援だったのであり,そのレベルではやや乱暴ながら行政サービスのアウトソーシングの極端な事例であろう。そしてこれは同時に冷戦構造の終結に伴う余剰人的軍事力の吸収先でもあった。そこまでは何となく新自由主義下における風景にも思えるのだが実際はそんな甘いものではなく,ワグネルを例に出すまでもなく暴力装置としての側面が少しずつ突出してくるのだ。

本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
2024/09/28 19:25

②(承前)☆ 民間軍事会社とは戦争(の一部領域)をアウトソースするものである。傭兵との差は主体が国家(国王)にあるか否か。とはいえその起源は戦争における後方支援だったのであり,そのレベルではやや乱暴ながら行政サービスのアウトソーシングの極端な事例であろう。そしてこれは同時に冷戦構造の終結に伴い余剰となった"人的"軍事力の吸収先でもあった。そこまでは何となく新自由主義下の風景とも思えるのだが実際はそんな甘いものではなく,ワグネルとプリゴジンの興隆と没落が示すように「暴力装置」としての側面が突出してくるのだ。

が「ナイス!」と言っています。
本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
☆ serial number 195(2024:Sep-17) ☆ 題名から感じるものと内容との間に「落差」があることに留意すべきだ。最初の2章は20世紀後半の歴史に沿った冷静な分析を重ね,相手の論理を読み解こうとしている。続く2章は現在の東アジア情勢の中で「"最悪情勢分析"を行えばこうなる」という読み解きであり決して"煽り"の類ではないことにも留意すべきだ(どうしても"方向性"が似てくるのは皮肉だが)。第4章の終わりに示された「思考実験」は不愉快な現実とどう向かい合うかという課題でもある(②へ続く)。
本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
2024/09/25 23:35

②(承前)☆ そして第5章があるのだが,この章でのアプローチにはやや楽観の度合が高いように思われる。ロシア=ウクライナ戦争以降の世界は著者の言う「西側諸国」とグローバルサウスと言い換えられそうな「その他の国々」との間にひび割れが生まれているからだ。東西冷戦体制は確かに「歴史の終わり」を迎えたのだが,それ以前の「帝国主義の残滓(佐藤優の言う"新帝国主義")」が昏い影を落としているからだ。著者が途中の章で言及した「東アジアのバランス・オブ・パワー」の考察は,それこそグローバルに敷衍して考えるべきなのだろう。

が「ナイス!」と言っています。
本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
☆ serial number 194(2024:Sep-16) ☆ 今年の春先から夏にかけて米大統領選各候補の趨勢に合わせるように「もしトラ」「ほぼトラ」という戯れ言葉が兜町界隈を中心に聞かれた。その時期に出た本を数冊まとめて読んだのだが,考えてみると興味深い。事実は民主党の候補者がバイデンからハリスにスイッチしたことで選挙戦の流れが変わりつつあるのだが,そのことは池上や他の著者の言う「米国の分断」を更に広げる傾向を示しているように感じられる(②へ続く)。
が「ナイス!」と言っています。
本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
☆ serial number 193(2024:Sep-15) ☆ 著者の立ち位置が良く分かる一冊ではある。選挙は蓋を開けて(閉じて)みなければ分からない。第2次トランプ政権が誕生するかどうか分からない以上,前の政権時にどういう考え方でどういうことが起こったかを思考の便(よすが)にするというのも分かる。そして著者の認識が2018~20年頃とあまり変わっていないことも分かる。そうした中で参考となるのは95~102頁に示された人々のリストであったり,第7,8章における認識などであろうか。
が「ナイス!」と言っています。
本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
☆ serial number 192(2024:Sep-14) ☆ 同著の根幹を成す各インタビューが行われたのはジョー・バイデンが大統領候補から降りる前だったという制約はあるが,ドナルド・トランプと彼の周囲で"MAGA"を叫ぶ(というか"すがりついている")人々についてのプロフィールを改めて理解することはできた。各インタビュイーの論点はこれまでも目にすることがあり新味はなかったが,問題の基礎的な整理にはなったと思う(敢えて言えば高畑昭男のネオコンについての説明は一部参考になったが,不十分な点も感じた)。
が「ナイス!」と言っています。
本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
☆ serial number 191(2024:Sep-13) ☆ 他ならぬ佐藤優が読み込む以上,視点は絞られる。著者が「はじめに」で示すようにこの「未完の巨編」を読み込むことで「ロシア(的なもの)」への洞察力を養う事は可能だとぼくも思う。ただしそのことは「○時間でわかる"カラマーゾフの兄弟」的な理解を許さない。俗に言うところの「魚屋に行くのではなく,釣り竿を渡す」。すなわち第2部第5篇と第6篇に集中することになる。これに不満がある人は亀山郁夫訳の5冊本(本編と読書ガイド)が必読となろう(補遺へ続く)。
本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
2024/09/17 21:12

