実在する日本音楽著作権協会と音楽教室との裁判が現に最高裁で係争中に出版された本なので、設定が妙にリアルだが、それはあくまで背景。子供のころのトラウマを抱えながら上司の指示に逆らえず、身分を偽って音楽教室でチェロを習う、内向的な性格の主人公の描写が続く前半はやや重い。それだけに後半で会社に”謀反”を働き、それを責める上司に見事な啖呵を切った時には思わず拍手。教室で知り合った心優しい友人たちに支えられ自らの力で人生の新しい扉を開いた主人公に心からのエールを。頭の中でバッハの無伴奏チェロ組曲がずっと鳴ってます。

小澤さんのあまりにも有名な自伝的エッセイ。訃報のショックから彼の本が読みたい衝動に駆られて購入。内容の半分以上は、異国の地から家族にあてた手紙で、家族思いの優しい気持ちが文面に溢れ、こちらも幸せになる。決して裕福ではない中でも子供を音楽の世界に導いたご両親に敬服する。彼の指揮にじかに接する機会はなかったが、魔法のように紡ぎ出される音楽のすばらしさは画面の向こうからでも十分伝わってくる。その土壌を育んだ半生がよくわかる良本。偉大な音楽家は天に召されても残した音楽の中で生き続ける。ご冥福をお祈りします。

実在する日本音楽著作権協会と音楽教室との裁判が現に最高裁で係争中に出版された本なので、設定が妙にリアルだが、それはあくまで背景。子供のころのトラウマを抱えながら上司の指示に逆らえず、身分を偽って音楽教室でチェロを習う、内向的な性格の主人公の描写が続く前半はやや重い。それだけに後半で会社に”謀反”を働き、それを責める上司に見事な啖呵を切った時には思わず拍手。教室で知り合った心優しい友人たちに支えられ自らの力で人生の新しい扉を開いた主人公に心からのエールを。頭の中でバッハの無伴奏チェロ組曲がずっと鳴ってます。

普段は浅草界隈で飴細工の露店を営む堤平九郎。裏の顔は、訳あって姿を晦ませたい依頼人が銭さえ払えばそれこそ神隠しにあったように忽然と消してくれる、人呼んで「くらまし屋」。平九郎行きつけの居酒屋「波積屋」で働く七瀬、常連客の赤也との見事な連係プレーと、もはや人間業ではない平九郎の剣さばきに溜飲が下がる。凄烈な殺戮シーンの後の人情味あふれる大団円も今村節のお約束。昭和の少年時代にヒーロー物を見た後の高揚感と爽快感を思い出すような物語。続編を読まずにはいられない。

東海道を舞台にしたデスゲームはいよいよ佳境に突入。明治維新の動乱期に活躍した有名人が次々に登場。そして蠱毒の首魁が明らかに。時の権力の中枢にいるまさかの人。その人物を信頼していたあの維新の立役者にも命の危機が迫る。息もつかせぬジェットコースタームービーを見ているような、まさに「大型娯楽時代劇」とも言える物語の完結編はいかに。第三巻、早く出してください今村さん！