次々に起こる理不尽な事態に振り回され人生を振り返りながら、時折漏れ出る切実な純真さ・誠実さに好感を持ってしまうに至る。人間の考えたロジックや安全圏をいとも簡単に奪い去る一方で、文明のしがらみについて自覚させる崇高な山岳。そのモチーフを、おそらく上出さんの経験に基づいた身体的な知識を活かして使い切った小説だった。面白かった!
(のごく一部!)なのにもかかわらず、その著者に対して揶揄・多くの義務を背負わせようとする輩は今も昔も変わらずいるということに驚くが、古川日出男と紫式部がそういった面で共鳴しているのが、また面白い。これもまた因果な話だが、面白いのだから仕方ない。メガノベルの印象が強い古川日出男のなかでも、中編作品の新たな代表作だと思う。
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