【補遺】☆ ぼくは亀山訳『カラマーゾフの兄弟』の該当箇所を読んだ後で同著の佐藤の解釈を読み解いていった。これは正直言ってかなり体力を要した。同著では第7篇以降は重要点に触れるだけなので亀山訳の読書ガイドで不足を補う形になった(詳しいことはそちらの感想に書きたい)。最後に誤記を指摘したい。同著312頁のコーリャについての説明でイリューシャの行動が記載されている。改版時に修正を要す。

が「ナイス!」と言っています。
本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
☆ serial number 190(2024:Sep-12) ☆ エピローグは(結果的に幻となった)次作(第2の物語)へのブリッジの役目を果たしていると思う。しかしこの巻は何といっても訳者による作家及び本作品の理解と読み解きを味わうべきであろう。訳者が先達の仕事を参照し意識しながら「現代に通用する(言葉だけでなく"物語の視点"も意識した)」新訳を試みたことは,この作品の「古典としての価値」を高める共に,現在の作家達(の意識)にも繋がる「途」がそこにあることを示すものだと思う。読み通して本当に良かった。
が「ナイス!」と言っています。
本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
☆ serial number 189(2024:Sep-11) ☆ 川は通常は静かに流れているが,大雨をきっかけに濁流となり洪水を起こすことがある。『カラマーゾフの兄弟』にもこの序破急があり,第4巻はまさにその奔流に等しい展開となる。そこではさまざまな登場人物がむき出しになった自己をぶつけ合う。その一方で本筋から外れたような挿話がいきなり現れ,筋を追っていこうとする読者を惑わせる。これは作家がこの物語の第2部に繋がる「頭出し」を試みたから(これは読者ガイドや解題において訳者が指摘している(②へ続く)。
本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
2024/09/19 22:55

②(承前)☆ これについては訳者が指摘するように,物語の構成を交響曲的に創作したからではないかと思う。西洋音楽史的にはロマン派から国民楽派あたりの時代であるから,そうした芸術間の共鳴現象のようなものがあってもおかしくないと思う。同時に推理小説の歴史を見ても直接の関係は無いものの,同時代の文芸の傾向として何かしら響くものがあったのかもしれない。

が「ナイス!」と言っています。
本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
☆ serial number 188(2024:Sep-10) ☆ あるとき,ぼくの師匠筋の方がこのような意味のことを言った。「極右とは"昔が懐かしい人達"のことだ。」この言葉は結構長いこと頭に残っている。考えてみると第二次世界大戦終結後のこの国は同著冒頭の章で橘が鋭く指摘しているように「戦争責任を曖昧にして原爆被害をさり気なく強調する」スタンスを取っていた(少なくとも著者やぼくが中等教育を受ける頃まで)。この曖昧さが周辺国からの歴史修正主義批判などに繋がっている(これについては書かない)(②へ続く)。
本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
2024/09/15 15:40

③(承前)☆ 同著を読んでいて興味深かったのは橘の「戸籍」に対する関心と理解だ。気になったのでWikipediaを見たが,確かに「かつては東アジアの広い地域で普及していたが、21世紀の現在では日本と中華人民共和国と中華民国(台湾)のみに現存する制度である」と書いてある。後は著者のスタンスは従来から変わらないので,なるほどという話が多かった。若干「(この国の世間の)空気に対する抵抗」を感じるコラムや主張があり,そこは興味深かった。それにしても集英社は他社なら新書で済ますものを単行本で出して...(以下略)。

