初めから先生の死は既定事項なので、終盤は彼に自決させるための動機を複合的に束ねて畳み掛けてくるが、漱石は恋を描くときですらロジックに縛られる人間なので、どこか理屈っぽさを逃れられないのが妙に不器用だ。理由を付けずにはいられないということ、そこはある意味、下手かもしれない。
「セックス・ワーカーというのは、例外なく愛情乞食ですから」なんて文句も出てくる。後書きで提唱される「ゴレンジャー・ガール」という類型が興味深い。曰く、幼少期に男友達のごっこ遊びに混じって、戦隊物の紅一点を演じ、男の子たちに気にいられていたものの、思春期になって彼らが色ボケしてコケティッシュな女に走りはじめると、途端に取り残されてしまう女の子のことらしい。
50頁と80頁の展開が熱い。この人の思想の核心にはたぶんDIY至上主義があって、どんな人間でもプログラミング技術があればなんでも自力でやれる、と信じているところがある。アラン・ケイが良いことを言っていた。「多くの製品が、人をダメにしている。助けるというよりも堕落させているのだ。そしてそういう製品は、たいていよかれと思って売られている」。至言だと思う。いま製作側の人間で誤魔化さずにこれを言えるひとがどれだけいるだろうか。
ヒガシローランドゴリラの末裔として国立遺伝学研究所から血統を保証されています。
※本研究は基盤研究Bです
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