恐怖について、多方向から考察しているような短篇集だった。過去・現在・未来それぞれへの恐怖。それは時に、過去の記憶からくる妄想であったり、生理的反応であったりするのだと思う。 読み終えてから、私にとって真実怖いのは何だろうと考えた。おそらく、終わりのないもの。いわゆる永遠と呼ばれるもの。それは死よりも恐怖だ。

恐怖について、多方向から考察しているような短篇集だった。過去・現在・未来それぞれへの恐怖。それは時に、過去の記憶からくる妄想であったり、生理的反応であったりするのだと思う。 読み終えてから、私にとって真実怖いのは何だろうと考えた。おそらく、終わりのないもの。いわゆる永遠と呼ばれるもの。それは死よりも恐怖だ。

ジャンルとしてはホラーになるのかもしれないが、どこかノスタルジックで切ない。こちら側とあちら側の世界にはっきりとした境はなく、その狭間に迷い込んでしまう人も時々いるのかもしれない。そんな現実とも夢ともつかないような美しい情景描写によって、恐怖を哀愁に変えてしまう小池マジック。ついつい癖になって、怖いのに読んでしまう。

小池さんの筆致は、以前からなぜか私によく馴染んで読みやすい。砂時計の砂のようにするすると落ちて入ってくる。それは、小池さんが本書の巻末で記されていたように、敢えて「そっけないような文章」を貫いているからなのかもしれない。 ひとつだけ惜しむらくは、なぜ今の季節にこの本を手に取ってしまったかということ。夏にしておけばよかった･･･。