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2026年2月の読書メーターまとめ

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2026年2月に読んだ本
9

2026年2月にナイスが最も多かった感想・レビュー

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終戦とともにソ連軍がなだれ込んで来た北支地方で、日本人達と一緒に帰国しそびれソ連兵の手伝いの仕事をして暮らしているが、日本に帰りたい思いで脱走する。町を一歩出れば国共内戦下の中国で、どちらに捕まってもスパイとみなされそうなのだが、勢力図がコロコロと変わっており、偽装のしようもない。見えない敵に追われるようにして、とにかく広くて何もない極寒の荒野を、飢えと疲労に苛まれて延々と彷徨うことになる。そんな死線を彷徨う経験によって、彼らは少しづつ野性を身につけていくようだ。
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2026/02/04 17:43

戦争の悲惨さというだけでなく、過酷な状況に飛び込み、突き進んで行く人間の心象が表されているのではないか。個人、組織、国家などが争い、脅かされていても、立ちすくんではいられない。戦後大陸から引き揚げてくる人の話はいろいろあるが、ここでは戦争というものが、荒々しさを育てるための培養装置のようだ。いわれなき悪意や不条理にも、自分の力で戦う力、悪徳、悪趣味、野蛮、モラルからの解放、そういう牙を内面に飼っておくことも、多様な価値観の対立が増すほどに、重要になっていないだろうか。

が「ナイス!」と言っています。

2026年2月の感想・レビュー一覧
9

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江戸時代に将棋の天才少女がいて、それが何か事件を解決したりする人情溢れるおはなし。江戸時代に実際に将棋の女流棋士はいなかったかもしれないが、囲碁の女流棋士はいたので、まったくの荒唐無稽とは言えない。その彼女が水戸藩の藩公の血筋のご隠居さんと知り合うが、それが暇のあまり先祖の黄門様を真似して世直しだか悪者退治がしたいとか言い出す。賭け将棋で一万石を賭けるとか。
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2026/02/24 19:41

天才棋士モノといえば、やっぱり竹本健治の牧場智久シリーズが印象的だが、そんなにディープな話ばっかりでもしょうがないし、カラッと明るく、もう、天才だけどなにか?と言うノリでさっさか行くのがいい。問題の解決はそこそこでも、美少女のわがままでおっさんが振り回されるのは楽しい。そもそも賭け将棋の問題とか大した問題ではないし、それで黄門様風の世直し気分とは、愉快この上ない。

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ドリス・レッシングという作家は、時代的に見ると強引とも思えるテーマでも、その筆致はいつも静かで、すっと心の中に入り込んでくる。 「陰の女」ロンドンへの空襲によって親を失った女性が、なんだか面倒見のよい男の助けを受ける。彼女にとっては幸運のように見えたが、男がダメ男であったために、やむおえず自立し始める女性が生まれたのだ。男女平等といった思想以前に、そういう女性は実は生まれつつあったのだはないか。ロンドンのような大都会で、地域社会から切り離された核家族が生きていく上では、往々にして起きていたのかもしれない。
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2026/02/24 19:32

「いとしのジュスティーヌ」芸術家として自立して生きている女性たち、その行動は開明的といえるが、理屈よりもそういう風にしか生きられない女性たちが存在する時代。経済や差別の問題といった構造的な変化以前に、新しい生活の道が広がって変化が重なり合って生まれたとも見える。 「一人の男と二人の女」結婚してしあわせに暮らしている平凡な夫婦が二組いて、非常に親密な関係にあり、人生経験がさらに関係を深める。それは世間に例を見ないほどであり、一般読者には理解できないところまで踏み越えて行きそうな可能性まで示されている。

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2026/02/24 19:37

「あまり愉快でない話」これも二組の夫婦の物語なのだが、夫婦とか女性の生き方についての思考がよりラディカルになっていて、登場人物は軽々と従来の規範を飛び越えてしまう。 レッシングはいつも時代の一歩先を行っていたように見えるが、それは時代を読んでるのではなく、彼女自身の思索が少しづつ深まっているのではないか。それも非常に慎重に、前人のいない道を手探りで、おそるおそる静かに浸透させるような文章に感じられる。技巧の一種というよりは、一貫したスタイルなのであり、作家としての生き様が感じられるようだ。

