9年前の中学時代以来の再読。記憶にあったのは、精神障害者が一時的に天才になり元に戻るという人間の無常を描いた泣ける話であることと、性的なシーンがあることだった。だけど今読むと、深層心理学にかなり造詣が深いことがわかる。母や妹やアリスとの関係は根本的に解決しなかったけれど、昔全て一塊だった人間（生命）が拡散し、無へと向かって1人きりの孤独な道を進む動きに逆らうようにお互いの手を握り合う。例え一瞬でも。それが印象的だった。そして最後の、この世界にあると知らなかった沢山のことを知れて嬉しかったという言葉。

この春から介護職に就いたので読んだ。忙しい日々の中でこのカウンセリングをやるのは難しいと思う。でも、患者に寄り添う個人的な贈り物、それがほんの少しだけだとしても、が患者を癒やすこともあると分かった。患者が話したがってることが分かったし、自己防衛のための否認や怒り等を聞く側が否定してはいけないことが分かった。それから、動けず喋れなくなっても相手は物でなく人であるという大前提を大切にしたいと思う。また対人援助職の様な仕事は、自分の死への考えと究極に向き合わされることであり、自身の成長に繋がるだろうと思った。

若者達の薬！暴力！セックス！という世界観が、好みでなく途中までは読むのが大変だった。しかしラストの「ヒリヒリする擦り傷に染みる薬を塗ってもらうのが好きだった」や鳥のくだりを読んで、アングラな生活を背景に時折展開される主人公の精神世界の断片の、映像的な美しさに浸る小説なのだとわかった。

恥ずかしながら初読。すごく面白くてびっくりした！！！読みつがれている理由に納得。坊っちゃんの真っ直ぐで、正直で、喧嘩っ早くて知恵はないけど義理堅い人柄が好きすぎる。何処か悲劇的な所も、鬼滅の不死川実弥を思い出す。彼好きな人は皆坊っちゃん好きだろうな。