犯罪被害者やその家族のカウンセリングを行う高階唯子。彼女のクライエントが、そして彼女自身が抱える傷とは何か。 クライエントたちの傷の深さはわたしには測り知ることはできず、安易に同情・共感することはできないけれど、いつのまにか彼らと同じように痛がっているわたしがいた。特にp143でアキラが叫ぶシーンではその叫びが胸の奥底まで響くようで涙をこらえるのに必死だった。自分も傷を負いながら、クライエントに何が必要なのかを考える唯子が素敵。傷を抱えながら、心に獣を飼いながら、それでも生きていていいのだと思えました。

13歳でエイズと診断され、18歳で死ぬまで、病気、そして差別や偏見と闘ったライアンのお話。 エイズ患者がいても普通に生活するには感染する心配はない。でも当時彼が住んでいた町や通っていた中学ではそれを学ぶ機会がなく、いたずらをされたり学校に来るのを拒否されたり……。ひどい。苦しくて何度も心がぎゅっとなった。それでも闘うライアンや家族。p122のママの「あの子がそうしてほしいと思っている限り闘うわ」、かっこいいです。今では差別・偏見は無くなったのかな。正しい知識と、それを得ようとする心が大切だと思った。

雑誌編集者の典子は、不幸の手紙を受け取って以降、身の回りで殺人事件が起きてしまう。そんな彼女の話を聞いた浅見光彦が事件解決に乗り出した。 浅見光彦シリーズを初めて読んだのですが面白い！探偵役がただの道具としてでなく物語に有機的に作用するというか。わたしはクリープもなにも入ってないコーヒーが好きですが(笑)、小説においてはこうしてロマンがあるものもとても好きです。浅見さんの幸福の手紙での失敗や兄のために葛藤する点も人間らしさが感じられてよかった。

ミステリー特集にて道尾秀介さんの、解体全書にて朝井リョウさんのインタビューあり。 道尾さんの読者体験型ミステリーとても楽しいよ。もちろん昔の作品もすき。道尾さんがおっしゃってるように、表現の方法は違えど、昔も今も道尾さんの作品には「簡単には割り切れない人間の感情」が描かれてるから。 朝井さんの最新作『生殖記』は積読中です。記事に冒頭部分が掲載されていて早く読みたい、読まなきゃ！となった(笑)。