面白くない。それは、この本が、ではない。面白くない、時代も、個人の営みも、何もかも。生きるということは、暗く、惨めで、つまらないという、橋本さんの全身の叫びが、文章の端々から感じられる。 そして、確かに私が生きて感じてきた世界というのも、こういう場所なのだった。そう、私は、ここから始めるしかないのだ。 面白くなく、くだらないと分かり切っていたうえで、なおも生きていく必要がある。これから選択することの全てに、倦怠や、暗さがついてまわるとしても。 橋本さんと対峙するとき、私はいつも相当な体力を消費する。

自発的に書き始め、次に先人の模倣をし、最後に模倣意識がなくなり、不格好ではあるが、ここには自分の表現しか入っていない、と確信できるところまで行く、それしか道はないのではないか、という話。自惚れや勘違いも含め、まさにこれは私が辿った道ではないだろうか、と思えた。 吉本さんが晩年になってもまだ何とか詩に食らいついてやろうと意思しているのは意外だった。

自己否定にとことん付き合う過程で、自己否定が実は自分の声ではないことに気がついていく。また、ただ自分をやみくもに否定したい訳ではなく、そこに葛藤を生み出したいという欲望があることにも気がつく。なぜそんなことをする必要があるのか。それはさびしいからなのだ。 著者の活動を読了後も追っていると、躁や鬱様の波はありながら、それが自己否定という形ではもはや現れなくなっているのを見ることができる。 一見理由も、必然性もなく思える行為の裏側には、全力のSOSがあり、自力で、人の力を借りて、掘っていかなければならない。

面白くない。それは、この本が、ではない。面白くない、時代も、個人の営みも、何もかも。生きるということは、暗く、惨めで、つまらないという、橋本さんの全身の叫びが、文章の端々から感じられる。 そして、確かに私が生きて感じてきた世界というのも、こういう場所なのだった。そう、私は、ここから始めるしかないのだ。 面白くなく、くだらないと分かり切っていたうえで、なおも生きていく必要がある。これから選択することの全てに、倦怠や、暗さがついてまわるとしても。 橋本さんと対峙するとき、私はいつも相当な体力を消費する。

読んでいて、全く何も分からなかった。全く何も分からないのに、スラスラ読めて、気がついたら最後の要約にまで辿り着いていた、という、不思議な読書体験だった。なかに書かれてあることが、ああそうかとなるまでにはいろいろとまた別の勉強が必要になるという感じがする。しかしスラスラ読めたのは何故だろう・・・。

この本は『言語にとって美とはなにか』を今後読み解いていくうえで必読の書になるのではないかと感じた。著者の宇田さんの気合も感じられる。あとがきで紹介されていた高橋順一さんの本も早速注文した。難所と名指されている「表現転移論」と「構成論」だが、「構成論」については、詩と物語の関係性、柳田・折口系統の説の限界など、部分的に分かる箇所もあるという感じ。「表現転移論」については、今のところ、解説を読んだうえでも、手も足も出ないという感じ。文学体や話体で文章を読み解くくだりは今のところ全く分からない。勉強を続ける。

依頼人がゴルゴに対して裏切りを行い、結果その裏切りの報いを依頼人が必ず受けることとなる、ゴルゴの黄金パターンではあるが、その黄金パターンこそが一番面白い。特にこの巻では「帝王の罠」。ゴルゴの様々な工夫が見られるし、手強い相手に珍しく焦っている様子もある。