本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
2024/09/15 15:41

【メモ】☆ (同著5頁)>「DD」はアイドルオタクのあいだで使われるネットスラングで、複数の「推し」がいる「だれでも大好き」をいい、特定のアイドルを推すことと比較されます。「誰推し?」と訊かれて「わたしはDD」と答えるのでしょう。      >ところがその後、「DD」はネット上の議論に転用されます。こちらは「どっちもどっち」の略で、双方に言い分があるという立場です。それに対して、「わたしは正義」だと主張し、悪を“糾弾”する立場を「善悪二元論」と呼びましょう。

が「ナイス!」と言っています。
本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
☆ serial number 187(2024:Sep-09) ☆ 読み終わった時点でメモ的に書いたのは"この巻の内容は非常に近・現代的な人格の現れ方を描いている"ということだった。人間の本質的な部分は大きくは変わらない(≒脳が進化しない)ので,その「行動」に「弾みをつける要素」の違いが書く時代における小説作品の特色になるのだと思う。それはこの作品で語られるものが聖俗それぞれを象徴するもの(神と"おかね及び愛情")であることからも分かる(②へ続く)。
本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
2024/09/19 22:42

②(承前)☆ そういう視点から見ればミーチャ(ドミトリー)は実に近代的(というよりもほとんど現代的)なキャラクターではないか。ぼくは同巻の展開から思わず凪良ゆう『汝、星のごとく』にあった「愛と祈りと呪いは似ている」を強く思い起こさせられた。人間には"愚行権"があり,アリョーシャですらゾシマ長老の(なぜかあまりにも早過ぎる)腐臭から一旦は愚行に及ぼうとするのである。この巻で言えば第2部の後段のミーチャを引用すれば十分だろう。こうした近代性(≒現代性)はこの作品の「古典としての力≒普遍性」を示していると思う。

が「ナイス!」と言っています。
本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
☆ serial number 186(2024:Sep-08) ☆ 膨大な物語を「その筋を追って読む」ことは時として読者をとんでもない苦行に追い込むことになる。「あらずじ」の知識を持ったままこの巻に入ってしまうと第5編で挫折しかねない。ぼくはたまたま佐藤優の著書を山ほど読んでいたので(今回も併読していた),第5編・第6編の持つ「意味」について簡単な予習ができていたのは幸いだった。ここでは単純に「キリスト教」として理解されているものが,本質的に大きく異なるものであることを理解すべきだろう(②へ続く)。
本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
2024/09/19 22:28

②(承前)☆ それにしても各登場人物の「語り」の長さは一種「演劇的」であり,その「ことばの力」に圧倒されるのは確かなことである。大審問官と「彼」との物語詩は宗教的背景が無いと理解することは難しいと感じるし,ぼくの場合は佐藤優に補助線を引いてもらっている関係上,「彼の視点」からの理解という複合的な前提を持つことになる(更に訳者の「読書ガイド」と「解題」で更なる視点を学ぶことになる。こうした読み解きは物語を一度読んでから再度読むまでの間に「読者としての意識」を高め,より先鋭なものにするように感じる。

が「ナイス!」と言っています。
本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
☆ serial number 185(2024:Sep-07) ☆ この亀山訳では各巻の末尾に訳者による「読書ガイド」が記されている。1~4のそれぞれの巻を一度読了後にこのガイドに眼を通すと理解が深まる(訳者の立場を通じての視座の獲得)。ただし最終巻は短いエピローグと資料としての作家の生涯を巡る概説及び年譜の後に訳者による膨大な「解題」が示される。これはこれで相当魅力的ではあるが,読者に対して訳者が訳者自身の生涯を賭けて作家とその作品と対決していることに留意が必要だと思う(②へ続く)
本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
2024/09/19 22:04

