でも、自分一人で決めるのと、周囲とのコミュニケーションを通じて自己決定するのとは違う。文庫版解説の桜庭一樹は斜線堂のキャラクター描写について「誠実に注意深く」(p.364)と評しているが、未成熟な自覚がありながらも変化しようとすること、同時に他者とのコミュニケーションの中でちゃんと悩むということ、そうしたキャラクターの心の動きを丁寧に書く作家だなというのは改めて実感することができた。
一般書であるため詳しい学術的な調査手法は省かれているが、各国のカップルにインタビューを重ねた上でグラウンデッド・セオリーによる分析を行い、「うまくいくカップル」の共通点を探索している。各国のカップルのコミュニケーションを通じた研究なので、国によるバイアスはいったん除去されているのも良い。いずれにせよ著者が探し出したロールモデル及びコミュニケーションモデルは、話し合いを重視するカップルには強く響くだろうし、話し合いが苦手なカップルには関係性の再構築を促せるかもしれない。
現在は東京での大学生活を終えて高松でおしごと中。最近ガイブンとSFが熱いです。
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