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「セックス電話時代」音声電話、テレビ電話の次として技術的にはまったく開発可能だとせつせつと語られ、そうなのかもという気がしてくる。離れたところにいる人たちと親密な社交が可能となることで、世界平和が実現する。だがこのテクノロジーをキーにして、社会の性意識の変化はとどまることを知らず、世界は予想外の方向に変容していく。 「テレビ教育時代」学校の先生がすべてコンピュータになり、どんな生徒にも合った適切な授業が行えるようになるが、子供たちの無軌道ぶりには際限がなく、またもや予想外の事態を迎えることになる。
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2026/02/24 19:13

「情報エリート」テレビ電話に続いて、メガネ型、腕時計型、指輪型と、次々に新しいデバイスが開発されるが、大量の情報を処理可能になるにつれ、ビジネスマンの仕事もどんどん過酷になっていく。 「生ている海」探検隊のロケットが海で覆われた惑星を発見する。新発見を携えて地球に帰ると意外な光景が待ち構えていた。 「時間と空間の涯」巨大な重力に引き込まれてしまった宇宙船が、その先で目にした世界。 「地球の子ら」奇妙な機械に囲まれてすくすく育つ子供。その世界の謎が少しずつ明かされていく。

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2026/02/24 19:14

1970年以前に書かれ、ITやAIの発展と社会の変貌がかなり正確に予言されているし、その先の未来の姿も説得力がある。それを生み出す最先端の科学者、技術者たちの心情とともに、彼らを悩ます組織やら予算やらのしがらみもリアルに語られていて、その本質は古びていない。

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少年が鏡の中に迷い込んだら、そこにチェスの駒たちが暮らしている。鏡に一度でも映ったものは、鏡の中の世界にも存在するようになるという、トポロジカルな世界だった。何代も前の先祖の時代の人物もそこでは生きている。特にチェスの駒たちは、チェス自体の歴史が人間より古いと主張しさえする。少年は彼らの影を追って、奥へ奥へと進もうとするが、現れる人々の異様さに怯えてしまう。少年にとって異世界の冒険であり、不合理との対決である。そんな異世界、あるいは異端の論理に触れた経験を、多くの人は忘れているだけなのかもしれない。
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「文明の前哨地点」アフリカの奥地の象牙取引基地に赴任させられたベルギー人。現地人の集団の中で少しずつ不安が溜まっていく。植民地経営にはこういう実態があったのだろうが、支配する側の人間も滅びさせていく軋み、哀しみや疎外感を感じる。「闇の奥」の前章的な作品でもある。 「秘密の同居人」東南アジアを航行する貨物船の船長に突然赴任した男が、深夜に海上を漂う男を拾い上げる。異国の海で、全く知人もいない船の上での孤独が、この船長の行動を生み出している。船に特有な緊張感が、当時としては斬新だったのではないだろうか。
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2026/02/16 19:02

「密告者」アナキスト組織に警察のスパイがいるらしいとわかり、炙り出すことを計画する。アナキストでもテロリストでも組織における行動は、一般の人々や官僚などとも変わらない。危険に満ちたな題材なのに、退屈と安逸が入り混じった不思議な空間になっている。これもグリニッジ天文台爆破未遂という実際の事件に題材を得たという「密偵」の前段的作品。 「プリンス・ローマン」古い家柄のポーランド貴族が、時代の波に翻弄される。貴族として、家を守ること、祖国を守ること、そしてロシアとの関係などのはざまで苦しむ。

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2026/02/16 19:05

「ある船の話」すでに第一次世界大戦が起きた時代のこと。船乗りは、今までの船乗りのままでいられなくなった。気質も生き方も、それまでと変わることはない。ただ世界の方が変わってしまった。海の男同士の関係も、同じようではいられない。そのことを淡々と受け入れているように見えても、実は煮えたぎるような気持ちが隠されている。 大英帝国絶頂期にも、その内部には様々な軋みが生じていたことが分かる。それは外部と接する海から徐々に露わになっていったのかもしれない。そこにはポール・ヴァレリー的な文明批評をも感じられる。

が「ナイス!」と言っています。
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旧日本軍の参謀だった辻政信が戦後東南アジアで失踪したが、その死の謎を解くべく岸信介系派閥出身の首相から、警視総監を通じ警視庁捜査一課の、翔んでる警視こと岩崎白昼夢警視正にじきじきに依頼が来る。一行は中国奥地にその跡を辿っていき、第二次大戦後のアジアの裏の歴史が明らかになってくる。作者の「天山を越えて」に連なるような冒険小説だが、ぱりぱりの現代人の視点で、ガダルカナルの悪夢が現代によみがえり、その破壊力を見せつける。
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2026/02/16 18:50

