心に鬱屈があり、先に進めないといった人達が、神社で猫に会い、一枚の葉の裏にかかれたお告げを貰う。それをヒントにして、活路を開いていくという7つの短編。誰かのお話に誰かがちょっと出てきたり、別のお話に出ている姫野さんが出てきたりも楽しい。 マンナカがよかった。友達となじめず、親にも悩みをうちあけられない深見君。でも山根先生が苔を好きな事を認めてくれて、カビの事も教えてもらって、興味を持つ。そして自分が真ん中でいいのだと思えるようになっていく。退職してしまった山根先生にお手紙を出したりする経過も好きでした。

秘書に行先を勝手に北海道にされて、ピンチの女社長が、若くて、美しいバイク乗りに、拾われて北海道を旅するうちに、大切な事に気づいて…。ミミの聞こえないバイク乗りのナギがとても恰好いい！他にはナギとナガラにも出てきたエピソーと、ドのお話と、仕事に挫折した敏腕女性が、タンチョウ鶴と生息地の村の人たちに癒されて…。最後はナギのお母さんのお話。どれも背中を押してくれるいいお話ばかり。一日で読んじゃいました。

これがデビュー作だなんて！驚きを隠せません。読み応えたっぷりでした。宮部みゆきさんが、解説を書いておられるのですが、江戸川乱歩賞の審査員、全員が満場一致で受賞されたとの事。大いに肯ける事でした。エンターテイメントとしてだけでなく、我が国の死刑制度について深く考えさせられる素晴らしい1冊でした。