②(承前)☆ 本作品が書かれた19世紀後半は「(資本主義と国民国家を確立させた)西欧の帝国主義」が欧州を超え世界中に影響を及ぼしていった時代だ。その西欧の「周縁部」で旧い制度を維持したまま(資本蓄積に至らぬ"農奴解放"や"新思想"への弾圧など)帝政を維持強化しようとするロシアという国家の"歪み"が極めて矮小化された形でカラマーゾフ一家の形をとるのである。【補遺】同著46頁の記述よりアリョーシャは作者がこの物語を綴っている時点で故人となっていることが推察される。

が「ナイス!」と言っています。
本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
☆ serial number 184(2024:Sep-06) ☆ 著者は人間関係の実践的専門家である。会社などの組織は任意の構成員によって成り立っているがそれがひとつの社会をなしている以上,成員に帰属を求める。そこでものをいうのがコミュニケーション・スキルだ。比較的同質性の高い社会においてこのスキルの欠如は組織にひびを入らせる原因となり得る。「言葉の言い換え」はいわばコミュニケーションを円滑に進ませるための小さな工夫であり,そのスキルを語るからこそ,ここまでのベストセラーになったのだろう(②へ続く)。
本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
2024/09/07 23:14

②(承前)☆ 言葉やコミュニケーションについてのスキルは文字にすると分かりやすい。つまり言語をいったん視覚に置き換えること(本を読む行為)で,読者に客観性のクッションを与えているのだ。ここまでが同著の一般的な評価である。ぼくは人が悪いので逆に捉えてみる。「言い換える前の表現」を意識的に使う場面がある(ハラスメント系は除く)。相手のその言葉の「真意」を考えさせるためだ。気付いた人もいるかもしれないが,これを「恫喝の手段」という。もう一点。言い換えが手段ではなく目的になる場合(これは九段理江氏に尋ねたいな)。

が「ナイス!」と言っています。
本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
☆ serial number 183(2024:Sep-05) ☆ まず「本書の読み方」のあとに続く各章に任意の番号を付けた。①名のない毒液と花,②落ちない魔球と鳥,③笑わない少女の死,④飛べない雄蜂の嘘,⑤消えない硝子の星,⑥眠らない刑事と犬。⑥の冒頭(11頁)から数枚捲った16頁は①の最終頁だったので,指示に従い86頁に向かい,本をひっくり返して読み始めた。以下同様に②~⑥の順番で各章冒頭部分に戻った後指示に従って読み,最後は400頁の解説に進んで初回読了というルートを取ることにした(②へ続く)。
本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
2024/09/07 00:51

②(承前)☆ (解説まで)読み終わった後に「初出」を見ると,今回読んだ順番に発表されたようだった。小説誌の読者には各編が独立した小説として読まれたのであろうと思った(作家の熱心な読者はそう思わなかったかもしれない)。そういう意味では「実験的」なのだが(おそらく複数の読者さんから)各編のディテールの小さな齟齬(解説者とは別の視点からの)が示されるかもしれない。作家の構想は凄いしそれをほぼ成り立たせる力量は肯定できるが,同時に「力技に過ぎる」ようにも感じられた。

本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
2024/09/07 09:55

【補遺】☆ 津村記久子『水車小屋のネネ』に続いてヨウムが登場。人気あるな(駄文失礼)。

が「ナイス!」と言っています。
本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
☆ serial number 182(2024:Sep-04) ☆ 信用(credit)とはこの場合「貸したお金が相手からきちんと返ってくること」を信じ(てお金を貸す)ことである。ひと頃中国(PRC)で胡麻信用などのスコアリングに関する話が盛んに言われていたが,本質的には江戸時代の大坂のお店でやっていたことと等しい。こうした信用秩序を作り出すための店内体制づくりや"息抜き”の話,身の立て方などに続いて『日本永代蔵』もかくやと言わんばかりの事例紹介など興味津々の一冊だった。
が「ナイス!」と言っています。
本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
☆ serial number 181(2024:Sep-03) ☆ 刑事裁判で裁かれるのは被告人だが,真に裁かれるのは検察側の論理である。同著の解説で永江朗が引用する(338頁)江崎検事の発言にその理由がある。 > この事件はこの国の法のもとで公正に裁かれるんだ。その結果がどうであろうと、我々検察がその責めを負う謂れなどあるはずがないじゃないか。(中略)もし万が一、冤罪が生まれるとするなら、それはほかでもない、君ら弁護人に百パーセントその責がある。君ら弁護人だけが被告人を守る役目を任されているからだ。
本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
2024/09/03 21:55