ただしこの「平成編」が書かれた頃は、現代中国は政治的にも近代化の方向に進むと誰もが思い、天安門事件も民主化の予兆のように見られていたのだが、現実の歴史ははその逆コースに進んでおり、この物語のような出来事も、どんな未来の暗示なのかという受け取り方が大きく違ってくる。ただそれが暗いものか苦いものかの違いはあっても、過去の亡霊が現代に甦る衝撃の大きさは変わらない。

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終戦とともにソ連軍がなだれ込んで来た北支地方で、日本人達と一緒に帰国しそびれソ連兵の手伝いの仕事をして暮らしているが、日本に帰りたい思いで脱走する。町を一歩出れば国共内戦下の中国で、どちらに捕まってもスパイとみなされそうなのだが、勢力図がコロコロと変わっており、偽装のしようもない。見えない敵に追われるようにして、とにかく広くて何もない極寒の荒野を、飢えと疲労に苛まれて延々と彷徨うことになる。そんな死線を彷徨う経験によって、彼らは少しづつ野性を身につけていくようだ。
slowbird
2026/02/04 17:43

戦争の悲惨さというだけでなく、過酷な状況に飛び込み、突き進んで行く人間の心象が表されているのではないか。個人、組織、国家などが争い、脅かされていても、立ちすくんではいられない。戦後大陸から引き揚げてくる人の話はいろいろあるが、ここでは戦争というものが、荒々しさを育てるための培養装置のようだ。いわれなき悪意や不条理にも、自分の力で戦う力、悪徳、悪趣味、野蛮、モラルからの解放、そういう牙を内面に飼っておくことも、多様な価値観の対立が増すほどに、重要になっていないだろうか。

が「ナイス!」と言っています。
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鞍馬天狗が維新の志士として江戸入りを目指すが、幕府に目を付けられていて、のっけから命を狙われる。薩摩藩士たちは御用盗と称し、幕府の権威失墜を狙って盗賊、放火を繰り返しており、庶民を苦しめている。また幕府内では、戦に備えてロシアから軍用金を調達しようとする企みが進行しつつある。倒幕でも佐幕でも、目前の目的のために大局を見失ったような動きが湧いており、組織に縛られない一介の志士である天狗は、八面六臂で立ち回る。 海外の事情を理解し、庶民の声を受け止める、現代的なスキルを持った人物は当時まれだったろう。
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2026/02/04 17:26

次々に危機が迫り、脱出するという繰り返し、芸者に惚れられたりと、全編めまぐるしい展開。鞍馬天狗ものとして、この後に書かれた少年ものの「角兵衛獅子」では、天狗はより思索的で、人間愛の強い、子供にとってのヒーローであり、メンターたる人物像になっていくが、本作では行動力が第一の取り柄のような人物像で、天狗を付け狙う怪人や、天狗を慕う人々の複雑怪奇な絡み合いが十分に楽しめる。神田川の舟上での追いかけっこや、江戸城の謎の穴蔵で水攻めや、爆殺されそうになったりと、危機一髪の連続の活劇がやはり一番の楽しみどころ。

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水上勉が生まれ故郷若狭の隣の越前での戦国悲劇、朝倉滅亡に心を寄せて語る。峻険な山と海に囲まれた土地に住む人の心象から、その趨勢を紐解こうとするものだ。足利将軍を擁して天下を狙うこともできた位置にいたが、長く根付いた越前の土地へのこだわりと誇りが、一直線に天下統一を目指す織田信長と噛み合わない。どちらがいいとか悪いとか、勝った方が正義かといったことを論じているのではなく、越前の山や川や村のそれぞれに彼らの足跡が刻まれていくのを語っている。
slowbird
2026/02/04 17:14

この地の歴史や、周辺地域との軋轢や一向一揆の情勢、国内の内紛、朝倉家の血統についての蹉跌など、いくさに勝った負けただけではない混沌とした歴史の総体がその地域ごとにあるのだとわかる。

ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2024/11/01(507日経過)
記録初日
2024/11/01(507日経過)
読んだ本
137冊(1日平均0.27冊)
読んだページ
46316ページ(1日平均91ページ)
感想・レビュー
137件(投稿率100.0%)
本棚
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自己紹介

某オンライン書店のレビューの移転中。最近は海洋冒険小説について研究してます。

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