4.2/5.0 どこか福音めいたものを感じさせる作品で、すごく好きです。「引きちぎられたミミズ」を宿す子への母親の愛憎と、そんなミクロな個々の生を大きく包摂するマクロな故郷・土地の力、方言＝言葉の力が強く感じられた。作り物でも借り物でもない希望が、胸に温かく差し込んでくるような気がしました。

4.0/5.0 この作者が描く主人公のサイボーグ感がとても好きです。周囲の人間や事象だけでなく、自分の感情をすら客観的に観察し続ける機械的まなざし。テーマ的には性暴力による内的抑圧と、反動としての美しさへの憧憬と、底から姿を見せる怒りが純文学的にきっちり描かれている印象ですが、やはりなによりこの作品を特徴づけているのは、そのサイボーグな語り口だと思います。

3.4/5.0 宗教的なバックグラウンドが背景にあるようだけど、それゆえになのか妙に図式的に感じた。テーマに登場人物たちが従属しすぎているというか。主人公の母親と弟の猛毒かつ胸糞ぶりがすごいのだけど、さすがにこんな人いる？って違和感があり、かたや主人公の夫はあまりに聖性を発揮していて、どうにも素直に物語を受け入れられない自分がいました。

3.7/5.0 小児性愛者の饒舌な独白。語彙豊か過ぎて圧倒されてしまうレベルに饒舌で、なにげにリーダビリティが良い。自身の身勝手さをある程度自覚しつつ、それでも歯止めがきかないあたり、なかなかにリアルだと思う。にしてもこの作者は個人的に本当に難しく、なんかすごい深いこと考えてそうな気はしてるんだけど全然掴めないでいる。シンセミアはすごい傑作だと思ったのだけど。

4.2/5.0 どこか福音めいたものを感じさせる作品で、すごく好きです。「引きちぎられたミミズ」を宿す子への母親の愛憎と、そんなミクロな個々の生を大きく包摂するマクロな故郷・土地の力、方言＝言葉の力が強く感じられた。作り物でも借り物でもない希望が、胸に温かく差し込んでくるような気がしました。

4.0/5.0 短いながらもとても読み応えがあります。ときおり飛び出す象徴的なマジックリアリズムや、時間と記憶の可逆性を示唆する内容が面白い。妻が急に十一年も口をきかないってもうそれだけですごいインパクトである。つらつら硬めに連ねられる文章も印象的な描写が多く、良かったです。

3.3/5.0 眠りに着目した珍しい作品で、面白いといえば面白いんだけど、なんだかいまいち深く響くものがなかったな。植物と並列して語りながら人間の奇妙さや生き物ぶりを語っているのだろうけど、うーんって感じでした。軽めの文体も作風には合ってるけど好みではなかった。

3.8/5.0 三十年以上前の作品なのに現代性を感じる。虚しさにとらわれた都会人の断片的記録。通俗的な作風だがときおり嘆息するようなエピソードが出てくる。とりわけ井戸の記憶の描写と、一歩進んで二歩下がるリゴドン踊りのくだりが素晴らしい。ただ、最後のモテエピソードだけはなんか鼻白んでしまった。全体的には、読みやすさもありながら、ときに人生の深淵が垣間見えるような、良質な作品だと思いました。

4.2/5.0 実にのびのびとしていて、清々しさも感じる、見事な作品。すべての些細な描写、エピソードにオリジナル感が満ちていて、作者の才能が溢れ返っている。

3.8/5.0 女子高生の心と身体の話とのことで、共感不可能なのではないかとビビりながら読んだが、現代的な普遍性も感じられとても面白かった。カテゴライズを拒否し、徹底して個であろうとする主人公の奮闘ぶりが良く、描写や会話も良く、新鮮なセンスみたいなものが感じられた。