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2024年3月の読書メーターまとめ

内島菫
読んだ本
4
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967ページ
感想・レビュー
4
ナイス
83ナイス

2024年3月に読んだ本
4

2024年3月にナイスが最も多かった感想・レビュー

内島菫
そう遠くない距離でもミツミちゃんが顔の脇で両手をふるというようなキャラのしぐさのクセまでちゃんと描いているのがすごい。作者は講談社漫画賞のスピーチで「人生が後悔と喪失との戦いのように思えた時、そればかりではなかったと思わせてくれる友人のようなただ寄り添える作品になれたら幸せ」と話したというが、作者自身が自作のキャラひとりひとりに寄り添って作品を作っている感じがした。
内島菫
2024/03/28 07:46

いわゆる私小説的な作品の作者が、自分とその周辺の人々を赤裸々に描き出すという偽闘争的な態度で、結局は自身にこもり心酔しているように見えるのに対し、本作の作者は自己とうまく距離をとることで自己を超えて世界を探求的に描くことができているように思った。

が「ナイス!」と言っています。

2024年3月の感想・レビュー一覧
4

内島菫
そう遠くない距離でもミツミちゃんが顔の脇で両手をふるというようなキャラのしぐさのクセまでちゃんと描いているのがすごい。作者は講談社漫画賞のスピーチで「人生が後悔と喪失との戦いのように思えた時、そればかりではなかったと思わせてくれる友人のようなただ寄り添える作品になれたら幸せ」と話したというが、作者自身が自作のキャラひとりひとりに寄り添って作品を作っている感じがした。
内島菫
2024/03/28 07:46

いわゆる私小説的な作品の作者が、自分とその周辺の人々を赤裸々に描き出すという偽闘争的な態度で、結局は自身にこもり心酔しているように見えるのに対し、本作の作者は自己とうまく距離をとることで自己を超えて世界を探求的に描くことができているように思った。

が「ナイス!」と言っています。
内島菫
巻末の訳注者解説で、本書と『雨月物語』とを比較して「秋成が現実を夢幻の世界に導き入れて、読者を文芸の世界に遊ばせるのに対し、『日本霊異記』の世界は、冥界を現実界に引き入れて見せる文芸の世界」と述べているのは言い得て妙。続けて訳注者が本書が「冥界をくり広げるのに何の技巧も用いていません」と指摘するのもまた然り。閻魔大王の登場や動物の報恩譚等も多く見られるにもかかわらず、現代の実話怪談よりも直接的で現実と地続きのように扱われている。
内島菫
2024/03/27 08:42

さらに本巻では著者景戒自身が見た夢も語られるが、夢幻性よりも仏教的な世界観に基づいた現実の一部として夢もまた重んじられている風である。この、奇異であることと世界はこうなっているのだと説く規範性が景戒の中で絶妙に結びついていて、衒いのない迫真性が醸し出されているのだろう。奇妙さや辻褄の合わなさは本当はリアルなのだから。

が「ナイス!」と言っています。
内島菫
人間以外の動物(馬、牛、烏、犬、狐、蛇等々)に対する無反省な蔑視や、俗人に対する僧の絶対的な優位性といった、仏教的な偏見が炸裂していて、逆に仏教らしからぬようにも見え、上巻よりも宗教が一般的に持つ胡散臭さや倒錯性が濃くなっているように思える。極貧の女性が信仰によって裕福になるパターンの話がいくつかあり、信心深さを現世の報いの原因としているが、逆に何の理由もないように見える。蛇と交わり、蛇を恋しく思う女性についても前世の因縁を持ち出して説明しているが、やはり逆に何の理由もないように見える。
内島菫
2024/03/08 08:20

宗教の最大の発明は「理由」なのかもしれない。

が「ナイス!」と言っています。
内島菫
1〜7巻まで通して、ここではないどこかへ、この境遇ではない別の日常へというつげ義春的な志向を感じる。たまたま『日本霊異記』と並行して読んでいるが、一話の短さや題材、雰囲気に通じるところがあり、奇妙な相乗効果が味わえて面白い。例えば霊異記の、因果応報を信じず鳥の卵をよく食べていた若者が、迎えに来たある兵士に麦畑に押し入れられ、その麦が燃え上がる炎のようになって彼のふくらはぎの肉を焼き溶かして骨が鎖のようにつながっているだけとなり翌日に死んだという話は、『僕が死ぬだけの百物語』にあってもおかしくないような
内島菫
2024/03/02 17:21

不気味で絵になる話だ。きちんと描かれているが達者ではない絵が醸し出すデフォルメやデッサンの狂いに似た歪みが、理屈を超えた話にさらに捻った形を与えている。百物語らしく「デカメロン」や「カンタベリー物語」のように枠物語の形式を取っており、枠外では話数が進むにつれ枠内以上に邪悪な雰囲気が濃くなりつつある。枠の内外の二重の楽しみが味わえる本作は、「僕が死ぬだけ」ては済まないのではないかと期待させる。

が「ナイス!」と言っています。

ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2013/05/01(4015日経過)
記録初日
2013/05/06(4010日経過)
読んだ本
951冊(1日平均0.24冊)
読んだページ
238318ページ(1日平均59ページ)
感想・レビュー
794件(投稿率83.5%)
本棚
31棚
性別
現住所
東京都
外部サイト
自己紹介

趣味で評論や小説を書いたり別名で漫画を描いたりしています。
http://kounotori0.blog.shinobi.jp/
http://countdown00.hatenablog.com/ 

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