ストーリーはおもしろくてどんどん読めた。ただ、障害や特性への理解や困っている人への救済などが学校の教科書のように模範的に描かれていて現実味がない。卒業文集で同級生のような人になりたいと書く子どもがいるだろうか。自分の恋人に大けがをさせた人を高校の同級生で寄り添えていたら救えたのにと思うだろうか。

映画も見たし再読でもあるが、かなり前に読んだので細かいところは忘れていてまた楽しめた。結末がわかっていても楽しめる名作だ。でも、携帯電話が出始めたり、求人雑誌を買ったりする描写に時代を感じた。 人間って弱くて、うっかりすると落とし穴にはまり込んでしまう。特にお金の魔力に人は人生を狂わされてしまうんだなあ。 つい先日も女子行員が貸金庫から十数億円盗んだという報道があった。現実にあるんだなあ。

家族がテーマの短編集。何も問題のない家族などないだろうが、その中でもがいたり苦悩したりする姿が描かれていて、最後は穏やかで暖かい終着点を迎える。涙もろいのでいちいち泣けてしまった。特にホタルの熱、おかあちゃんの口紅、イブのクレヨンはポロポロ泣けた。

経営が傾いている巨大企業と銀行、そして警察。それぞれの登場人物と内部事情。銀行用語に慣れなくて初めは難しく感じたけれど読むうちに慣れて楽しめた。後半の展開が早くて驚きの連続、そして犯人が、ええっそこに？！たっぷり楽しませてもらいました。

人との出会いや別れの中で、その人の人生を考え、そして自分の生き方を考える。そんなことができた短編集だ。いろいろなことを乗り越えてきたおばあさんたちの物語がほとんどで、どのおばあさんも優しくて賢くてたくましい。なかなか断捨離できない私は、先を生くひとを読んでいてドキドキした。「自分なりに頑張ったんだからいいじゃない」って良い言葉だなあ。

この作家の作品を久しぶりに読んだが、やはりおもしろい。出世欲に支配されている行員たち。業績を上げるために必死で、そのために道を踏み外してしまう者、それに巻き込まれた者の悲劇。あとが気になって途中でやめられなくなるほど次々と驚きが出てくる。うまいなあ。そしてこれで終わりかと思いきや、もしかしてそうではない？もっと巧妙なトリックがあるのかも知れないことを匂わせる。本当にうまい！

短編集なのに印象に残る作品が多かった。魔王の帰還でスッキリと楽しませてくれた後、ピクニックでゾゾッとさせてくれる。愛を適量では重いテーマを重くなりすぎずに読ませてくれる。適量を見誤ることなんて、一生懸命生きてる人なら誰でもやってしまうだろう。自分もそうだ。娘の苦しみを受け止め損ねても、15年後に少し救いがあって良かった。

家庭環境が真逆の２人が小学2年生の時に出会ってお互いに強烈な印象を残して離れてしまう。その後また出会う2人の人生がその時その時で傷つきや苦しさを持っている。どんな環境下で育っても、子どもはそれに抗えなくて順応するしかない。特に柚珠の息苦しさが読んでいてつらく感じられた。ラストもある意味爽やかで希望が持てて好きな終わり方。私的にはツミデミックよりこちらの方に直木賞を差し上げたい。

ストーリーはおもしろくてどんどん読めた。ただ、障害や特性への理解や困っている人への救済などが学校の教科書のように模範的に描かれていて現実味がない。卒業文集で同級生のような人になりたいと書く子どもがいるだろうか。自分の恋人に大けがをさせた人を高校の同級生で寄り添えていたら救えたのにと思うだろうか。