【補遺①】☆ 著者の前作『クロコダイル・ティアーズ』もそうだったが,この作家は「曖昧な人物」を描くのが非常に上手い。読者はその曖昧さに巻き込まれてミスリードされていくのだが,本作での「曖昧さ」は「(そのことが)描かれている部分」と「(下巻の最後になるまで)そうでない部分」とがあり,冤罪に向けて動いていく主人公の弁護士と初めは不信に塗れていた被告人の長女とのすれ違いがやがてひとつに重なる流れに,更に曖昧な人物や読者のミスリードを誘う別のエピソード(複数)が織り込まれて作品の流れを作っている(②へ続く)。

本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
2024/09/03 22:01

【補遺②】☆ 上巻を読んでいて感じていたのはフランシス・ベーコンの「イドラ論(4つのイドラ)」で,作品をよくよく最後まで読んでみると全てのイドラが登場していたと感じた(勿論最後の最後に「劇場のイドラ」が姿を現す)。ここも面白かったが,解説で永江朗が触れているように「弁護士」という存在の様々な側面も主人公夫妻の対比(企業弁護士=商事法務系と刑事弁護士=(不適切な引用だが)"無罪請負人")をはじめ,物語に溢れる様々な伏線とミスリードがこの小説の複合的・重層的面白さを深めているように感じた。作者充実の快作だ。

が「ナイス!」と言っています。
本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
☆ serial number 180(2024:Sep-02) ☆ 感想は下巻に書きますが,単行本出版時点でここで分冊しようと考えていたのかというくらい見事な「切り口」でした(以下【メモ】に続く)。
本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
2024/09/02 22:30

【メモ】☆ (同著156頁) > 「刑事裁判ってのは、国という大きな存在が個人を裁くんだ。それだけなら一方的な戦いだよ。裁判員や裁判官にしても、その人のことを知らないわけだから、どうしても疑心暗鬼になる。霧の中で不気味なシルエットを見るようなものだ。人を襲う獣なのかもしれないという目で見てる。だから、まとわりついている霧を払って、その人を一人の人間として見てもらうようにする必要がある。弁護士がそれをやる。霧を払った結果、その人が無実の人間であるなら、もちろん言うことはない」

が「ナイス!」と言っています。
本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
☆ serial number 179(2024:Sep-01) ☆ ざっくり40年前の作品である。作者も若いが物語の最後の舞台となったフェスティバル参加メンバーもまだ若かった(トップのWeather Reportなんぞ『8:30』のセットでもおかしくない。近年この当時の各地のライブが...以下略)。で,若書きなのでこれが実に「ラフでタフ(笑)」。その辺の書きっぷりについては関口苑生の二度にわたる(爆)解説に詳しい。浅田次郎の『きんぴか』三部作を読んだ時も思ったが,同著にも当時のこの国の勢いが溢れていた。
が「ナイス!」と言っています。

ユーザーデータ

本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
本読むおっさん(Lester_the_Nightfly)
142お気に入られ10月の読書メーターまとめ

読書データ

プロフィール

登録日
2021/06/06(1266日経過)
記録初日
2021/06/07(1265日経過)
読んだ本
684冊(1日平均0.54冊)
読んだページ
205988ページ(1日平均162ページ)
感想・レビュー
663件(投稿率96.9%)
本棚
2棚
読書メーターの
読書管理アプリ
日々の読書量を簡単に記録・管理できるアプリ版読書メーターです。
新たな本との出会いや読書仲間とのつながりが、読書をもっと楽しくします。
App StoreからダウンロードGogle Playで手に入れよう