登場人物それぞれの視点で語られる各章はかなり痛ましい。ここには平凡な人生というのは微塵も存在しないということを考えさせられる。誰にも救いの手が差し伸べられていない分、物語とはいえ彼らよりましな人生を送っているのだとマウントを取ってしまいたくなる自分が心の中に出没。

本書の終わりにある酒井順子氏の解説を読みながら、コロナで失職した風俗に従事していた女性には何の補償もなかった話をおもいだした。社会は風俗嬢とそれ以外の女性とに線を引きたがり、売春を必要悪であると決めたがる。それは本当に悪なんだろうか？と疑問に思うこと度々。風俗に関わった女達の軌跡とそこに絡む男達それぞれのストーリーはどれも皮肉な終わり方をしているあたりが哀しい。

推理物というよりは、警察物にカテゴライズされるんだろうと思う。大きな事件を追うサツカンたちではなく、日常的に起こりうるかもしれない、一見単純なそうな事件が思わぬ展開を見せる所に面白さがある。

登場人物それぞれの視点で語られる各章はかなり痛ましい。ここには平凡な人生というのは微塵も存在しないということを考えさせられる。誰にも救いの手が差し伸べられていない分、物語とはいえ彼らよりましな人生を送っているのだとマウントを取ってしまいたくなる自分が心の中に出没。