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2024年10月の読書メーターまとめ

迦陵頻之急
読んだ本
8
読んだページ
2484ページ
感想・レビュー
8
ナイス
20ナイス

2024年10月に読んだ本
8

2024年10月にナイスが最も多かった感想・レビュー

迦陵頻之急
「吾妻鏡」には曲筆や潤色、資料の都合のよい取捨選択などなど、色々と問題はあるが、一応、公式の史書と認識はしていた。しかし本書では、最早それは事実の記録というよりも、一定のストーリー構想に基づく「物語」として読解されるべきものとして扱われる。本書の著者は歴史家ではなく、国語の先生として「吾妻鏡」を研究する立場から、史書としての真偽は疑わしくとも、物語としての文学性から「吾妻鏡」という書物を評価する。従って、存命者への忖度から単調な記事に陥った後半部は、自由に構想を働かせた前半部ほど評価はしない。
が「ナイス!」と言っています。

2024年10月の感想・レビュー一覧
8

迦陵頻之急
社会の断面を鋭く切り取りつつ、物語としての面白さを堪能させる。そうか、バルザックはスタンダールのような心理主義でも、フローベールのような写実主義でもなく、ロマン主義時代の作家であったのだな。「グラン・ブルテーシュ」などは完全にスリラー展開、とはいえポーのようなおどろおどろしい描写は無く、語り手(あの、例のビアンション医師)の語り口もいたって冷静。また、すいすいと無造作に語られた冒険譚あり、慎ましやかな(ただし不倫の)恋愛譚あり、難しい顔をせずに読める説話集の趣あり。
が「ナイス!」と言っています。
迦陵頻之急
長年入手困難だった「死亡した宇宙飛行士」所収の短編を、短編全集の形で入手してはや七年。読み切るのが惜しく、ちびちびと拾い読みの末、今回ようやく通読。シュールリアリスム絵画のようなリゾート地を舞台に、男女の愛憎劇に深層心理を反映するようなSFガジェットが絡む「ヴァーミリオン・サンズ」あり、先鋭的表現に向かったコンデンスト・ノベルあり、フレドリック・ブラウンか小松左京が一般商業誌に書いていそうな、いかにもな風刺短編あり。さらにシェイクスピア「テンペスト」へのオマージュが顕わな中編「最終都市」まで存分に堪能。
迦陵頻之急
パリ風俗絵巻二編。ツバメ相手に財産を費やす伯爵夫人、息子のため財産を守ろうとする伯爵、手形を買い取って利ザヤを稼ぐ高利貸しの三者が絡む「ゴプセック」。伯爵夫妻が繰り広げる悲喜劇の上に、高利貸しゴプセックの強烈なキャラクターが屹立する。「毬打つ猫の店」現実的な商人一家の娘と、天才若手画家との恋がもたらす運命。「ブッデンブローク家」のトーマスとゲルダの逆パターン。今時のギャルとオタク少年との恋物語風の、甘い恋愛劇に終わるはずもなく、恋の後に待つ価値観、人生観、生活観の埋め難い食い違いとその冷酷な結末を描く。
迦陵頻之急
初ウエルベック。「バーナード嬢」曰く「帯で思いっきりネタバレ」だが、そもそも本書を手に取る人の大半は「あの展開」目当てに読んでるのだろう。前半、現代アーティストが成功を収めるまでが淡々と描かれ、正直、衝撃的展開への期待無しでは読み続けられたかどうか。その衝撃的展開も、実際のところ唐突に発生してあっさりと片付けられ、主人公を巡るストーリーにおいて単なる一挿話に過ぎない扱い。先鋭的で尖った作風を期待したら思いの外に普通だった。とは言え、読み終えてみれば淡々としたある種諦念の漂う語り口自体、一つの計略なのかも。
が「ナイス!」と言っています。
迦陵頻之急
「吾妻鏡」には曲筆や潤色、資料の都合のよい取捨選択などなど、色々と問題はあるが、一応、公式の史書と認識はしていた。しかし本書では、最早それは事実の記録というよりも、一定のストーリー構想に基づく「物語」として読解されるべきものとして扱われる。本書の著者は歴史家ではなく、国語の先生として「吾妻鏡」を研究する立場から、史書としての真偽は疑わしくとも、物語としての文学性から「吾妻鏡」という書物を評価する。従って、存命者への忖度から単調な記事に陥った後半部は、自由に構想を働かせた前半部ほど評価はしない。
が「ナイス!」と言っています。
迦陵頻之急
何はともあれ、故・工藤幸雄氏の訳業(多数の脚注を含め)がつつがなく刊行に至って慶賀の至り。作中の、ディエゴ・エルバスの膨大な著述が烏有に帰してしまうエピソードを地で行くような事態にならなくて何よりだった。岩波文庫版との、構成面でのバージョン違いも大きく印象を変えるには至らず。それにしてもブスケロス、道化役からウザキャラになり、ガチの憎まれ役に進化を遂げる雄姿は、後年のディケンズの登場人物たちの先駆けのよう。
迦陵頻之急
NHK‐BSのバイロイト録画を視聴しつつ再読。聴きなれた作品といえども、全編にわたって同じ注意力を持続するのは一苦労なので、流し見を避けるために勘所を押さえてくれる本書は大変有益。単なる対訳本ではなくテキストと楽曲の分析の詳細さでまことに得難い一冊。
が「ナイス!」と言っています。
迦陵頻之急
シュルレアリストの著者による、女装の少年ローマ皇帝の、詩的、哲学的伝記。もとより歴史研究的立場による人物伝ではない。ローマ君主制やその宗教風土にスキャンダラスな存在感を示した事で、主人公をアナーキストと規定する本書。今日的見解では女装者の戴冠をもってジェンダーフリーの立場から評価するが、飽くまで醜聞として観る本作はそうした見地とは無縁。シリアの公女達、親子姉妹四人による息子の皇帝擁立と権力の掌握は、まるで藤原氏の摂関政治だが、母親である女性達自身が前面に立って策動しているのが凄く、夫達の存在感の薄いこと。
が「ナイス!」と言っています。

ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2023/01/17(681日経過)
記録初日
2023/01/17(681日経過)
読んだ本
218冊(1日平均0.32冊)
読んだページ
75834ページ(1日平均111ページ)
感想・レビュー
159件(投稿率72.9%)
本棚
0棚
性別
血液型
B型
現住所
兵庫県
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