ここでリオタールが為したかったことは、レヴィナスによる他者をめぐる思惟とハイデガーによる存在に関する思惟の近縁性の暴露だったんだろうと思うが、まあそれはそれとして(重大な申し立てであろうけれども)、ハードな論考の合間に挿入されているリオタールとレヴィナスとの討議「知とは別様に」は意外と大事なんじゃないかと思う。
決して和やかなふうでもないけれども(もちろん編集による強引な着地を感じさせる結論ではあるにせよ)、個人的にいま、自分のいる情況の指針となる言葉だと感じる。この討議は、リオタールとレヴィナスの、哲学に対する姿勢の本質的な段差を示しかつ、それとは別に、他者に対する友愛、他者とともに/そばにいることの大切さを嚙みしめさせてくれる。
詩風の振れ幅が大きく(ご本人も「詩法を種々試しているが、どの描法も捨てがたい」みたいなことを書かれている)、まるでJ-POPの歌詞のようなものすらあるし、かといえば朔太郎的な冥いイマージュに耽る詩、平明でユーモラスな詩、シニックの効いた詩、いろいろある。が、詩作が雑然としているわけでもなくて、「〈寂しさ〉が自身の詩の根にある」と書かれているとおりテーマは一貫しているし、しかもその寂しさは形而上的なところからやって来たものでもない。
たとえばワンオペ育児のなかで疲れた母親が感じる孤独のなかにあるようなごく身近にありふれた寂しさを、そのヴァリエーションに富む詩法で敲きながら普遍的かつ根源的なひとの〈寂しさ〉へ、そしてその先へ至ろうとする、静かな気概(「覇気」かもしれない)が感じられて味がある。
①イスラーム文化の大まかな外形的特徴とクルアーン、②スンニー派のイスラーム法学、③シーア派とスーフィーの教義の3部に分かれていて、井筒せんせいにしては、神学や哲学的議論は避け、初心者へ向けた平易な語りをされている。らしくないと言えばらしくないが、やっぱり下手なイスラーム入門書を読むよりはずっと要点を衝いてて面白い。こういう講演もされてたんだなあと軽い驚きを感じた。40年前の本だけど、ぜんぜんいまでも古びない。さすが岩波文庫に入るだけある名著。
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