歌人によるエッセイ。歌集『老モテ』の解像度もあがる。これからも彼女が見つける世界の真実を知りたいと思えた。

大学紛争のさなか1969年、20歳で自死するまでの半年間の日記。未熟であるという自己認識から、不完全な自分を克服するための行動=社会矛盾への闘争に生きる意義を見出すが、その過程における友人との訣別や失恋によって孤独を深めていくさまが綴られる。などとわかったように書いてしまうが、その寂しさや憤りは彼女だけの感情で誰も理解できないものであったし、故に周囲に理解者をもとめる彼女の孤独はさらに深まっていったのだと思えば、その寂しさは私の中にもあり、きっと誰しもが抱える・抱えたことのある孤独なのだと感じた。

ジャズピアニストの自伝エッセイ。 銀座の高級クラブで誰にも聴かれることないピアノを弾く南青年。彼の眼差しで語られるバブル期銀座の表裏は華やかだが澱んでいて、その人間臭さが魅力的に映る。生き生きとした筆致で読み終わる頃には自分も夜の銀座にいた心持ちになった。

聴いていると自分の日常に響くキラーフレーズがあらわれ、毎日がちょっと楽しくなったPodcast「となりの雑談」/ その内容を加筆・再構成したものだが、本になると自分のペースで考えながら2人の雑談を楽しめることができて良い◯

軽やかで都会生活に肯定的なエッセイが楽しかった。

知人にすすめられて。人類史における自己家畜化の過程を解説する前半は楽しかったが、日本人が自己家畜化していると断罪し未来を悲観する後半は「昔は良かった」論に近く思えてしまい共感はできなかった。