膨大に整列し、収められた本棚の一棚、一区切りを眺めながら、こう考えた。
新刊で平積みされた本は何時の間にやら古参の棚へ消えた。在りし日に読んだ本は記憶した題名が微妙に違うらしい。「今度、本腰を入れて読むぞ」の決心は晩御飯の味と共に彼方へ旅立つ。
とかく、私の記憶は宛てにはならない。
内容と表紙についてなら熟知しているのに、題名と作者が不詳の幻の一冊が日々、書庫の「迷子匣」を埋めていく。
どうやって覚え留めようとしても綴じた糸の端から、敗れた表紙から、外れ落ちた帯から、言葉がこぼれ、迷って記憶の謎のうろ闇になる。
ならばそれを少しでも明るき所へ置きなん、とて、この機能に足を踏み入れた。
まだ、右と左がよく分からぬが、ゆるゆる、迷子が謎にならないやう、ここへ連れてきて上げる事としよう。
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