リーチは金もあり才能もあり運もあり家族もあり名誉もある。亀之助には何もなく(少なくとも亀之助にリーチや柳に匹敵する才能があるという描写はない)恋人さえも捨てて芸術の道を選んだのにも関わらず、ついに無名のまま死んでしまった。いや、彼は家族を残して幸せに暮らしたのだ…とリーチは振り返るが、本当にそうだろうか。芸術家が一つの作品も評価されぬまま死んだことが、この物語の世界観の中で幸せだったとは、僕には思えない。
序盤の描写があまりにも感動的だからこそ、終盤に至ってその矛盾の残酷さが際立つ。いや、芸術とは、世界とはそんなものだ、と達観することを促す作品でもないので、だからこそなおさら、その矛盾のあまりの深さを感じてしまう。
2014年2月より記録開始。基本的には、参加以降に読み終えた本について記します。
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リーチは金もあり才能もあり運もあり家族もあり名誉もある。亀之助には何もなく(少なくとも亀之助にリーチや柳に匹敵する才能があるという描写はない)恋人さえも捨てて芸術の道を選んだのにも関わらず、ついに無名のまま死んでしまった。いや、彼は家族を残して幸せに暮らしたのだ…とリーチは振り返るが、本当にそうだろうか。芸術家が一つの作品も評価されぬまま死んだことが、この物語の世界観の中で幸せだったとは、僕には思えない。
序盤の描写があまりにも感動的だからこそ、終盤に至ってその矛盾の残酷さが際立つ。いや、芸術とは、世界とはそんなものだ、と達観することを促す作品でもないので、だからこそなおさら、その矛盾のあまりの深さを感じてしまう。