手記の場面では常に一人称の視点から「ただ、一さいは過ぎて行く」ので、そうなるのが必然であったかのように、周りのどんな手助けもむなしく頽廃していく主人公の心の裡が見て取れたが、特に哀れに思うことはなかった。自分でも気づかぬうちに人間失格の烙印を押されることは葉蔵でなくとも起こりうるのだと思うと、恐怖すら覚える。

手記の場面では常に一人称の視点から「ただ、一さいは過ぎて行く」ので、そうなるのが必然であったかのように、周りのどんな手助けもむなしく頽廃していく主人公の心の裡が見て取れたが、特に哀れに思うことはなかった。自分でも気づかぬうちに人間失格の烙印を押されることは葉蔵でなくとも起こりうるのだと思うと、恐怖すら覚える。

私たちは人間だから、偶然状況が整えばだれでも悪意にのまれた行動をしてしまうこともある。ただ、人はそんなに悪いところばかりあるわけじゃない、ということを教えてくれた気がする。