出だしはユニークながらも若干軽さを感じました。しかし、作中にちらほら登場するスピーチや手紙の一節が、ぞっとするほどの感動と涙を引き寄せるに合わせて、どんどん話が大きく厚くなっていきます。少々のクサさはなんのその、どストレートなリーダビリティに身を任せれば、読後の大満足は間違いなし。

芸人本が好きなので読みましたが、どうも石田くんの魅力があまり伝わらないような。若干残念です。

異形で強い者のバトルがメインとなり、山田風太郎の匂いが濃密になってきました。これは褒め言葉です。もちろん設定が風太郎っぽいのですが、この本はそれに加えて圧倒的な物語の面白さがあるのがまさに風太郎。無骨、陸乾、甚六、眠と濃厚で魅力のキャラクターたち。絶品です。あと何巻読めるのだろう。

愛すべきC級ミステリ。かな、よく言えば。入れ子構造はいいのだが、途中のスプラッタホラーの衝撃を全体の構成が超えて来ないという出来。とはいえ、時間の無駄とも思えない。なんだかんだで読んでしまったし。なんとも不思議な作品。

牧歌的な田舎の風景と愛らしい子供たち、で始まったのに、いきなり主人公の女の子が友達に突き落とされて死んでしまう。以降、死んでしまった「わたし」の視点で、私の死体を隠そうとする友人兄妹と周囲の人のドタバタ劇が語られる。ラストのドス黒さはまあ特筆もの。イヤミスではなくイヤホラーの一種かな。個人的には表題作より併録されている「優子」のほうがシュールでよかったかと。

京王コラボの企画小説。単品の出来はなんかイマイチで乗り切れなかったが、最後の聖蹟桜ヶ丘編で連作の妙による取り返しがあったかな。京王ユーザー以外にはおすすめできないかもねえ。

出だしはユニークながらも若干軽さを感じました。しかし、作中にちらほら登場するスピーチや手紙の一節が、ぞっとするほどの感動と涙を引き寄せるに合わせて、どんどん話が大きく厚くなっていきます。少々のクサさはなんのその、どストレートなリーダビリティに身を任せれば、読後の大満足は間違いなし。

いきなり上巻冒頭の外の世界に戻り、なんと「カササギ殺人事件」の作者が死んでしまう。今度はそちらの事件を追いかけていく流れ。上巻の中途半端さが気になっていたが、それもキーになるミステリが展開。そして作中作品の「カササギ殺人事件」も最後には解決。一冊で２作品の優れたフーダニットを読んだ気持ち。そら評判高いわなあ。

評判が高いと聞いたので読んでみました。確かにクリスティを思わせるタッチの古いイギリスの推理小説。文化が違うので読みにくいながらもどんどん引き込まれていきます。そしてあっと言う上巻幕切れ。さあ下巻は。

最初は篠、新兵衛、采女、三右衛門といった中心人物の造形に若干違和感があり、登場人物の複雑性もどうかなあと思っていたのですが、中盤以降は見事にまとめてゆき、悪滅のエンタメに仕上がっています。さすが葉室麟。篠の奥行きを二重三重にもし、善玉を完全善良とせず、どこか食えないいい意味での狡賢さを残し、いくつかの悪玉に哀しみも残すという、キャラクターに依存させない作りが新鮮で心地よい。

最初の一編はなんかわからなかったんですよね。ただ、登場人物の関係性は把握。そして次の一編からはグッと引き込まれていく。時系列と人物の視点を上手くバラバラにしているんだよなあ。過去にも未来にも楽しさと大切なものがある、今は過去の積み重ねであり、未来はそこから花開いていくもの、ということが説教くさい自己啓発本の数百倍感じられる。いい本読んだ。