萩焼の土、ニホンオオカミ、落下した隕石、被爆建造物の破片、ウミガメがテーマとなり、それらの背景と、登場人物が広がりを添える短編集、ひとことでいうとそんな感じだが、伊与原さんの著書は、ほんとうに渋く味わい深く、静かな感動がある。地球科学の知識に興味も深まるから、とても楽しい。一方で、ほろ苦く切ないが、希望も残る。ご自身の経験と知識、綿密な考証の結果が構築された文章は、私にはとてつもなく眩しく、その結果、壮大なものに触れ、心の機微といったことを考えさせてもらえた。今回も様々な余韻が残り、読んでよかった。

全国あちらこちらのバスに乗って「乗ることを楽しむ旅」のエッセイは、旅行から遠ざかっている私を満足させてくれた。風景や人物の観察も面白くて和む。乗り物に乗ったら眠ってしまうのはもったいない。私も、乗ってる人に思いを馳せたり、風景を眺めたりと、平田さんと似たようなことはしているのだけれど、なるほどなあと思った。文筆を生業にしている人って、やはり憧れる。ちなみに息子がバス運転士である。いっそう身近に感じて、本を読まない息子にも教えてあげようと思う。クスッと笑えたり、あまりにも自然な描き方も素敵である。

萩焼の土、ニホンオオカミ、落下した隕石、被爆建造物の破片、ウミガメがテーマとなり、それらの背景と、登場人物が広がりを添える短編集、ひとことでいうとそんな感じだが、伊与原さんの著書は、ほんとうに渋く味わい深く、静かな感動がある。地球科学の知識に興味も深まるから、とても楽しい。一方で、ほろ苦く切ないが、希望も残る。ご自身の経験と知識、綿密な考証の結果が構築された文章は、私にはとてつもなく眩しく、その結果、壮大なものに触れ、心の機微といったことを考えさせてもらえた。今回も様々な余韻が残り、読んでよかった。

梨木香歩さんの著書から関心を持ち、読んだ。渋かった。旧仮名遣いの本は初めてきちんと読んだかもしれない。片山廣子さん（松村みね子さん）のバックグラウンドにも関心が深まったし、何より、何というか、古式ゆかしい随筆といった感じに酔いしれた。調子に乗って図書館で「燈火節」を借りたら、ものすごいボリュームでおののいている。文中、特に芥川龍之介にまつわる話などは、人物がほぼイニシャルで書かれていて、当時の文壇や相関関係のあれこれをわかっていないから読み解けなかった。とにかく渋い、味わい深い。