「本は生きている」
行きつけの古書店で急にそう言って話しかけてきた老人は、あっけにとられている私をよそに、味わうかのように繰り返した。
本は、生きているのだ、と。
本にはその言葉を書いた人の強い思い、すなわち「気」がこめられている。おとなしく本棚に収まっているように見えても、本は絶えず私たちに語りかけているのだという。
それだけ言うと老人は店主と軽く言葉を交わして一冊の本を手にそそくさと出て行ってしまった。
あれから何年経ったかもう忘れてしまったが、本棚の前に立つと私はきまってこの言葉を思い出す。
言葉の持つ力は私たちが思っているよりずっと、強い。
この機能をご利用になるには会員登録(無料)のうえ、ログインする必要があります。
会員登録すると読んだ本の管理や、感想・レビューの投稿などが行なえます