難解な問題に切り込んだ意欲作で、衝撃的な展開に興味深く読んだ。正欲と信じることが他者を傷つけることがあること、今言われているような“多様性”の認識からもはみ出る人たちがいること。自分は人に理解される存在ではないと認識する暗い孤独に胸が痛んだ。けれどどう思考をめぐらせても、正直なところ私は自分が想像できる範囲のことしか理解できないと思う。だから、こうして本を読むことで少しでも視野を広げていきたいと思った。落としどころのないラストが切ない。

中盤までは理不尽な証拠が次々とあがり、読みながら胸やけが。同じ日時に全く違う場所で、見た目どころかDNAまで同じ人間が行動することはあり得る？片方は文化的な場所で、片方は残虐極まりない殺人をして。どちらが本当のテリーなのか。事件関係者は死んだり苦しんだりでさすがに嫌になるけど、ページをめくる手が止まらない。非現実な事実こそが真実？陳腐になりそうなのに全然そうならない絶妙なストーリー運びにわくわくする。しかもいいところで上巻終了。すぐに下巻へ。

少しずつ真犯人に迫っていくさまに目が離せず夢中で読んだ。多くのエピソードが重なり合い、寄り道のような意外なところから思わぬ真実がみえたりと、まるで螺旋を描くようなストーリー展開が見事。凄惨な事件ながら登場人物が魅力的で暗さは感じない。主人公のポーをはじめ、フリン、嫌な上司たち…でもなんといってもデータの天才ブラッドショーが最高。事件の収束にはやるせなさと怒りがわいたが、最後の最後にどんでん返し。驚きと快感が心地良いラストだった。シリーズ追いかけます。

読み終えて心が温かく癒された。夜空の下でマーゴがレニーに言う。“夜空の星々のうち、いちばん明るく見える星はもう死んでるけれど、死んでからどれくらい経つのかわからないくらいなのに、私たちにはまだ見えるしまだ生き続けてるー” レニーもマーゴも明るい星で、周りに思い出というたくさんのギフトを与えているんだなと感じた。私もそういう星のひとつになれるとしたら嬉しいし、なれるような気がした。死にゆく人たちの話だというのに、不思議とほっとするような安堵の気持ちで本を閉じた。

霊を自分の脳内に取り込む特殊体質の少女メイク・ピースの冒険と成長の物語。彼女は実はイギリス名門貴族の庶子で、同じ能力をもつ一族の霊たちの器にされそうになり、逃げる決意を固める。ハーディング三冊目、今回も次から次へとふりかかるピンチにはらはらした。少女の中にいる三人＋謎のひとり＝4人との脳内の話し合いなど、ファンタジーならではの斬新なアイデアが満載。清教徒革命の知識がないためかたまに読みづらさも感じたけれど、古い慣習に立ち向かい正していく少女の強さに勇気をもらえた。

難解な問題に切り込んだ意欲作で、衝撃的な展開に興味深く読んだ。正欲と信じることが他者を傷つけることがあること、今言われているような“多様性”の認識からもはみ出る人たちがいること。自分は人に理解される存在ではないと認識する暗い孤独に胸が痛んだ。けれどどう思考をめぐらせても、正直なところ私は自分が想像できる範囲のことしか理解できないと思う。だから、こうして本を読むことで少しでも視野を広げていきたいと思った。落としどころのないラストが切ない。