記憶が外部化され分離可能となったことで生起する「私とは何か？」「生死とは何か？」という問いが、小林泰三に特徴的な黒い笑いと律儀な論理的思考を混じえて面白おかしく描かれており、滑らかに興味深く読み進められたSFミステリと題された割にミステリ要素は薄かったが、SF連作短編集として良作。第一部で人類の困難を乗り越える底力を称揚したかと思えば、続く第二部で変わり果てた社会でも変わらぬ人間の悪性を執拗に描き出すのが如何にも作者らしくて面白い。

記憶が外部化され分離可能となったことで生起する「私とは何か？」「生死とは何か？」という問いが、小林泰三に特徴的な黒い笑いと律儀な論理的思考を混じえて面白おかしく描かれており、滑らかに興味深く読み進められたSFミステリと題された割にミステリ要素は薄かったが、SF連作短編集として良作。第一部で人類の困難を乗り越える底力を称揚したかと思えば、続く第二部で変わり果てた社会でも変わらぬ人間の悪性を執拗に描き出すのが如何にも作者らしくて面白い。