ネタバレ歌われなかった海賊へ。タイトル自体は小説の冒頭ででてくるが、意味の回収は最後の方。 ヒトラー･ユーゲントへの反抗を試みる子供たち、フリードリヒ海賊団。といっても彼らは高邁な理想を持たない。生きたいように生きる邪魔をさせたくないだけだ。そして、線路の先を見てしまう。大戦末期、見過ごせない彼らは戦うこととなる。 ……結局その歴史は、語られることがなかった。悪とは、何か？ヒトラーか、ナチストか、見て見ぬふりをした市民は無罪か。歌われなかった、海賊。最後が悲しい。戦後に、何を思ったのか？

ネタバレ再読、切ない。 善意というラインのせいで私は皆とわかりあえない。いつまでも不自由なレッテルがつきまとう。 アイスは、更紗の自由な心の象徴。夕飯のアイスは両親や、文との自由気ままな暮らし。対して、おばさんや亮くんの家では夕飯のアイスは理由もなく禁止されている。最初と最後のシーンでは梨花もアイスを食べていて、自由が受け継がれていることを知る。 諦めたような、希望を感じさせるようなラストでよかった。「もう私はそこにはいないので」痺れるー。 最高の小説だと思う。

ネタバレ「生存以外にいかなる価値をももたない社会とはいったい何なのか？」が響く、コロナ禍の講義録。 特に、2つ目の講義がおもしろい。不要不急＝必要性のあることだけをしろ、というスローガン。だが、必要は目的と結びつき、目的は手段を正当化する。あらゆるものが目的をもつ世の中というのは、記号消費を促すだけの、資本主義にとって都合のいい、冷たい社会ではないのか？人間性の抑圧。僕たちはチェスのためにチェスをすべきだ。自由とは目的を超越することなのだ。自由とは、純然たる遊戯だ。 (前半の行政の話は、少し退屈かもしれない。)

ネタバレ現代思想とは、差異の哲学である。 規制秩序からのズレを強調する。鍵は脱構築。脱構築とは優劣をともなう二項対立(例えば善対悪、男対女など)を崩すこと。そうして定着した「こうあるべき」という状態に疑問を投げかける方法が取られる。 デリダは脱構築を考えた人(エクリチュールvsパロール)、ドゥルーズは世界は差異でできていると主張した人(同一性vs差異)、フーコーは権力や狂気の脱構築を行った人、ラカンは精神分析を行った人。 この本は非常に読みやすく、なおかつ「現代思想の作り方」など創造的だった 。